<イベントレポート>ITエンジニア採用の教科書の著者が要点解説「初めてのエンジニア採用担当のオンボーディング講座」-技術用語、市況感、重要業務を解説-

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初めてITエンジニアの採用を任された方に向けて、厳しい採用競争に打ち勝つための知見を共有する「初めてのエンジニア採用担当のオンボーディング講座」を開催しました。

登壇者は「エンジニア採用の教科書」として愛読されている『採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』の著者であり、株式会社WHOMで取締役COOを務める中島 佑さんです。

多くの採用支援に関わってきた経験をもとに、エンジニア採用において押さえておくべき知識、実践的な戦略や重要業務について解説していただきました。

<登壇者紹介>
株式会社WHOM 取締役COO 中島 佑
メディア系ベンチャー企業数社でビジネス部門の立ち上げ等を経験。2018年にエンジニア採用サービスを展開するLAPRAS株式会社に入社。セールス・マーケティングマネージャーに従事。2020年に独立し株式会社de3を設立。UTECベンチャーパートナー。上場企業の採用戦略・ブランディング支援やベンチャーキャピタルの投資先におけるHR支援など、HR・採用支援業務を広く行う。著書に「作るもの・作る人・作り方から学ぶ 採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本」、「データ分析営業 仮説×データで売上を効率的に上げよ」

LAPRAS株式会社 採用広報・広報PR責任者 大西 栄樹
大学卒業後、オムロン株式会社入社。BtoBの法人営業を経験後、広報・PRやマーケティングなど国内外のブランドコミュニケーション業務に従事。 2021年8月よりLAPRASにジョインし、PR・広報を中心に、noteやイベント運営など採用広報も担当。大企業、ベンチャーなど様々な規模の企業での採用広報の経験から採用広報のコンサルティングも実施。  

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なぜエンジニア採用は難しいのか?

エンジニア採用が難しい理由は2つの側面で構成されていて、それぞれの分解ができていないと、エンジニア採用はうまくいかないと考えています。

ひとつ目の側面は、「専門性が高い職種なので職種理解が難しい」です。これは肌で感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。もうひとつの側面は、「採用倍率が高く、競争に勝つことが難しい」です。現在の倍率は11倍程度と言われており、そこを勝ち抜いて内定承諾をいただくのは当然大変で難しいです。

それぞれの側面を解説していきます。

例えば金融系や医療系の職種を採用する場合と同じように、専門用語や働く環境、どんな仕事をしているのかなど、専門性の高いエンジニア職について正確に理解することは難しいでしょう。

倍率が高く競争に勝つことが難しい側面については、最近ではエンプラセールスやCxO職の採用でも同じことが言えます。エンジニア職は、この2つが重なる部分に該当するため、採用難易度が高いのです。

職業を理解できる方をアサインすればいいという単純な話ではないので、駆け出しエンジニアを採用担当に迎え入れるだけでは、もうひとつの側面をクリアするための戦略の立案や実行ができず、採用は成功しません。

同様に、採用競争を勝ち抜いてきた経験豊富なヘッドハンターや、凄腕の採用担当者を採用しても、エンジニアリングの知識がなければ、当然採用は成功しません。どちらかではなく、ふたつの側面を同時にクリアしていく必要があります。

職種理解を深めるには、とにもかくにもエンジニアリング知識が必要です。高い倍率を勝ち抜くためには、いわゆる採用マーケティングや採用競争の戦い方を知って、実践していく必要があります。

世間一般的に、エンジニア職が未経験の方をエンジニア採用にアサインするケースは珍しくありませんが、そうなると当然2つの側面がカバーできません。エンジニア採用を本気で成功させていくためには、採用担当者自身が学び、成長して、レベルを上げていく必要があると思っています。

プロフィールや職務経歴だけでは、エンジニアであっても候補者の情報を把握するのは簡単ではありません。LAPRAS SCOUT なら GitHub, Zenn, Connpass など様々なサービスの利用状況から候補者の技術的な興味や人柄を確認できるので、より最適なアプローチが可能です。
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最低限押さえるべきエンジニアリング知識

採用担当者として成長するために、最低限押さえるべきエンジニアリング知識を解説します。かなり大枠の部分の説明になりますが、ここで紹介する用語を押さえておかないと、採用競争において勝負にすらならないと考えてください。

まず学ぶべきはプログラミングではなく、求人票やレジュメに登場する用語です。

さまざまな用語が登場するので「①作るもの/②作るひと/③作り方」の、3つのカテゴリーに分けて整理していきましょう。

①作るものについて

作るものについて一番大きなところから押さえていくと、まずは普段みなさんがインターネットを介して使っているWebアプリケーション。オンラインイベントでスライドを動かしているのも、Webアプリケーションです。

そして、スマートフォンやパソコンなどのデバイス本体にダウンロードして使う、モバイルアプリケーションとデスクトップアプリケーションの3つに分類されます。

ほとんどの企業では、Webアプリケーションの開発するエンジニアを募集するケースが多いと思うので、こちらに絞って解説します。

全体の構造は下記スライドのような形になっていて、クライアントサイドとサーバーサイドに大きく分かれています。ここに記載されている用語を、しっかり理解して押さえてください。

クライアントサイドで、スライドを映している画面がブラウザで、Webページを表示できるように支えているのが、OSとデバイスです。

そして、このスライドを映すために、サーバーサイドのWebアプリケーションサーバーがデータを送ってくれています。

もう少し具体的に言うと、まずクライアントサイドから「スライドをブラウザに映したいからデータをください」とサーバーサイドにリクエストを飛ばします。それに対して、サーバーサイドは「本当に中島優吾からのリクエストか」を確認するためにパスワードなどを使ってログインを求めます。

ログイン情報をデータベースサーバーに渡して、登録情報と一致すればスライドのデータをレスポンスして、クライアントサイドのブラウザでデータを解読して表示する、ということがおこなわれます。

とてもざっくりした解説にはなりますが、こういったマップを頭の中で描きながら、それぞれのより細かい用語を覚えていただきたいです。

②作るひとについて

受託会社と事業会社で大きく分けると、作るひとの職種は下記スライドの通りです。技術面をマネジメントするのか、チーム・人をマネジメントするのかで、それぞれ役割が分かれています。

事業会社のエンジニアをもう少し細分化すると、さきほど全体の構造として示した図に沿って職種が割り振られるのが一般的です。

フロントエンドを担当するならフロントエンドエンジニア、サーバーサイドならサーバーサイドエンジニアと、呼称はそのままなので、構造図とセットで覚えてポジションを理解しましょう。

③作り方について

まずは全体の流れを俯瞰して理解しましょう。ものをつくる際の工程は上流工程と下流工程に分かれていて、上流工程でおこなわれる要件定義、設計ができる方の採用は比較的難しいとされています。上流工程を担える方のほうが、一般的には役職が上がりやすく、マネジメントレイヤーとして採用されやすいです。

下流工程では実際に開発して、テスト、デプロイ、公開と進めて、その後は問題が起きないように保守運用をおこないます。エンジニア職のボリュームゾーンは、開発設計だと思われます。

余談ですが、最近はテスト業務の重要性が増してきて、重視する企業さんが増えているので、いろいろと発展的な用語や発展的なポジションも出てきています。

作り方は大きく分けて、ウォーターフォールとアジャイルの2つです。ウォーターフォールは一番最初に緻密な設計図を作成し、設計図に沿って開発まで一気に進めます。アジャイルは、何をつくるかを決めたらデプロイまでを何度も繰り返して、改善しながら開発を進める手法です。

ウォーターフォールとアジャイルは、どちらが良い・悪いというものではありません。スタートアップやベンチャーではアジャイルやスクラムで開発している企業が多いですが、昨今「それが必ずしもベストプラクティスではない」という風潮もあります。

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採用競争の戦い方/採用マーケティングの知識

求人倍率11倍のエンジニア採用競争を勝ち抜くためには、社内事情ではなく、採用市場や採用競合の事情を優先する方向に、大きくマインドチェンジしなければなりません。これはエンジニア採用担当者には絶対にやってほしいことで、これができてないと採用は難しいと思っています。

内にベクトルが向いていると、報酬面で競合に負けていても「うちはみんな500万で頑張ってくれているから、800万の人を採用したらバランスが崩れる」であるとか、勉強会やテックブログが有効だとわかっていても、忙しさを理由に動かないといった状態に陥ります。

社内事情はもちろん理解して汲み取るべきですが、「今の状態でできることだけをやる」という考え方では競争に勝てないので、内だけでなく、外を見て意思決定していきましょう。

ここで言う「外」を要素分解すると、採用市場や採用競合、求職者、採用サービスなどが挙げられます。

採用サービスも、最近の求職者が求めていることを汲み取るなど「外」の動きに伴って変化していきます。

エージェントなどから他社の情報を受け取ることもあると思いますが、受け取るだけでは絶対に不足しているので、求職者にグループインタビューをしたり、求人媒体を漁って競合A・B・Cで比較テーブル作ったりと、自分たちから動いていきましょう。

外の情報や変化を、受動的・偶発的ではなく、積極的・戦略的に調査・分析し、採用業務に反映することが、エンジニア採用のベースにおいて非常に重要だと考えています。積極的・戦略的に情報を得るには、まず「自社が何をわかっていないのか」を整理して調査しましょう。

最近は市場調査の参考サイトも数多くあり、OpenSalaryというサイトでは、さまざまな会社に勤めるソフトウェアエンジニアの年収を比較できます。

こういったサイトを参考に、ほしいポジションの報酬相場を把握したり、年収公開型の求人掲載媒体で最低年収を調査したり、データを集めて分析・活用していきましょう。

マクロな目線でとらえるエンジニア採用業務の変化とは

マクロな目線で見る採用業務の変化

世の中の採用活動の動きとして、最近はプロセスの注力点を増やしている企業が多いです。

基本的な採用プロセスは、認知を獲得して応募を獲得し、選考して内定打診を頑張るという流れです。しかしエンジニア採用では、いかに潜在層の認知を獲得していくか、認知を獲得して終わりではなく、ファン化やナーチャリングをどう促進するか、タレントプールをどう活用していくかなど、より前半のプロセスに目を向けてお金や労力を投資していきましょう。

認知獲得から選考までの間で離脱が増えていくので、比較コンテンツを出したり、カジュアル面談に力を入れたり、特設サイトを作ったりといった努力が求められます。

選考に乗ってからも、選考体験の改善として期間の短縮や面談回数の削減などの努力をしてる企業が増えています。図内で注力点として示したところにどんどん目を向けて、他社の取り組みを知り、自社が取り組むべきことを考え、実行していただきたいです。

マクロな観点で競争倍率によって変わる採用業務

採用業務の変化は、社内の縦軸と横軸にも起こっています。

例えば、以前は求人票とかスカウトの文面を工夫したり、エンジニア採用に特化した媒体を使ったりと、施策・手法で採用を実現できましたが、そういった努力は当たり前になりました。競争倍率が上がった今、より前の段階に戻って、社内のプロセスにも注力する必要があります。

注力すべき社内プロセスとしては、採用サービスやスカウト文で伝える情報の設計、要件の明確化、業務内容や魅力の具体化、人的リソースや予算の拡充が挙げられます。

さらに立ち戻れば、自社の魅力の洗い出しも必要です。求人票やスカウト文の書き方を工夫するよりも、書ける材料を揃えていくためのプロセスになります。例えば週休3日などの特徴的な組織制度、有名なエンジニアが経営陣にいるといった他者と差別化できる魅力があれば、しっかりアピールしていきましょう。

もっと戻ると、社長の意識改革や、オペレーションの見直しなど、いわゆる業務マネジメントの根本的なところまで改善するために注力する企業が、世の中の動きとして増えています。外と比較したときに、どこが相対的に弱いのかを見極めて改善していくことが、エンジニア採用に求められています。

マクロな目線で変えていくべき、自社の個々の採用業務

変えていくべき採用業務として、例えば調査・分析業務の場合、競合を調査するだけでなく、マッピングして違いを整理して見極める活用法があります。

採用体制を強化するための変化としては、ハイヤリングマネージャー制度を導入して、エンジニアに協力してもらう体制づくりが挙げられます。

難易度が高めなところでは、採用に使えるコスト、報酬テーブルや組織の特徴の改善です。それらは経営計画や事業計画の段階で決まるので、改善するには、その段階から採用担当者が関わっていくことが必要になるケースもあります。

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エンジニア採用担当者のレベル分け

エンジニア採用担当者を、技術用語や職種への理解度によってレベル分けすると下記スライドのように分類できます。

熾烈な採用競争を勝ち抜くためには、採用担当者のみなさんにはレベル3を目指していただきたいです。

レベル0はキーワードの一致でしか判断できない状態で、レベル1が自社の用語は理解できている状態です。レベル2は自社だけでなく、競合が使っている用語や技術セットを理解して、競合と自社の違いを理解できる段階です。レベル2になるまでに、大体半年ほどかかると思います。

レベル3になるとエンジニアと対等に話してパイプをつくったり、コミュニティに参加したりできて、用語や技術への理解もさらに深まって、エンジニアのように動けるようになるイメージです。

仮に、会社から「年収500万で優秀なテックリードを採用してください」と言われた場合の、想定されるレベル別の対応を解説します。

レベル0は「わかりました、やります」と、言われたことをただひたすら実行するケースが多いです。レベル1になると、一般的な報酬を提示して「エージェントからもその条件では難しいと言われました。見直しませんか」と進言できるようになります。

レベル2は、エージェントからの情報を受動的にキャッチするだけでなく、自分で比較テーブルやマッピングを作成して調査・分析し、「そのポジションを採用したいなら、これくらいの報酬テーブル設計が必要です」と、客観的な情報として説明できます。

レベル3になると、もっと上流工程の事業戦略や人員計画から参画し、採用担当の観点と市場の動向を掛け合わせ、客観的なデータを示した上で意見を出せるようになります。

難しいと感じた方もいらっしゃると思いますが、今回のオンボーディング講座の目的は、どういった知識や努力が必要かを、まず理解することです。それを実現していくにあたっては時間も必要ですし、さまざまな手法があります。

しかし、マネジメントができる優秀な人気職の求人倍率は11倍どころではなく、50〜100倍でもおかしくない非常に厳しい状況です。その中で競争を勝ち抜くには自分に鞭を打つような気持ちで、今回共有した知見を基準として持っていただきたいと思っています。

調査・分析のための情報を収集する際は、LAPRASさんのようにデータが蓄積されている採用媒体がおすすめです。採用担当者だけでのレベル上げが難しい場合は、RPOやコンサル的な立ち位置の外部メンバーを入れるなどして、まずはレベル2を目指していきましょう。

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Q&A

労務以外の人事領域をひとりでおこなっている状態で、スキルアップのために勉強するべきことは何ですか?

中島さん:スキルアップの目的が自身の市場価値を高めるためと仮定した場合、まずは採用を極めることが、どの職種においても必要だと思います。採用業務は人事のキャリアパスのファーストステップ的な位置なので、まずはそこを極められたら、その先の人材開発や組織開発といった人事業務へのルートも自ずと開けていくと考えています。

採用業務を委託する場合、エンジニア組織設計のプロフェッショナルはいますか?

中島さん:結構います。特にメガベンチャー出身の方は、プレイヤーとしてのリクルーティング能力だけではなく、チームの組成から、チーム全体のパフォーマンスの上げ方、チームの一員としてエンジニアに動いてもらうための巻き込み方などの、仕組みづくりから携わってきた方が多いです。

当社にも該当するメンバーがおりますので、ぜひご検討ください。

レジュメを読み解く際に、どこを重視して読めばいいですか?

中島さん:経験した業務内容と、そこで出した実績です。逆に、使ってきた技術スタックはあまり重視しなくてもいいと思っています。どの会社でどういう業務をして、どういう成果を残したか。それが自社の求人の求めてる課題感や要件と合っているかを見極めることが大事なので、技術や用語とのマッチングだけにこだわり過ぎないようにしてください。

もう少し細かく言うなら、何人ぐらいの組織やチームで、どういう開発をしてきたかも検討材料にできるといいですね。

まとめ

厳しい採用競争を勝ち抜き、優秀なエンジニアを獲得するためには、採用担当者が最低限のエンジニアリング知識を身につけ、市場の変化や他社の情報を見逃さずにレベルアップしていく必要があります。

採用担当者だけでは業務改善や戦略の立案などが難しい場合は、プロの人事・採用経験者をつなぐ採用代行プラットフォームWHOM、エンジニア採用のプロが採用を代行するLAPRAS SCOUT PROの導入をご検討ください。

今回共有した情報が、貴社のエンジニア採用のレベルアップに貢献できれば幸いです。

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WHOMは、500名のプロリクルーターから選べるRPOサービスです。採用は「誰が」やるかによって結果が大きく変わります。WHOMでは採用する職種、業界、企業フェーズなどに合わせて最適なリクルーターを紹介し、事前面談を経て業務にアサインいたします。

https://whom-hr.co.jp/

(ライター:成澤綾子)