<イベントレポート>年収800万円超えの市場価値を作る!採用担当のキャリア構築戦略

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エンジニアやデザイナーなど、専門職に特化した採用スキルや経験は市場価値が非常に高く、採用担当者のキャリア構築において非常に有効です。昨今では特に、厳しいエンジニア採用市場で成果を積み上げてきた方も多いのではないでしょうか。

そのような、身につけた能力と経験を活かして、採用担当者が年収800万円超えの市場価値を実現するための秘訣について、イベントを開催しました。

登壇者は、エンジニア採用の教科書として愛読される『採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』の著者、株式会社WHOM 取締役COOの中島 佑悟さんと、LAPRAS株式会社 共同創業者の二井 雄大です。

幅広く採用領域に関わってきた中島さん自身の経験や、採用担当者のキャリアパス傾向などをもとに、市場価値を高めるための知見を共有いただきました。

【登壇者紹介】
株式会社WHOM 取締役COO / 中島 佑悟
メディア系ベンチャー企業数社でビジネス部門の立ち上げ等を経験。2018年にエンジニア採用サービスを展開するLAPRAS株式会社に入社。セールス・マーケティングマネージャーに従事。2020年に独立し株式会社de3を設立。UTECベンチャーパートナー。上場企業の採用戦略・ブランディング支援やベンチャーキャピタルの投資先におけるHR支援など、HR・採用支援業務を広く行う。著書に「作るもの・作る人・作り方から学ぶ 採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本」、「データ分析営業 仮説×データで売上を効率的に上げよ」

LAPRAS株式会社共同創業者 / 二井 雄大
京都大学経済学部卒。楽天に入社し、ECコンサルティング職に従事。IoTベンチャーのQrioにて事業開発部マネージャーを経験後、株式会社scouty(現LAPRAS株式会社)を共同創業。創業以降、営業/CS/マーケティング/バックオフィスなど開発業務以外全ての領域を経験。これまでに200社超のカスタマーサクセスを担当。

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※記事中に「LAPRAS SCOUT」の文言がある場合は「LAPRAS」と読み替えてください。

採用担当のキャリアパスは?

中島さん:誤解を恐れずに言うと、採用担当者は“何も考えずに昇進やキャリアアップができるポジションではない”という前提を、僕としては持っています。

一方で人手不足の市況感はずっと続いているので、業務の難易度や業務量は年々高まっているように思います。その結果、会社側はキャリアアップや昇進を進めるポジションではないと認識しているのに対して、採用担当者側は「頑張っているんだから報酬を上げてほしい、評価してポジションを上げてほしい」と思っている状態で、両者の間にギャップが生じているのではないかと考えたのが、今回のイベント開催の背景であり前提です。

下記スライドのように、採用業務にはさまざまな特性があると思うので、それぞれ深掘りして紐解きながらお話ししていきます。 

採用業務は、人事部門の一役割でしかないという捉え方をされることが多く、採用担当だけでのキャリアは積みづらいです。また、売り上げに直結する直接部門ではなく、裏で支える間接部門なので、会社が投資しづらい部分もあると思っています。

あとは営業のように、頑張れば頑張るほどトップラインが上がる、売り上げが上がるものではなくて、「今月は3人取れたらストップ」というトップラインが決まっている業務特性なので、頑張れば頑張るほど給与上がるというものでもありません。

加えて、たくさん人数を抱える部門でもないので、マネージャーや部門責任といったキャリアパスも描きにくい特性もありますし、企業成長と採用数の関係も一定数以上になるとあまり関係がなくなってきます。

そして、採用を担当するポジションが、会社の利益にどれくらい寄与できるかの上限が、そのまま採用担当者の業務の価値に繋がります。このようにさまざまな特性をどう抜けていくかが、キャリアをつくっていくうえで必要な考え方だと思っています。

二井:結構がんじがらめになりやすいですよね。とはいえ、この5年で採用担当者のポジションが上がったとも感じています。参加者の方への事前アンケートでは、年収600万以上の方が40%を超えていました。5年前は600万〜700万ぐらいのラインに超えにくいバーがあったので、業界水準としては上がってきた印象です。

採用業務の難易度が認知されるようになってきた流れはありつつも、やっぱり先ほど解説された構造上の特性に関する課題感からは、なかなか抜け切れない点が、今回のイベントの大きなテーマだと思っています。

中島さん:採用担当者のキャリア相談を受けていると、構造的な課題を理解しないまま現場への不満を抱えている方も結構いらっしゃいます。そう思ってしまう気持ちはすごくわかるのですが、解決するには構造的な問題をいかにハックするかを考えていただきたいですね。

採用担当の大まかなキャリアパス

中島さん:僕が考える、採用担当者の大まかなキャリアパスを下記のスライドにまとめました。そもそも採用担当者としてのキャリアをつくりたいのか、採用担当者の経験を活かして、それ以外でキャリアをつくりたいのかで、まずふたつに分かれます。

左側の採用担当としてキャリアをつくるほうを選んだ場合、次は会社員としてやっていくのか、フリーランスや事業化していくのかの分岐が出てきます。会社員であれば副業のあり・なし、外資や金融へ行って環境を変える、エンジニア採用など特化型専門人材として市場を立ち上げていく、マネージャーなど採用部門の責任者として役職付与で年収をあげる。

このようなパターンが、採用担当としてキャリアをつくる場合の王道のキャリアパスだと思っています。

右側の採用担当以外でキャリアをつくるには、採用サービスを運営する企業で働く、採用以外の制度設計などの人事職に就く。もしくはベンチャーキャピタルのHR部門が考えられます。採用サービスはエージェントやLAPRASのようなスカウトサービス、ATSなどで、そこでどのような業務を担当するのかという話になってくると思います。

参加者のみなさんも自分の頭の中で整理はされていると思うのですが、こうやって図に描いてみて、どこを目指していくのかを明確にするのは非常に大事な作業だと思っています。

二井:ちなみに、少し前までの採用担当のキャリアパスとしては、エージェントからの流れてくる方が大多数だったと思うのですが、最近は採用サービスから他の採用担当に流れていく方が増えている気がしています。採用担当のバックグラウンドも多様化しているのでしょうか?

中島さん:そうですね。かなり多様化していて、エンジニアからエンジニア採用担当になる方も徐々に増えていますし、自社での人事経験を挟まずに、マーケや営業担当から採用担当のフリーランスになる方も最近は多いです。

今の採用は、競争環境の中でいかに勝つかが大事なので、採用業務の経験がなくてもマーケティング思考や営業思考を持っている方は、すぐに活躍されているイメージがあります。

どのような能力開発が必要か

中島さん:ここからは先ほどのスライドの左側、「採用担当としてキャリアをつくる」に絞ってお話ししていきます。

採用担当としてキャリアをつくるために、どのような能力開発が必要か。もちろん色々な能力や経験が必要なのですが、特に重視してほしいのが、下記スライドに記載したものです。

まず左上から。副業やフリーランスで活躍したいという方に必要なのが、業務委託力です。業務委託で活躍している方がたくさんいる中で、自分の強みや特徴を理解して差別化して、ポジションを取らなくてはなりません。

自分で案件を取って継続させるのはもちろん、自分で仕事をつくり出す能力が求められるケースもあります。クライアントとのコミュニケーションをとりながら自分のマネジメントをおこない、初期の期待値をいかにうまく乗り越えるかといった、業務委託ならではの動き方がきちんとできる方は、副業やフリーランスでの報酬アップが見込めると思います。

二井:たしかに、業務委託で長く中に入っている方は、スキル面はもちろんコミュニケーション設計などもうまくできている方が多い印象です。

中島さん:これはちょっと余談なんですが、当社はフリーランスや副業の方をアサインする事業をしていて、その際に企業側から「副業ではなくフリーランスの方がいい」と言われるケースがよくあります。

理由を紐解くと、副業の方はコミットメントが薄いとか、お客様態度で仕事をされるというものが多いです。せっかく能力があっても、業務委託力がないと継続は難しいので、副業として関わる場合は意識していただきたいと思います。

フリーランスではなく会社員の採用担当としての年収アップを狙う場合、右側の能力を身につけて上のレイヤーを狙っていく道もありますが、このスライドの中で一番手っ取り早く年収800万を超えられるのは、左下の環境チェンジです。

ここに行くためには、やはり独自のスキルの組み合わせやトラックレコード、語学力などのわかりやすい経験と能力が必要になります。環境チェンジを前提にするのであれば、自分にはどんな能力があるか、どんな強みを出せるかを考えながらキャリアをつくっていきましょう。

元のキャリアによるキャリア構築戦略の違いは?

中島さん:元のキャリアで培った経験・能力をいかに活かすかが、採用担当者のキャリアパスにおいてものすごく重要だと思っています。採用は総合格闘技だとよく言われますし、本当にいろいろな能力を掛け合わせなければ採用を成功させるのは難しいんですよね。

過去に培った能力と経験を余すことなく生かすために、どういう業務、どういう環境だったら価値を出せるかを自己分析していただきたいです。

中島さん:最近の傾向としては広報PRでの経験を持っている方、データに強く数値管理が好きな方は、大手への環境チェンジをしやすいと個人的に思います。

二井:先ほども少しお話ししましたが、近年は採用担当者のバックグラウンドの多様化が進んでいますよね。私が採用業界に入った2015〜2018年頃は、スーパーバックオフィスの方が採用業務を兼務したり、エージェントから転職してきた方が担当していたり、間接部門系の方が大多数を占めていました。

今はマーケティングや広報、エンジニア出身の方と本当に幅広くて、施策のトレンドにも変化が出てきている印象です。

今後のキャリアは?

中島さん:今回のテーマである年収800万を超える市場価値をつくるには、副業やフリーランスを経験するのが、年収アップの方法としては一番やりやすいとは思います。

それ以外の話でいくと、やはり環境を変える。よりお金を出してくれる会社に行くことが、一番有効だと思いますが、よりお金を出してくれる会社かどうかの見極めが今後は大事になってくると考えています。

みなさんご存知のとおり、採用の市況感としては、どんどん難しくなっているなかで、企業側としても採用部門に投資するお金は年々増えています。エージェントフィー、採用サービスへの投資、採用担当者の人件費、RPOなど、そういった採用部分にちゃんと投資する業界や会社を見極めて、舵を切ることが重要です。

逆に、自社が投資できていない企業だと判断したら、そこでの採用担当者としてのキャリアアップはできるだけ早期に見切りをつけて、進路を変えることが、キャリアパスの入口になると思います。

二井:私も8年ほどHR領域に関わってきて、たくさんの採用担当の方の転職先やキャリアチェンジを見てきて、この部分に関しては思うところがあります。

きちんと採用業務をおこなっているのに会社が投資をしない場合、採用担当者は結構割りを食ってしまう構造になっています。まず現職にコミットして実績をつくることは大前提として、一定のキャリアまではいっても構造が変わらない場合に転職を選択される方が増えていますね。

転職による環境チェンジやキャリアチェンジで年収を上げていくことが採用担当のキャリアパスとして主流になってきていますが、800万を超えるには普通のことをやっていても難しいですよね。

中島さん:もちろん大手に行ったからといって、誰でもすぐに年収800万を超えるわけではないと思います。業界や会社の規模を変える×マネージャーを目指す×専門職に特化するなどの掛け算がいくつできるかを重視していただきたいです

Q&A

営業から人事に転職して2年。採用業務以外に人事評価、研修などを幅広く担当しています。レベルアップのためにすべきことを教えてください。

中島さん:人事のキャリアアップは、基本的に組織の人数に比例すると考えているので、より大きな組織へ転職するのはひとつの手段かと思います。

二井:幅広く携わっている状態をチャンスと捉えて、それぞれの領域で実績をつくり、レイヤーを上げる流れが一番綺麗な形かなと思います。

エンジニアやデザイナーなどの採用難易度が高い専門職の採用業務と、総合職など幅広い採用業務の経験では、どちらが採用担当者としての市場価値が上がりますか?

中島さん:市場価値でいうと、専門職採用に特化してトラックレコードをつくるほうがいいと思います。専門職採用において強いトラックレコードをつくって、大手企業に専門職採用のスペシャリストとして転職できると、すごく綺麗な採用担当者のキャリアパスになりますね。

例えばエンジニア採用としてスタートアップに入って、30人の採用を1年で実現したというトラックレコードを持って、メガベンチャーや大手のエンジニア採用部門のマネージャーとして入ると、市場価値が高まり、報酬アップも望めるのではないでしょうか。

二井:私も専門職採用の方が実績がつくりやすく、自分の色、強みをつくる観点からも非常に大事だと思っています。中途の採用ではポジションマッチになってくるので、自分のトラックレコードを持っている方、できることを具体的に言える方は、入社時の年収は上がりやすい傾向にありますね。

1000人程度のIT企業に勤めており、5〜6人程度のチームマネージメント経験がありますが、採用業務以外の経験がありません。今後のキャリアパスとしては、どのような戦略がいいでしょうか?

中島さん:社会人経験にもよりますが、20代前半〜27歳くらいの方であれば、業務の幅を広げたほうがいいですね。他の人事業務も担当して経験を積みたいと会社に打診してみたり、もっと規模の小さいスタートアップ企業に飛び込んで人事業務を一手に引き受けてみたり、できることの幅を広げることが将来的な投資として重要になると思います。

年齢が35歳前後で、これまでのご経験をベースにキャリアを構築したいのであれば、チームマネジメントの経験が市場価値としては一番評価されるポイントです。ここをとにかく突き詰めて言語化、体系化して、それをベースにより大きな会社、成長中の会社に行くといった戦略がいいのではないでしょうか。

二井:僕も基本的に同じ意見ですが、現状で5〜6人のチームマネジメントができていて、経営レンジもある程度伸びる見込みがあるのであれば、今の会社でキャリアを積んでいくことも良い選択です。このまま現職を続けた場合、数年後にちゃんと給与レンジは上がるのか、レイヤーが上がるのかをしっかり想像して、そこから戦略を考えてもいいと思います。

エンジニア採用を始めて2年弱です。転職で武器にするには、どれくらいの経験年数が必要でしょうか?

中島さん:経験年数としては、2年もあれば十分ではないでしょうか。先ほどの話にも繋がるのですが、採用担当者としての経験を語る上では、経験年数よりも採用できた人数がトラックレコードになります。経験年数が5年で、年間2名の採用実績がある方よりも、経験年数は2年でも、年間20名の採用実績がある方のほうが市場価値は高いです。

転職に有利な武器をつくるには、採用成功人数をとにかく意識して実績を積むのはアリだと思います。

二井:私も、2年も経験があれば、採用担当として実績を積めていると思います。あえて、中島さんと違う意見を出させていただくと、採用人数で実績を判断する会社もあれば、専門性を活かして難しいポジションを採用したことを重視する会社もあります。

現職での採用業務において、どういう実績が市場価値に繋がるかを考えて、キャリア構築していけるといいと思います。

新卒から採用担当で3年目。将来的にはCHRO(最高人事責任者)のポジションに就きたいと考えています。このまま人事領域で経験を積むか、事業サイドにジョブチェンジするか、どちらがいいでしょうか。

中島さん:CHROになった場合、管轄する範囲には採用以外も含まれるため、主担当じゃなくてもいいので人事領域での幅広い経験が最低限必要です。この段階で事業サイドに行くよりも、まずは人事領域でもっと実績を積むことが大事だと思います。

CHROは、人や組織の目線で経営ロールを見ている立場なので、事業のことが理解できるというよりは、目線を経営レイヤーに持っていけるかが重要です。そういう意味では事業サイドにいくのもひとつの手段ですが、規模の小さい会社でもいいので、より経営に近いレイヤーを経験できるところへいくのも有効だと思います。

事業サイドにいっても、営業のメンバーのひとりとして関わるような形であれば、事業を完璧に理解できるとは言い難いですし、CHROのキャリアパスにはあまり繋がらないかと思います。

二井:どういった規模の会社のCHROを目指すかによって、必要な経験や能力は大きく異なると思います。どの規模感であっても人事領域での幅広い経験は必須ですが、例えば100〜200名くらいの規模のCHROを目指すのであれば、中島さんがおっしゃったように経営レイヤーに近い場所での経験が必要です。それこそ僕や中島さんのようなキャリアは、打診されやすい規模ですね。

一方で大企業のCHROを目指すというところだと、我々のキャリアでは到達しがたいルートだと思います。

まとめ

採用担当者の年収水準は上がりつつありますが、年収800万円超えの市場価値を実現するには、過去の経験を掛け合わせたキャリア構築、先を見据えた能力開発が必要です。

採用担当者として次のステップに進むために、当イベントで共有した情報をぜひご活用ください。

なお、登壇者の中島さんがご自身で書かれたイベントレポートもあるので、ぜひそちらもチェックしてください。

(ライター:成澤綾子)


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