<イベントレポート>「Startup CTO of the year 2023」のファイナリストが語る組織拡大での採用戦略とは

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2024年3月11日、NewsPicks主催の「Startup CTO of the year2023」でファイナリストに残った4名のCTO/VPoEが「エンジニア組織拡大における採用」について語るオフラインイベントがAWS Startup Loftにて開催されました。

トークテーマは、これまでのエンジニア採用戦略と現在の取り組みです。各社のリアルな施策と現状が赤裸々に語られ、スタートアップに限らず、さまざまなエンジニア組織のマネジメントに役立つ知見が共有されました。

【パネリスト】
ミチビク株式会社 取締役 CTO 金杉優樹 氏
株式会社 tacoms CTO 井上 将斗 氏
株式会社 ALGO ARTIS 武藤 悠輔 氏
アスエネ株式会社 VPoE 石坂 達也 氏
【ファシリテーター】
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 柳 佳音 氏

これまでの採用戦略

金杉さん:まだ市場にないプロダクトを開発する際は、ライバル会社がおらず、機能が不足していてもコンペ等で他社と比較されるわけではない一方で、いかに早くうちの会社で開発するかという戦いになってきます。そこで我々は、早く開発するために正社員採用にこだわるのではなく、正社員0、業務委託1、オフショアのラボ1の「0:1:1の比率」でメンバーを増やしていきました。最近のスタートアップではよくある状況だと思うのですが、現在も正社員は0名です。

その目的は、スピードや資金といった採用に関するリソースを最適化することです。資金調達前の段階で、他の職種も採用しなければならない状態の中で、どれだけ時間とお金をかけていくのかは悩ましい問題です。その点、オフショアのラボは「明日からひとり増やしてください」と依頼するだけで対応してもらえます。「この機能があれば、大きい案件を受注できるんだけどな」という状況になったときなどに利用して、「すぐに採用して人を増やして、来週から開発に取り掛かれます!」と言える体制、組織づくりをしてきました。

業務委託の方の採用も同様で、正社員採用の場合に必要な選考プロセスを削減して、スピード感を持って採用できるところが重要です。経営の観点でいうと固定費の話も入ってくるので、そこのバランスをどう取りながら経営していくか、チームをつくっていくかを考える必要があります。さらに、雇用形態を問わず、メンバー全員に会社のカルチャーやビジョンに気持ちを寄せてもらうためには、どうすればいいかも併せて考えてきました。

以上が当社の、これまでの採用戦略です。今年の2月にシリーズA調達をしたことで資金的な余裕も生まれたので、正社員0:業務委託1:オフショア1の比率だったところを、今後は1:1:1にしていこうとしています。採用関連のサービスもいろいろと契約して、絶賛採用を進めているところです。

井上さん:当社は学生起業でやってきた会社なので、創業初期は私の知り合いの学生しかいないという残念な状況でした。先ほどの金杉さんのお話と同じく、PMFしたか・していないかも見えてないぐらいの段階では、とにかくコストを抑えて、いかに早く開発できるかがすごく重要だったので、採用にかけるコストもない状態だったんです。

その中で気づいたのは、スタートアップやメガベンチャーで1年くらい学生インターンを経験した人たちが最適なメンバーになってくれるかもしれないということでした。もともと優秀な方が1年間の経験を積んでいるので基本的な開発は問題なく進めてもらえますし、中途の方と比較すると、コストを抑えられる上でスタートアップが好きそうな属性の方も多く初期の開発において非常に貢献してくれました。

学生の採用に関しては会社名や年齢でターゲティングをして、TwitterのDMをひたすら送って、当時4人ほどのエンジニアを採用して開発を進めていました。とはいえ、ずっと学生インターンだけでやっていくわけにはいかないので、シリーズAの資金調達を実施して、店舗数も2000店舗を超えてきた2021年から、正社員採用に向けて動き出しました。

会社としての体をある程度は成してきて自信を持てたので、インターン時代の上司を口説いて参画してもらって、スカウト媒体もいくつか使わせていただきしました。ただ、エンジニアが5名以下の規模では、正社員採用を真正面からやる難しさも感じていて、副業からOKという形で進めていきました。

当時採用するときに意識していたのは、スキルよりもマインドです。めちゃくちゃ技術力がある方よりも、1年でも長く一緒に働ける方が来てくれるほうが嬉しいと思っていたので、サービスへの愛着を持ってくれたり、0→1の環境を楽しむマインドを持ってくれたりする方を採用したいと考えていました。

正社員採用を進めたことでメンバーが入れ替わってしまって、ナレッジの部分などで少し大変さはありましたが、仕様書を最低限しっかり書いてドキュメントを残したり、ちょっと根性論になるんですけど「私が全部把握していればなんとかなる」で進めました。CTOとして、インフラもフロントもバックエンドも全体を把握していればしっかり引き継ぎができる自信があったので、大きな問題には感じていなかったですね。

その後、正社員もかなり増えて、2023年時点でエンジニアメンバーは10名弱ぐらいになりました。昨年からエージェントの活用も始めて、本格的に採用に取り組んでいます。エージェントを利用すると採用のフィーが少し高くなってしまうので、最後の採用手段として取っておいた感じです。

当時、正社員の採用目標が未達の部分は、一部業務委託の方を採用していましたが、週2〜3勤務の方がたくさんいる状態ではマネジメントの工数的に対応が難しい状況だったので、週4〜5で勤務可能な業務委託の方をターゲティングしていました。SREの採用も昨年から取り組み、データエンジニアや組織まわりの知見がある方の採用を進めています。一部副業や、技術顧問的に関わっていただいている方もいます。

武藤さん:当社はもともとDeNAの中で新規事業として始まり、そこからスピンオフして独立した会社です。メガベンチャーでは新規事業に直接所属している人と、共通部門から手伝っている人が存在していると思うのですが、当社の場合はスピンオフした当初のタイミングでは新規事業に直接所属しているメンバーがフルタイム3名と、共通部門メンバーが20人以上いる状態でした。

そんな状態からのスタートだったので、まずは「DeNAに依存しなくても事業を回せる状態をつくろう」と考えて採用活動を進め、大体1年から1年半かけて、ようやく正社員が20名ぐらいになりました。

弊社はSaaSプロダクトだけでなく、AIソリューションをお客様に合わせてカスタマイズするような受託的な開発もしています。結構複雑な最適化アルゴリズムなので、プロダクト開発にも優秀な方がたくさん必要です。人手不足の問題もあるので業務委託のメンバーも採用しながら、シニアの方を優先して採用する流れを常に意識しています。昨日の段階で、正社員が約40名になったので、1年で倍くらい増加しました。業務委託の方も、ほぼ同数です。

エンジニア組織としてはビジネスチーム、プロダクトチーム、アルゴリズムチームの3つで構成されていて、割合としてはアルゴリズムエンジニアが一番多いです。半数がアルゴリズムチームで、ビジネスとプロダクトチームが残り4分の1ずつで、今もその状態でスケールしていっています。

今後 SaaS プロダクトがよりグロースしてくると、プロダクトチームや営業、インサイドセールスの部分が増えていくかなと思っています。正社員が40名くらいになってくると、コーポレートチームも必要になるので、正社員3名くらい所属しています。現在、業務委託のメンバーも合わせると 100 名弱の組織になっていて、それぞれのチームに20〜30名ほどが関わっているので、しっかりチームをスケールに向けて準備していかないと「50人の壁」にぶつかるだろうなと感じているフェーズです。

石坂さん:私は、創業者エンジニアと入れ替わる形で、ジョインしました。当時のアスエネは電力小売りサービスを提供していたのですが、シリーズBの資金調達の目処も立っている状態で、今の主力事業であるCO2排出量見える化クラウドサービスを早くプロダクト化したいというタイミングでした。

雇用形態を問わず積極採用しようと考えて、正社員の採用を進めつつ、業務委託の方を中心に開発体制を構築していくところからスタートしました。

当時は私が技術的な意思決定、設計、コードレビューと全部関わりながら、採用・体制構築もしなければならない状態でした。しかし、自分の役割が多すぎたので、まずは技術的な細かい意思決定を任せられるリードエンジニアを採用したいと考えて、採用活動をしていきました。

当社の強みはマルチプロダクトなので、プロダクト/プロジェクトごとにリーダーを立てています。CO2排出量見える化クラウドに関わるエンジニアが増えてきたので、プロジェクトマネジメントに加えてピープルマネジメントもできるEMの採用を強化しています。

現在の取り組み

柳さん:現在採用戦略としてどのようなことに取り組んでいますでしょうか?また、今のフェーズから1年後、3年後、さらに先の未来に向けて、組織をどうやって大きくしていきたいと考えていますか?

金杉さん:先ほどもお話しした、正社員1:業務委託1:オフショア1の比率を、今後1年くらいは維持しようかと考えています。採用の戦略として意識していることはいくつかあって、一番意識しているのは上のレイヤーから採っていくことです。

今でも結構メンバーレイヤーみたいな感じで、実装の新規機能をつくってくれている方はたくさんいらっしゃるんですけど、今はもうちょっと上から方針を固めていくやり方を考えていて、VPoEの方を探しているところです。VPoEと「どんな組織をつくりたいか」を一緒に考えて練っていけたらと考えています。

採用戦略の二つ目は、「倍々ゲームはやめよう」という考え方です。この会社を立ち上げるまでに、副業や業務委託で5〜6社ぐらいのスタートアップ企業を見てきたんですけど、やはり「50人の壁」でつまずく企業が多くて。その原因として、急激な人数拡大が少なからず影響していると感じています。

そこで弊社は、できるだけメンバーを少人数に抑えていて、セールスもひとりしかいない状態です。セールス1、CSとマーケ0で、結構みんな兼任して回しています。コミット感がある人にまず入ってもらって、組織をつくってから人をアサインする流れを順序立ててやっていこうと考えています。

あとは、オフショアや業務委託の方にお願いしていた部分を、正社員に全部スイッチしようみたいな話もないですね。オフショアや業務委託の場合、短期の関係とかコミット力がないとか思われがちですが、弊社がお願いしている方は全然違っていて。会社の文化も理解していただいていますし、今までのノウハウもありますし、ただ雇用形態が違うだけの認識なので、今の感じでどんどん進めたいと考えています。

今は大体10人くらいなんですけど、1年後には15名くらいにしたいと考えています。人数の決め方としては、受注したい案件ベースです。うちは基本「メガエンプラをこれくらい受注したい」という目標があるんですが、メガエンプラがプロダクトをそのまま使ってくれることはほぼなくて、「この機能を追加してくれたら導入するよ」となるケースが多いんです。そのあたりの平均値から逆算して、1年半分くらいのロードマップをつくって、人数を予測して決めています。

人数の比率もロードマップも、あくまでも仮説なので、これでいけば採用工数もそこまでかけずに理想的なチームをつくれるんじゃないかと思ってはいますが、実際どうなるかは1年半後のお楽しみ状態かなと思っております。スタートアップはトライアンドエラーしていくしかないので、頑張ります。

井上さん:弊社の取り組みは2点です。まず、候補者体験への投資はしっかりやっていきたいなと思っています。当然の話ですが、求職者側のエンジニアさんからすれば、できるだけ多くのメンバーに会ってから入社する流れが一番いいんですよね。チームの雰囲気もわかりますし、どんなメンバーがいるかもわかるので。弊社はエンジニアが10名ほどなので、選考やオファー面談なども含めて、全員が絶対に1回は候補者の方とお話しする機会を設けています。

あと、これはエンジニア限らない全社的な話ですが、採用に関わってくるメンバーには会社の責任者として出てもらう形になるので、考え方、価値観みはしっかり統一しておきたいと考えていて、「採用活動するうえでの心得」的な社内ドキュメントを僕が書いて、共有しています。5つくらい項目があって、その項目をちゃんと守って、候補者体験をしっかり考えて、みんな採用活動やっていく認識で取り組んでいます。

二つ目の取り組みは、すごくHow寄りの話なんですが、ダイレクトリクルーティングです。よくやりがちなのは、たくさんの媒体がある中でひとつの媒体だけを契約して、1週間に1回見て「いいね」したり、スカウトを送ったりという運用だと思います。弊社はほとんどの媒体と契約していて、1週間に1回、全媒体の一番ホットな人たちだけを見て、一番ホットな人たちだけをリストアップしてスカウトを送っています。これはシンプルにスカウト返信率を上げるための取り組みです。

媒体の契約期間は半年か1年が多いですが、各媒体で1人か2人採用できれば大体ペイできるので、媒体の数を増やしても全然問題ないと考えています。エンジニア以外の職種も、この運用で採用していますね。

武藤さん:「媒体を増やすと運用が回らない」みたいなパターンもよくあると思うのですが、無理なく運用できていますか?

井上さん:ガチガチに運用ドキュメントを作ったうえで、スカウトの送付だけをRPOと呼ばれる採用代行の会社にお願いしています。必ず週に一回、月曜日に候補者リストを更新して、「各媒体のリストにあるものだけ送ってください」とお願いする形です。RPOの方は各媒体を全部見て、リストに含まれている方だけに送付するような運用ですね。

武藤さん:弊社は現状、約40名のエンジニアがいます。業務委託の方を入れると100名弱ぐらいの方が関わっている組織なので、これから一気に人を増やすにあたって、今はスケールに備えようとしているところです。そのための足元として、一番大事だと思って今取り組んでいるのは「来たいと思える組織」をちゃんとつくることです。

事業がうまくいってない状態で表面的な発信だけで人を集めるのは難しいので、心から「この事業の魅力はここですよ」と自分でも言える状態をつくっていきたいと思っています。チームでいうと、組織環境へのテコ入れです。最近はチームトポロジーに関する本も出ていますが、チームトポロジーのアプローチのベースとして、ソフトウェアを適切に成長させるには、組織もそれに合わせてちゃんと構成しなければいけないと考えています。

我々の事業が「エンジニアにとって良い環境でありつつ、ソフトウェアを成長させようとしている」という状態を実現することを目指してテコ入れを行っています。こういう活動は、直接的なKPIとしては採用に繋がらないかもしれませんが、ボディーブローのようにじわじわ効いてくると思っています。

他に取り組んでいることとしては、とにかくカジュアル面談をしまくる人海戦術です。本当にいい人を採用するには、労力を惜しまずにやっていくことが重要だと考えています。実は弊社はアルゴリズムエンジニアだけでも20名ぐらいいて、採用認知度のランキングでは2位を獲得しています。アルゴリズムエンジニアの採用がうまくいっている秘訣は明確で、競技プログラミングの技術がそのまま事業に活かせることと、優秀なメンバーがいることが、競技プログラミングの界隈に知っていただけている状態だからです。

柳さん:技術コミュニティへの認知は採用において非常に大事だと思いますが、貴社はアルゴリズム界隈での認知度を広げるために、何か取り組んでいることはあるのでしょうか?

武藤さん:最初に優秀なメンバーに入社していただいて、その後も界隈認知度の高い方に声をかけて集めたうえで、コンテストや大会などでスポンサーを務めたり、弊社の名前を冠して主催したりしています。コミュニティに対して我々からちゃんとお金を出すっていうのは、直接的にはわかりづらいですが、採用において重要な投資になっていくと考えています。

投資額としては自分たちのブースを置けるか、口頭でのセッションができるのかなどによりますし、人気な場所にブースを置けるかでも変わってくるため、費用対効果は大きいとも小さいともはっきり言えないのですが、究極、そのコミュニティに還元されること自体がプラスになるので、大事だと考えています。

石坂さん:当社の場合は、エンジニア組織としての認知度を高める活動をしています。エンジニア組織の強さはアスエネの強みの1つなので、こういった場に私が登壇したり、LAPRASさんの協力のもとYouTube番組を収録させてもらったりすることで、まずは知ってもらえるよう機会を増やす活動をしています。

ここまでが国内向けにやっていることですが、アスエネには海外開発拠点としてフィリピンのセブにも拠点があります。オフショアではなく、一緒にビジョン、ミッション、バリューに共感してもらった上で参画してもらえるメンバーを採用しています。当社は、アメリカとシンガポールで既に事業を展開しており、プロダクト開発やサポートにおいても英語でのコミュニケーションが発生します。そこで、フィリピンのセブ拠点で海外要望などを直接受けて開発するなど、グローバルプロダクトとして国内に閉じないグローバルな組織にしていく構想があります。

Q&A

Q1:1人目のエンジニアを採用する際の、採用基準を教えてください。

井上さん:あくまで1つの事例としてお話しすると、1人目エンジニアの必須要件としてソフトスキルとカルチャーマッチが大事だと考えており、責任感とサービスへの愛着が強い方が良いと思います。tacomsの場合は責任感が強く飲食店向けサービスを開発したいという想いを持つ方を採用しました。とにかくコミットが高く落ちたボールを積極的に拾ってくれる方で、3年間くらい在籍してくれています。会社としてカオスな時期を支えてくれた方なので本当に感謝していますね。

ハードスキルの面においてはもちろんマネジメント経験がある方だとより良いと思いますが必須ではないかなと思っています。1人目エンジニアの業務として少なくとも数年はマネジメントだけをやることはほぼあり得ないと思うんですよね。手を動かしてもらいながら1〜2年後の組織へ向けて先回りして準備をしていくことになると思います。

結論、ソフトスキルの責任感とサービスへの愛着は必須とした上で「会社の成長に合わせて自分がやるべきこと」を理解しているマネジメント経験者が一番理想かもしれないです。この人はリファラル以外で採用できなさそうですが…笑

武藤さん:私も、ハードスキルよりもソフトスキルを重視して採用することは、初期において特に重要だと思っています。スキルがまだ足りていない状態でも、カルチャー面がフィットしてれば後から習得できるので。

井上さん:初期であればあるほど、業務整理であったり、開発以外の業務がどうしても出てきてしまうんですよね。弊社の場合は飲食店さん向けのサービスですが、初期のエンジニアには直接電話でサポートをお願いしていました。お客様から技術的に難しい話で問い合わせがあったときに、「自分が直接電話かけますね」と仰ってくれて直接電話してくれていました。そのくらいコミットがある方たちでしたね。

ジョインして間もないエンジニアに、コーディングルールをキャッチアップしてもらって品質を保つための施策を教えてください。

金杉さん:弊社はルール、コンポーネント、設計の部分は、初期から結構ガチガチに決めてあって、そのルールに則って運用しています。GoogleDocsでDBのレイヤーから各クエリで何をとるのか、みたいなところから全部テックリード以上の承認をもらわないと駄目だったりと、結構厳しめです。

永遠にメンテナブルな状態なので「ここだけは急いで」みたいなものは一生入れません。ビジネスサイドとうまくコントロールして、そういう案件をなくして、常に一定のペースを維持するのが僕の仕事だと考えています。ちょっと理想論ではあるんですけど、これをハイペースで継続するために、何とかしようと頑張っているところです。

SREは、どの時点で採用すると判断しましたか?

井上さん:これは難しいんですが、テクニカルな話をすると、シリーズAの調達が決まったくらいだと思います。シリーズAの資金調達が決まった時点でPMFしている状態になってきており、パイプラインの会社を見た時に障害を起こした際の事業インパクトが大きい状況だったので、そこで採用する判断をしたような気がします。

組織拡大に伴うガバナンスを乗り越えたストーリー、これからの展望について教えてください。

武藤さん:お客様の中に内閣サイバーセキュリティセンターで重要インフラに指定されるような企業があって、そこから結構重要なデータを預かって、アルゴリズム最適化をして返さなければならないので、まさにガバナンス領域はかなり重要だと思っています。

それこそ海外からは「データを海外に保持しないでくれ」といったことを含めてさまざまな要求があります。プロダクトを国内で管理できるように初期の頃からログデータの扱いに関する線引きをしたり、創業当初の少人数の段階から社内の業務データを細かい区分けしたりした状態で事業を始めました。

業務委託の方のコミットメントを高めるために、何をしていますか?

石坂さん:委託業務の方に対してわかりやすく理由づけをして、ちゃんと対話することが重要だと思っています。アウトプットに対しての対価として報酬だけでなく、「弊社ならこんな成長ができる」といった具体的な会話をします。

チームポリシーとして、正社員に限らず「言われたことをただやるのではなく、意見を出してほしい」と伝えています。期待値の認識合わせをしたうえでジョインしていただくことで、中長期に関わっていただける、かつ高い成果を出していただけると感じています。また、週次の振り返りを通してお互いに要望や感謝を伝え合う機会もつくっており、自分の意見が議論の土台に乗る仕組みもあります。

開発チームの必要な人数はどのように算出していますか?

井上さん:事業計画を引いて、売り上げだったりの達成に必要なプロダクトロードマップを引いて、そこから工数を見積もって算出しています。大体半年に1回くらいの周期で再計画していますが、やはり工数の見積もりはなかなか難しいので、弊社にとっても課題です。

武藤さん:なるべくリーンにやらないといけない一方で、トップラインを下げるような人の削減はすべきではないと思っています。売り上げがトップラインに直接響くところはしっかりと採用を進めつつ、少人数で回せる部分はリーンにやる、メリハリが重要だと考えています。

いいエンジニアを採用するには、どの採用ルートが効果的だと感じているか教えてください。

石坂さん:期待値通りの成果を出してくれる人を「いいエンジニア」の定義だとすれば、リファラル採用が最強です。「採用強化ポジションのエンジニアを採用するための手段を知りたい」と質問を解釈しますね。反応が良い媒体で言うと、LAPRASさんです。いろいろな採用媒体を利用していますが、LAPRASさんを1番長く活用しています。

スタートアップのような、知名度が高くない会社では、「いいね」をしても反応すらもらえないケースも多くて、その最初のハードルを越えるのが難しいんです。最初からプロフィール詳細を見たうえで、熱意を込めてスカウトを送れるLAPRASさんは、初手からこちらの思いを伝えることが可能なので使いやすいです。

武藤さん:アルゴリズムエンジニアに関しては「AtCoder」という競技プログラミングサイトでほぼ採用しています。それ以外のソフトウェアエンジニアだとやっぱりリファラルが最高なのは疑う余地がないですね。エージェントやスカウト媒体も、それぞれ特色があって違う方が登録しているので、全部使うくらいの方針でもいいのかなと思います。

金杉さん:うちはまだ採用媒体を使い始めたばかりで、今までは全部リファラルでやってきました。採用に困っている方は、今回のようなイベントなどに参加して横の人脈をつくったり、前職で一緒だった方を口説き落としたりするのが、まず一番にやるといいかなと思います。

弊社はスカウト媒体だけではなく、ほしい役職に応じてエージェントも活用しています。現在、VPoEという高めのポジションの採用に取り組んでいるので、エージェントからの紹介が確実かなと。武藤さんが今おっしゃったように、媒体によって登録している方もさまざまですし、どの媒体にもいい方がいらっしゃるので、「この層を取りに行くならここ」と使い分ける形が良さそうですね。

井上さん:あんまり「リファラル、リファラル」って言いたくない気持ちもあるんですけど、強い意志を持ってリファラルを推進してほしいなと思っています。これは僕自身の反省も込めての意見です。

弊社は現在、創業5年目で、プロダクトをローンチしてからは今年の春で4年目になるのですが、1年目、2年目の初期からリファラル比率50〜60%の組織を目指すべきだったなと強く反省しています。当時はそんな考えもなく、横の繋がりも少なかったのでリファラルも厳しいと諦めていた部分があって。でもリファラルは、初期でやっておけばやっておくほど、後に効いてくる投資だと思います。先輩や同級生のツテをたどったり、イベントに参加して一人でも多くの人と交流したりと、手段は色々あるはずです。とにかく初期からリファラルに注力することをおすすめしたいですね。

まとめ

スカウト媒体はたくさん登録する、一人目エンジニアはスキルよりコミット力を重視、とにかくリファラルが最強など、各社の実体験をもとにした知見が共有されたイベントでした。登壇・ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

(ライター:成澤綾子)