本記事では、前回の記事に引き続き「エンジニア採用は誰のシゴト?」というテーマでエンジニア採用に関わる方にお話を訊いていきます。
今回お話を伺ったのはトレジャーデータ株式会社のエンジニアリングディレクターである伊澤さん。エンジニアチームが主導となって採用要件の策定から採用活動を行う体制についてお話いただきました。
《プロフィール》
伊澤 良樹さん:
米国留学後、リクルート米国法人子会社にてWebエンジニアとしてキャリアをスタート。帰国後、Yahoo! JAPANにてサービス開発、プラットフォーム開発・運用担当し、開発部長としてデータソリューション開発組織を管理運営してきた。その後、DeNAにて分析基盤の開発およびチームリードを経て、2015年にエンジニアリングマネージャとしてトレジャーデータにジョイン。現在は、エンジニアディレクターとして採用を含め、組織強化を推進中。
トレジャーデータ株式会社:
2011年、米国シリコンバレーに設立された米国トレジャーデータ社は、設立以来企業が扱う大量のデータを、リアルタイムで収集、統合するための仕組みである「データマネージメントソリューション」を提供しています。
大容量の購買取引データやWeb閲覧データ、各種のアプリケーションやモバイル端末のログデータ等、様々な非構造化データに対応しており、収集・保管・分析および他のマーケティングツールやサービスに連携し、簡単に「カスタマーデータプラットフォーム(CDP)」を構築することが可能です。
さらに、センサーデータやマシンデータ等、IoT分野におけるビッグデータへの対応も強化しています。2018年、半導体設計やIoTを手がける英Arm社により買収、以降Armの一員として同社のデータビジネス事業を推進しています。
目次
採用はエンジニアチームの責務
– まず、トレジャーデータさんのエンジニア採用の体制についてお話いただけますか?
エンジニア採用は、基本的にはエンジニア部門が行っています。特にエンジニアのトップである各チームのマネージャーが、その部門のハイアリングマネージャーとして採用を主導していきます。
採用に関するヘッドカウント、バジェットが決まれば、「後はエンジニアの方で採用活動をしてください」というのがトレジャーデータのやり方です。現在約10のエンジニアチームがあり、それぞれが独立して採用に向けて動いています。
– 採用担当がエンジニアの採用活動に関わることはないんですか?
順を追ってお話すると、採用担当という呼び方ではないんですが、TAA(タレント・アクイジション・アドバイザー)というメンバーが日本とアメリカに1名ずついます。アドバイザーという名前のとおり、エンジニアチームが主導になっていて、TAAは採用を成功させるためのアドバイスやお手伝いをしてくれます。
候補者とのやりとりや、オファー面談などに加わることもありますが、メインで動くのはエンジニアチームです。
– そこまでエンジニアが主導になるのは、他の企業ではあまり見たことがありませんね。採用の需要についても各エンジニアチームから要望が上がってくるんですか?
そうですね。それぞれのチームからいつまでにどういう人が何人欲しいかという要望が上がってきます。
要望はマネージャーを通して上げられて、ヘッドカウントが与えられた後にはTAAとマネージャーがジョブディスクリプションを作って採用ページに掲載します。併行してTAAが採用サービスやダイレクトリクルーティング、エージェントとのやりとりを開始します。そして、本格的に採用活動を開始するという流れですね。
アクションはそれぞれでも、エンジニア全員が採用にコミットするべき
– ズバリお訊きしたいんですが、エンジニア採用って誰のシゴトだと思いますか?
どういう手の動かし方をするかは別にして、エンジニアの採用はエンジニア全員がやるべきだと思います。
もちろんポジションやロールによってできること、やるべきことは分かれてくると思いますが、例えばエンジニアチームのマネージャーであればハイアリングマネージャーとして採用計画を立てたり、まず最初にスクリーニングしたり、アクションの仕方はそれぞれですが、エンジニア全員が何かしら関わるべきだと考えています。
トレジャーデータでは、例えばトレジャーデータのエンジニア組織トップはバジェットを確保することで各ハイアリングマネージャーが採用活動をしやすいようサポートしてあげたりしています。また、現場のエンジニアの人たちには「人が欲しいんだったら誰か連れて来てよ」っていうようなことをよく言っています。現場のエンジニアもリファラルという手法で採用に貢献してもらう。アクションは違えど「エンジニア全員が採用活動をする」という意識を持っています。
– エンジニアが採用活動をすることのメリットには、どんなことがありますか?
いくつもあるのですが、1つ紹介すると、チームのことやエンジニアのことをわかっているメンバーが採用活動を行うことで、「チームを強くする」という本来の目的から外れなくなります。
チームの内情や技術的なことがわからない人事担当が採用を主導することで、目的はいつの間にか「何人を採用するか」というような手段にすり替わってしまいます。自分たちのチームのメンバーが採用活動を行うことで、本来の目的からぶれずに組織を作ることができると思っています。そのためには、採用要件を作ることや母集団形成の段階から関わっていくことも重要です。
エンジニアが採用をミッションに持つことが重要
– マネージャーや経営層がエンジニアの採用人数を決めるという企業もあると思うのですが、ほぼ現場のエンジニアからの要望で決まるというトレジャーデータさんの体制にはどんなメリットがあるんですか?
必ずしも現場だけの意見で決めるというわけではないんです。
でもメリットとしては、プロダクト開発のために何が必要かという計画能力を養っていくことができるという点が挙げられます。計画には人員計画もひも付きます。
よく「人と物と金」といいますが、そういった全体を現場のチームで認識、計画し、どのようにチームを成長させていくかということを考えることは、エンジニアとしても非常に重要なスキルです。
– 素朴な疑問なのですが、現場のエンジニアが採用に時間を取られると開発に支障が出ませんか?
他の企業でよくあるパターンとして、候補者はまず現場のエンジニアに会って、次はマネージャーに会って、というような面談のパターンがあると思いますが、トレジャーデータは逆です。最初にマネージャーが候補者と会って、カルチャーなどについて確認してから現場のエンジニアへパスします。
マネージャーのミッションには採用が含まれています。現場のエンジニアではなく、まずはマネージャー自身が採用に時間を使うということが明確に示されています。
もちろん、選考の途中では協力してもらいますが、現場のエンジニアにはなるべく負担がかからないような体制になっています。
エンジニアが採用というミッションを持つこと、誰がやらなければいけないか明確にすること、エンジニア採用においてはこれがとても重要だと思いますね。
– ありがとうございました!
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