*この記事は、2025年3月12日に実施されたオフラインセミナーのイベントレポートです。
エンジニア採用において、エンジニア向けのカンファレンスやコミュニティを活用する方法は有効です。しかし、非エンジニアの人事担当者は「どれに参加すればいいかわからない」「成果に繋げるためのコツはあるのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、多数のエンジニアコミュニティの運営に携わるJ.Kさんに、代表的なエンジニアコミュニティの紹介や採用に繋がった事例などを徹底解説していただきました。
エンジニア採用を一歩先へ進化させたい人事担当者の方は、ぜひご一読ください。
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目次
- 1 登壇者紹介
- 2 コミュニティはエンジニア採用にどう役立つのか?
- 3 コミュニティが生み出す「人とのつながり」
- 4 代表的なエンジニアコミュニティ
- 5 コミュニティの「人が集まるパワー」を生む源とは?
- 6 数や規模も多種多様なアジャイルコミュニティ
- 7 地域間の交流を促す、地域コミュニティ
- 8 コミュニティに所属するエンジニアはどんな人がいるのか?
- 9 コミュニティがエンジニア採用に繋がった事例
- 10 何が転職のきっかけになるのか?
- 11 J.Kさんの転職体験談
- 12 参加者は「自分のことも転職も意識していない」という前提を持つ
- 13 エンジニアコミュニティのお作法
- 14 目の前の人と「繋ぎたい社内の人」がいるか考える
- 15 まとめ
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登壇者紹介

KDDIアジャイル開発センター株式会社 / 開発 / 小坂淳貴(通称 J.K)
Agileで日本から世界を楽しく!
Agileの世界とエンジニアコミュニティにどっぷりハマっている元製造業の人。
ソフトウェア開発でプロセスやコミュニケーションに課題を感じていたところアジャイルに出会い、以降、アジャイルの世界へのめり込む。
現在はAgileとScrumの専門家としての知識や経験を活かしながら組織開発に従事。
カンファレンス運営などを通じ、日本にAgileが楽しく広まることを夢見て日々活動中。
一般社団法人Agile Japan EXPO 代表理事
ペップトークマスター

LAPRAS株式会社 / セールス / 毛利匡邦
大学卒業後、株式会社リクルートキャリア入社。IT・Web系のお客様に対して人材紹介の営業を経験。その後、クリエーションラインでIT商材の営業を担当。営業のマネージャーや教育事業の事業責任者も経験。ポジウィルでは個人向けのキャリアトレーニングのカウンセラーとして年間700名以上の相談を受ける。現在はLAPRASに参画し、新規のセールスを担当している。
コミュニティはエンジニア採用にどう役立つのか?
J.Kさん:本日はアジャイルコミュニティについてお話します。私も自身、コミュニティを通じた転職を2回経験しています。私は「コミュニティを通じた転職経験者」でもあり、主催者でも参加者でもある、という立場です。
KDDIアジャイル開発センターについて
J.Kさん:所属企業であるKDDIアジャイル開発センターは、コミュニティで活躍している人が続々とジョインしてくれている会社です。コミュニティで人と人とが繋がり「そこに参加してよかった」と思ってもらえているからこそ、参加してもらえているんだろうなと感じています。また、コミュニティに関する情報発信にも会社として積極的に取り組んでいます。
現在は200名規模の会社で全国13拠点に展開しているのですが「各拠点に人がいる」ということを実現できているところも特徴です。
コミュニティが生み出す「人とのつながり」
J.Kさん:皆さんにとって「コミュニティ」はどういう場所ですか?
毛利:そうですね。生成AIによって「人のつながり」が少しずつ変わってきている中で「肌と肌とで触れ合える場所」という感じでしょうか。
J.Kさん:お集まりの皆さんは、「採用」という目的があって、そのためにコミュニティに参加している、という方も多いようですね。それでは「優れた人材を獲得するために、アジャイルコミュニティがどのように役立つのか」についてお話したいと思います。
まず、代表的なエンジニアコミュニティがどのようなものかについてもご紹介します。
代表的なエンジニアコミュニティ
JAWS-UG
J.Kさん:日本語のドキュメントがない中で、AWSを導入した日本人エンジニアたちが「自分たちで情報発信をすることによって、お互いを助け合おう」と、2010年に発足したコミュニティが「JAWS-UG」です。
全国に50を超える支部があり、年間300回以上の勉強会やイベントが開催されています。2020年に開催した10周年イベントの「JAWS-DAYS」は、参加希望者が1万6000人を超えるまでに拡大しました。「毎日どこかでAWSに関するイベントがある」というような規模のコミュニティです。
コミュニティ発足時のエンジニアたちの想いや立ち上げの経緯に価値を感じたり、自分もそこに貢献したいと考えた人たちが集まった結果、現在の規模感まで広がってきたという経緯あります。このようなコミュニティがあるということ、こうした現象を生み出すコミュニティが持つパワーを知っていただければと思いご紹介しました。
AI駆動開発勉強会
J.Kさん:もうひとつ代表的なコミュニティとしてご紹介したいのが「AI駆動開発勉強会」です。3月10日に開催された勉強会は、現地参加が150人、オンラインでも2000人近くが参加しました。これは脅威的な数だと思います。
コロナ禍では300〜500人が参加する規模のオンラインイベントも多かったですが、だんだん減っていって、この1〜2年のオンラインイベントは100人以下くらいの規模が多くなってきていました。
そんな中でAI駆動開発勉強会がこれだけの集客を実現するのは、AIが注目されていること、必要性を肌で感じているエンジニアや採用担当者が増えていることを表していると思います。
AIというキーワードで「今どんなことが起こっているのか」、「それをどうしていかないといけないのか」を考えている方たちが集まってきてるんじゃないかなと感じます。
コミュニティの「人が集まるパワー」を生む源とは?
J.Kさん:コミュニティがどれだけ「人々を集めるパワー」を持っているかご紹介しました。今こうして話している場も「採用meet up」というコミュニティです。例として挙げた2つのコミュニティのように規模が大きくなっていく可能性もあります。でも、規模を大きくしたり、その場を盛り上げていくことがコミュニティの本来の目的じゃないんですよね。
コミュニティを通じて何かを成し遂げた人がいたら、それがだんだん広まっていって「参加するといいことがある」と思ってもらえたり、コミュニティで「誰かにしてもらったことを返そう」と考えたり…。そうした「コミュニティ内での良い交流の循環」がうまくいくことが大切です。
それがうまくいくと、この「採用meet up」でも、今日の出会いが次の参加の目的に繋がっていくかもしれないですよね。私もそこに貢献できたらいいなと思いながらお話をしています。
数や規模も多種多様なアジャイルコミュニティ
J.Kさん:アジャイルコミュニティは老舗もあれば学生が立ち上げたものもあり、多種多様です。数も多く、軽く探しただけでもこれだけあります。
「自分の関心がより強いほうへ行きたい」、「自分の地域で広めたいなど」の理由で分家化したり、新規で立ち上げたりするのがアジャイルコミュニティの特徴で、私が一番お世話になっているコミュニティでもあります。
地域間の交流を促す、地域コミュニティ
J.Kさん:私は3〜4年前に静岡県の三島という場所に引っ越したんです。人口50万人ほどの、それほど大きくない街ですが、地域のエンジニアコミュニティを通じて知り合いが増えてきました。
コミュニティに所属しなければ、三島に友達なんて誰もいないという状態だったと思いますし、コミュニティの代表と今の会社の代表が知り合いだったことがご縁で入社に至っています。
コミュニティに所属するエンジニアはどんな人がいるのか?
J.Kさん:コミュニティに所属しているエンジニアの特徴を、イベント時の主催者、登壇者、参加者の3パターンでまとめました。
主催者タイプのエンジニアの特徴
主催者タイプのエンジニアは、業務以外でも時間を割けるほどの想いがある人です。
想いがある上で、「次はあなたにやってほしい」とお願いされる形で順番に主催者をしていく循環であれば問題ないですが、単に輪番制で役割としてやらされているような人は、主催者タイプではありません。
「こういうイベントに参加したい」というビジョンを持っている人も、主催者に向いている可能性がありますね。また、イベントの企画運営や参加者を集めるのも、主催者の重要な役割です。
主催者が「どんな人と知り合いたいか」は、まずスポンサーになってくれる人ですね。自分のことを応援してくれるのも嬉しいですし、自分たちの活動が世の中の誰かの役に立つと思ってもらえたからこそスポンサーになっていただけると思うので、すごくありがたいです。
あとはイベントに参加してくれる人とも知り合いたいですね。主催者として「今日のイベントが良いと思ったら、ぜひ同僚や知り合いに伝えてください」といったことを考えるわけです。
登壇者タイプのエンジニアの特徴
J.Kさん:登壇者として「自発的に乗り込んできた人」は、もともとそのイベントの参加者だった人がほとんどです。
「自分も登壇してみたい。登壇できるように、次回までの1年間頑張ろう」と思って、行動に移すということが起こります。私は、今日は後者の「主催者に呼ばれてきた人」ですが、普段は前者が多いです。
呼ばれてきた場合も、自分が話したいから来るので、ある意味では常に「自発的に乗り込んできた人」と言えるかなと思います。特徴的な事例や知見を持っていて、 「この人の経験を他の人にも知ってもらうと、いいことある」と思ってもらえたからこそ登壇する機会があるので、呼んでもらえるのはとてもありがたいです。参加者の皆さんとしても、登壇者のほうが話しかけやすいのではないかと思います。
登壇者がどんな人と知り合いたいかは一言では書きにくいのですが、社外で繋がれる人だと思います。覚えておいていただきたいのが「登壇者は声をかけたら喜ぶ」ということです。行列ができていても気にせず「さっきのお話、聞いてました」と、ぜひ声をかけてみてください。
参加者タイプのエンジニアの特徴
J.Kさん:エンジニアの場合、自身のスキルアップが参加の目的です。また、採用担当者や他の職種の場合は、何かしら社内で課題を抱えていて、その解決法が知りたくて参加しているという理由が多いです。
お金や環境も含めて、自分たちではできないことを誰かがやっている場所へ、情報を仕入れにいくモチベーションで参加しています。
なので、やっていることは情報収集と、人脈開拓です。中には人と繋がるのが好きでコミュニティに参加する方もいますが、主目的はやっぱり「課題をどうにかしたい」という人がほとんどだと思うので、人脈開拓にはカッコをつけています。
採用担当者の方が素敵なエンジニアさんとのご縁を求めて参加するのに対して、エンジニアさんは自分の仕事をよりよく、上手にこなせるようになりたいと参加しています。
人との交流が目的ではない参加者もいる
J.Kさん:参加者さんはこういった属性の人が多いし、私自身もそうです。 この前提を理解することはすごく大事だと思います。だから「どんな人と知り合いたい?」と聞かれても、エンジニアは「そもそも知り合いたくない」と答える人もいっぱいいます。
私は「知り合いたくない」とまでは言わないですけど、自分から名刺交換していくのはすごく苦手です。情報収集が目的で、名刺交換をしに来ているわけではないので、いきなり「名刺交換しましょう」と言われるとびっくりされる可能性があります。
コミュニティに「熱狂する人」が生まれる理由
J.Kさん:そんなエンジニアが、どんな人なら知り合いたいかというと「同じ悩みを抱えている人」です。社内の人は誰もわかってくれなかったのに、同じ悩みに共感してくれる人にコミュニティで出会えた。これってすごくモチベーションに繋がるんですよ。一歩間違えると転職のモチベーションに繋がってしまうくらい。
やっぱり自分の悩みに「わかる」と言ってくれる人と、仲良くなりやすいですよね。同じ課題を抱えていて、そこに共感しあえると、「人事の人から見てもそうなんですね」というふうに会話もだんだん盛り上がりますし、そのエンジニアを口説ける可能性もあがります。
コミュニティがエンジニア採用に繋がった事例
J.Kさん:弊社でコミュニティから採用に繋がった事例を紹介します。コミュニティで弊社を知り、活動を通じて「この会社で働くといいことがありそうだ」と感じていただいた結果として、採用面談に申し込んでくださる方が多いです。申込は非常に多いですね。
私が出入りしてるアジャイルコミュニティの場合、転職事情は下図のような感じです。大企業→スタートアップの場合もありますし、組み合わせは無限に書けるので代表的なものだけ書いています。私の場合、大企業からベンチャー企業に行って、また大企業に戻りました。
何が転職のきっかけになるのか?
新しい挑戦ができる環境を求めて
J.Kさん:転職の理由として多いのは、今できていない経験をできる場所に飛び込むケースです。私も最初は大企業の中でアジャイルはできない状況にあるときに、「これからアジャイルを実践する」という会社の人と繋がって転職しました。
「アジャイルは今の会社でも実践しているが、もっとすごい挑戦をしたい」と、現在の勤務先ではできない挑戦ができる新しい環境を求めて転職するケースには、良いご縁が生まれるチャンスがたくさん眠っています。
3~5人セットでおこなう「チーム転職」
J.Kさん:あとはチーム転職ですね。これはあまり聞いたことがないと思いますが、3〜5人単位のチームで面談をし、20~30社など良い会社を探していく中で、チームとしての価値を認められてチームごと転職するケースです。数は多くはありませんが、事例はいくつかあります。
自分の状況に合った環境を探したい
J.Kさん:あとは労働環境ですね。お子さんが生まれたりすると、リモートワークができない環境にストレスを感じる人もいます。家庭の状況など、自分の状況に合った選択ができないときにフレキシブルな働き方ができるところへの転職を考えるケースが多いと思います。最近では、リモートワークから出社回帰への問題も、きっかけになる可能性がありますね。
J.Kさんの転職体験談
業務の中で生まれた疑問が転職のきっかけに
J.Kさん:私自身の転職体験をお話します。私は元々製造業で働いていました。90年代の日本の製造業は、勢いがあったんです。
そこに憧れて入ったはずなのに、当時、自分の作ったソフトウェアが「思ってたのと違う」と言われることをたびたび経験し「憧れて入ったこの業界で、なんでこんなことが起きているんだろう」と疑問を持っていたところで、アジャイルと出会いました。それを実践したいと考えてカンファレンスに参加したら、そのときたまたま隣に座っていたのが、その後の転職先となる会社の社長だったんです。
その後、地域コミュニティの参加しながら「三島で楽しいことがやりたい」と考えていたときに「三島に拠点がある」というのが大きい理由となって今の会社に移籍することになりました。転職後もアジャイルをやっているので、知り合いからは「世田谷区役所から渋谷区役所に引っ越したみたいな転職だね」と表現をされたくらい、結構近しいところへの転職でした。
リファラル転職のきっかけになる出来事
J.Kさん:あとは東京から地方企業への転職について、私はいくつか経験があります。
以前、山手線に乗っていたときに「地方に住みながら東京と同じお給料をもらえる」というIT企業の広告を見たことがあります。IT系は地方になればなるほど孫請け、2次・3次請けになっていくので、同じ仕事でも収入の差が結構シビアなんです。地方でも高いお給料をもらって活躍できるなら、すごくいいことですよね。
同様に、弊社のリファラルでも、北海道や関西在住の方が入社しています。ひとりの方は会社が解散することがトリガーになりました。「職種的に合わなさそうだな」と思いながら、半ば軽い気持ちで面接を受けたそうです。でも、それがまさに弊社がその分野の仕事を新しく始めるタイミングだったんですよ。まだ求人情報にも書いていない職種だったんですが、そうした偶然もひとつのご縁ですよね。
あとはお子さんが生まれたことを機に「家にいながら自分のやりたいことに挑戦したい」と、リファラルで入社した方もいました。
参加者は「自分のことも転職も意識していない」という前提を持つ
J.Kさん:今日一番重要なポイントだと思っているのが、本人は「その出会いがあるまで、その会社への転職を意識していない」ということなんです。
私の場合、前の会社はカンファレンスで社長に会うまで、その会社のこと自体知りませんでした。
たまたま隣に社長が座っていて、壇上の人が「隣の人と3分喋って帰ってください」と言ったことによって名刺をいただいて、そこに取締役と書いてありました。Webサイトを検索したら「この会社面白そうかもしれない」「今やってることとは違う、やりたいことができるかもしれない」と思ったんですよ。
そこから、会社訪問や面談をして1ヶ月後に内定をもらって、3ヶ月後には十数年勤めた1社目を辞めました。あの日の出会いがなかったら、私は今ここにいないと思います。
地域コミュニティがきっかけで知った今の会社も、ずっと存在を知ってはいたんですが、まったく興味がなかったんです。自分の住んでいる三島のコミュニティ代表と、今の会社の社長が友達だったことが、そもそもの入社のきっかけでした。
ふとしたきっかけでその会社のカジュアル面談を受けることになり、ちょうど近所で社長が審査員をするイベントがあって、「社長と話せそうだな」と思って参加しました。自分でもアクションを起こしてはいましたが「このままいくと、こういうふうに転がって入社するんだろうな」という流れにあえて逆らわずにいたところ、そのままの経緯で今の会社に転職しました。
たまたま隣に座ってた社長の会社に行くことになったり、紹介してもらうまでは「知っていたんだけれども、行く気がなかった会社」に行くことになったり、全く意識していないところから2回も転職に至っているわけです。
だから、皆さんも今、隣同士の方とお互いの会社で転職するなんてことは全然考えていないと思います。でも、ちょっと話してみて「そういう働き方いいな」と思った瞬間に、転職の意欲が大きく変わる可能性はありますし、来月には所属してる可能性もあるんですよ。コミュニティに限らず、転職は結構そういうものなのかなと思います。
「ぜひ自社に来てほしい」と思う人がいて話しかけたとしても、その瞬間に「行きたい」と思ってもらえることはあまりありません。ある程度時間が経って、後から来てもらえる、というパターンのほうが多いです。
エンジニアコミュニティのお作法
J.Kさん:ここからは、エンジニアさんとどうやってお付き合いしていけばいいのか。エンジニアコミュニティにおける作法を解説します。
先ほども触れましたが、エンジニアは「自分自身の課題を解決する目的」で参加しているので、いきなり「うちに来ませんか」と言ってしまうと嫌われてしまう可能性があるので避けましょう。
イベントの営業メールの送り方は要注意
生々しい話として、エンジニアの方々は皆、口を揃えて「イベントに参加するのはいいけど、後から来るスポンサーの営業メールは本当に嫌だ」と言っています。
営業メールを送るときは、相手に喜んでもらえる内容のメールを送るか、喜ばれる自信がなければ送らないほうが得策です。イベントでの接点で良い感触を得られたなら、送らないほうが好印象です。メールよりも、イベントに出向いて直接会って、知り合っていったほうがいいと思います。
あとは、いきなり名刺交換をしないようにしましょう。まずは「あなたと繋がりたいです。どういう形であれば連絡が取れますか」と普通に会話してください。エンジニアの方々は、会社のメールアドレスよりもSNS上でのやり取りを好む方や、名刺を持ち歩く習慣がない方も多いため、会話の中で相手がどんな形で繋がりを求めているか聞き出しましょう。
繋がりたいエンジニアに声をかけたけれど「SNSはやっていない、名刺も持ってきていないんです」と言われたら、そのときに始めてメールアドレスを聞くとか、相手が伝えてくれる情報を会話に取り込んで着地することがとても大事です。こちらから「あなたと繋がりたいので、私の名刺だけ持って帰ってください」と提案するのもいいと思います。
出会いはどこで起こるかわかりません。なので、繋がりたい人に自分から積極的にアプローチするのはすごく大事です。ただ、相手のエンジニアが同じように返してくれるとは限らない、と理解しておきましょう。
自分自身がコミュニティを楽しめることが大事
J.Kさん:やはり、コミュニティにおいては「自分自身が楽しめていること」が大事だと思います。
誰かと繋がって、次に会ったときに「また会いましたね」と声を掛けるなど、楽しみながら交流を重ねていった先に「あの会社ちょっといいな」「あの人と働きたい」といった変化が起こっていきます。
逆の立場で考えてみてください。1回会っただけの人のところで働きたいと思えるでしょうか?
登壇者だったら、話している内容からその人の魅力やスキルが何となくわかって、「この人の会社で働きたい」と思わせられるかもしれません。しかし、参加者同士で、人事の方とその場で1回話しただけで、いきなり「その会社に入社したい」とはならないと思います。
また、明らかに「採用のために人探しに来ています」という姿勢で参加してしまうと、他の参加者との熱量の差が出てしまいます。自分自身が楽しんで「この人も一緒に同じイベントを楽しんでいる」と思ってもらうことが大事です。
音楽のライブやスポーツ観戦を想像してもらうとわかりやすいと思いますが、立場や役職なんて関係なく、一緒に同じものに対して楽しんでいる状態だと、隣の人と仲良くなれる可能性がありますよね。全然違う目的で来てると思われてしまうと、仲良くなれません。普通のことなんですけど、忘れがちなので気をつけましょう。
私がお付き合いがある会社では、エンジニア系のカンファレンスのスポンサーをしているうちに楽しくなってしまって、非エンジニアなのに自分で有給を取って他の有料カンファレンスに参加する人も現れています。そういう人は魅力的だし、交流していてもやっぱり楽しいですよね。
コミュニティを能動的に楽しめるかが大事
J.Kさん:自分自身が楽しめていると、イベントにも能動的に参加できます。
先にご紹介したJAWS系だと、年間300件のイベントが全国でやっているので、自分の地域だけでなく地方にも足を伸ばせます。そうすると「あのときあの県のイベントで会いましたよね」とか、ふとしたきっかけで会話が弾んで急に仲が深まる機会も生まれます。無理して遠出しようという意味ではないですが、ご縁が繋がるタイミングを増やせます。
コミュニティを能動的に楽しんでいる結果として人と繋がって、その人だけでなく、そこからさらに紹介してくれた人とご縁が繋がったりします。逆に、コミュニティ活動をつまらないと思っていたら、あなたの魅力は出せませんよね。「自分自身が楽しい」という感情は大事です。
「良いご縁」は狙っては作れない
J.Kさん:「今この瞬間にゴールを決めよう」としても「良いご縁」はなかなか作れません。ただ、今日のご縁は、明日かもしれないし、来年かもしれない「違う出来事」に繋がっていきます。「良いご縁」は狙って作れるものではないので、長い目線で見ていくことようにしましょう。
人とのちょっとしたつながりは、だんだん蓄積されていきます。今出会えた人が5人でも、5人と会う機会を10回作ったら50人と出会えることになります。その50人の中の3人が自分のことを魅力的に感じてくれて、誰かに紹介してくれたら、またさらに新しい人脈も生まれていきます。
コミュニティはそういうことが起こる世界なので、今すぐの成果を追うのではなく長期的な目線での付き合いが大事です。
自分自身が魅力的であることが採用につながる
J.Kさん:皆さんも考えてみてください。コミュニティに参加したとき、あなたはどのように自己紹介をしますか?参加者の方は、そもそもあなたの会社より、あなた自身に興味があるんです。
そこを履き違えると「この人は会社のために来ているんだな」と思われてしまい、仲良くはなれません。
「自分自身のことを、自分の言葉で話す」って、なかなか難しいですよね。そんなときは「私はこんな仕事をしてます」ということよりも「私はあのアーティストが好きで、ライブによく行くんです」とか「スープカレーや温泉が好き」といった話をしてみましょう。そのほうが、相手はあなたに興味が生まれるんです。すごく普通のことではあるんですけど。
会話が繋がる一言を添える
J.Kさん:自己紹介するとき「私は〇〇という会社の人事です」と自己紹介するのと、「私はこんなエンジニアに興味がある、〇〇という会社の人事です」と伝えるのでは、印象が全然違います。
こうした枕詞を付けるだけで、相手の反応は変わるんです。少し情報を足して、具体的に話せると、相手も「その分野はやってないんです」「今ちょうどAIを勉強したいと思っているんです」といったリアクションを返せますし、そこから話がしやすくなります。
こうやって「ちょっと情報を足す」だけで、エンジニアに限らずいろんな人と仲良くなれるんですが、会社の肩書きだけで話そうとすると難しいんですよ。会話に繋がる一言を添えるだけで、「あなたと話したい」という意思が相手に伝わるんですよね。
会社名とか肩書きではなく「私はこんなことに興味があって、このコミュニティに参加しました」と言えると「私もそれが気になって参加したんですよ」と返しやすいですよね。会社名だけ言われると「そうなんですね」としか言えないですから。自分自身で、自分をどう紹介するかが、仲良くなれるか、繋がれるかどうかに関わってくると思います。
あえて魅力だけでなく、自社の課題も伝えてみる
J.Kさん:仲良くなって会社の紹介をできるタイミングになった場合も、魅力ばかり伝えるではなく、もうちょっと広い話をしたほうがいいと思います。例えば、「ここがもっと良くなったらいいと思っている」と会社の課題を伝えてみるとか。
私もリファラルに関わるときは、会社の人が言わないような話も含めて、実態を伝えるようにしています。もちろんコンプライアンスに関わるようなことは言わないですけども。
それでも「面談を受けたい」と言ってくれたら、私が感じている会社の魅力だけではなく、課題にも共感してくれたということなので、より強い意志を持って面談に臨んでくれると思うんですね。
「私達のビジネスにこういう課題があって、解決するためにこういう人を探しているから、あなたのスキルに魅力を感じている。ぜひあなたの力を発揮してほしい」と伝えることによって、面談への一押しにもなっていきます。
相手が登壇者であれば「あなたの今日の話は弊社がまさに困っていることで、今こんな人を探してるんです」と伝えてみましょう。本人でなくとも「それならこういう人がいる」と、知り合いを紹介してもらえるかもしれません。
そういうパターンで転職が成功することは、実際に珍しいことではありません。エンジニアは転職をする人が多く、人材に流動性があるので「今の職場よりもステップアップしたい」とか、「新しいことに挑戦したい」と考えている人が多いです。そのため、コミュニティでのつながりから、別の人を紹介してもらえるケースは結構あります。
目の前の人と「繋ぎたい社内の人」がいるか考える
J.Kさん:自社と誰かを繋ぐ、ということは「社外の人と、社内の誰かを繋ぐ」ということです。「この人を、社内のあの人と繋いだらうちの会社はもっと楽しくなる」という目線で、誰と誰のご縁を繋げるか考えてもいいでしょう。
自分たちが求めているエンジニアが「どの領域で、どのレベルの人か」を判断する力は、社外で交流する中で養われる部分もあります。そういった意味でもいろんなエンジニアとの繋がりを得ることは、素敵な人と出会っていくために重要なことだと思います。
いろいろなコミュニティで「この人と一緒に仕事をしたら絶対楽しい」と思えるような瞬間に出会えるようになるといいですよね。私自身も偶然の出会いから、結果的にコミュニティで2回転職する経験をしました。
コミュニティには、それだけの大きなパワーがあります。そして、パワーがあるところには、パワーのあるエンジニアも集まってきます。そんなコミュニティという場で、これからもさまざまな出会いが生まれたらいいなと思っています。
まとめ
エンジニアコミュニティは、多くの人々が集まると同時に、人と人とのつながり・ご縁が生まれる場です。「自らがその場を楽しむ」「相手にも、自分に興味を持ってもらう」といった点に注意しながら、能動的にコミュニケーションを取っていくことで、採用に繋がるチャンスを得ることができます。
今回ご紹介してきたJ.Kさんのお話を参考に、採用担当者の皆様もぜひエンジニアコミュニティに参加してみてください!きっと、自分や自社がより面白くなるような素敵な出会いが得られるはずです!