9個の調査データから見た、新型コロナが採用に与えた影響

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日本経済に大きな打撃を与え、企業の採用活動にも大きく影響している新型コロナウイルス。政府・自治体はもちろん、企業からは日々多くの新型コロナウイルス関連の調査データが発信されています。

今回の記事では、企業が発信した採用に関する調査データを基に、新型コロナウイルスの感染拡大が企業の人材採用に与えた影響について解説します。

経済全体への影響も業種によって様々

人材採用への影響について解説する前に、その前提となっている経済的な影響について見ていきましょう。

一般的に、新型コロナウイルスによって業績に悪影響を受ける業種では、支出を抑えるために採用数の縮小や人員削減を行う傾向にあります。
4月1日に帝国データバンクが発表した調査によると、8割の企業が業績にマイナスの影響があると見込んでいます。

業種別に見ると、「家具類小売」で100%がマイナス影響の見込みがあると回答。「飲食店」(98.2%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(97.0%)が続きます。
一方で、スーパーマーケットなどの「各種商品小売」は20.4%が「プラスの影響がある」と回答しており、業種ごとの差異が浮き彫りになっています。

IT市場に目を向けてみると、IDC Japanが5月7日に新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した国内ICT市場予測をアップデートして公開しています。
2020年のIT市場は成長率の鈍化が予想されています。
ハードウェアは、サプライチェーンの混乱、リモートワークの拡大による企業の働き方の変化の影響を受けて減少。ソフトウェアも減少するものの、リモートワーク環境へのセキュリティ対策等でセキュリティ分野への投資は成長を維持する見込みです。

また、危機管理や働き方改革、社会保障や行政のデジタル化の需要から、DXへの投資が活性化されるという予想もあります。

まとめると、IT業界全体はマイナス影響を受けています。一方でセキュリティや、DXに関連する特定のITサービスについてはプラスの影響を受けているものもあるのが現状です。

エンジニア採用は引き続き過熱状態

dodaが5月18日に発表した転職求人倍率レポートによると、半数以上の業種で求人倍率が下がっている中、エンジニアの求人倍率は上昇しており10.71倍という高水準でした。

企業が採用枠を縮小する中でも、プロダクト開発に関わるエンジニアの採用は継続しているケースが多く見られます。
新型コロナウイルスの影響下でも、エンジニア採用の過熱はとどまらないようです。

業種や職種毎のエンジニア転職市場のレポートは現時点では、ファクトとして活用できるものはありません。一方で、定性情報としては「メンバークラスの採用は止め、マネージャークラスに予算と工数を集中させる」「モバイルや機械学習など専門性の高いエンジニアの採用に集中する」など、選択と集中の声も多く聞かれます。

アメリカではエンジニアの解雇も

前述の求人倍率を参照すると、エンジニアの求人需要は今後も継続的に向上していくという見方ができます。

一方で、5月5日に発表されたLayoffs.fyi上では新型コロナウイルスの影響でアメリカのスタートアップ内で解雇されている職種の調査データが公開されました。1位はセールスで29.9%、2位はカスタマーサクセスで21.7%、そして3位にエンジニアの13.7%が続きます。

アメリカではエンジニアの給料は高騰しています。人件費削減を行う際に高給な社員を対象にすることもあるため、エンジニアが真っ先に解雇の対象になったという見方もあります。

直近の転職市場についても注視が必要ですが、エンジニアの給料が高騰していくと、日本でも同様の事象、また企業経営を圧迫するコストとなり弊害を引き起こすかも知れません。

その他職種の中途採用は求人数が減少傾向

再びdodaの転職求人倍率レポートを見てみると、求人数が低下していることがわかります。現在は、緊急事態宣言の中で転職活動が鈍化している可能性があり、緊急事態宣言が収まった以降に求職者の数が増え、求人倍率が低下することも考えられます。

ビズリーチが4月24日に発表した中途採用活動の実態調査アンケートからは、30.0%の企業で求職者からの応募数が「以前より減少した」という回答がありました。一方で、「以前と変わらない」が58.5%、「以前より増加」が11.5%と、応募者数全体はやや下がっている傾向がある、という程度の変化にとどまっています。

また、応募数の変化を創業年ごとに分類すると、創業70年以上の企業には「以前より増加」と回答した企業は1社もなく、創業年数が浅い企業ほど「以前より増加」の割合が多い傾向があります。

中途採用活動の実態調査アンケート(株式会社ビズリーチ)より

業種ごとの詳細なレポートはありませんが、上記の結果を考察すると、創業年数が浅い企業ほどリモートワークなど柔軟な働き方ができる企業が多く、働き方の観点で求職者に求められているのかも知れません。

新卒採用は7〜8割が予定どおり

マイナビが4月21日に発表した新型コロナウイルスに関する企業の新卒採用への影響調査では、採用予定数を変更するか調査したところ82.6%の企業が「当初の予定どおり」と回答しました。

また、対面による説明会を5月下旬を目処に実施する企業が多い見込みでしたが、緊急事態宣言が延長されたこともあり、この計画は順延するところが多いことが予想されます。

株式会社ディスコが4月6日に発表した新卒採用に関する緊急企業調査でも、当初の計画から採用予定数が「計画通り」という回答が7割を超えています。
調査期間のずれや対象の差によってマイナビの調査と多少のずれはありますが7〜8割の企業は新卒採用数は計画通りに考えていることがわかりました。

オンライン面接の実施は企業選びのポイントに

ビズリーチが4月24日に発表した調査では、オンライン面談・面接を行っている企業は62.9%にのぼりました。

中途採用活動の実態調査アンケート(株式会社ビズリーチ)より


また、Green(株式会社アトラエ)が4月15日に発表した調査によると緊急事態宣言が発動した4月7日以降は、2020年1月水準の約3倍の求職者がオンライン面談を希望するようになったといいます。

新卒採用に目を向けてみると、5月21日にマイナビが発表したマイナビ 2021年卒学生就職モニター調査 4月の活動状況では、61.0%の学生が「Web面接を受けた」と回答しています。

興味深いのは、企業を選ぶときに注目するポイントについて「在宅勤務など新型コロナウイルス感染症から社員を守る施策を行っている」が最も重要という回答が40.7%にのぼったことです。

新型コロナウイルスの感染が落ち着くまでは、対面説明会を行うこと自体が、旧態依然の業務体制を持つ企業として学生から批判的に捉えられる可能性があります。

上記のような背景や公衆衛生意識の強まり、オンライン面接会議システムの普及もあり、オンライン説明会や選考がより一般的になることが予想されます。

まとめ

企業が発表した7つの調査データを元に、エンジニア(中途)、その他中途、新卒の採用について解説しましたが、重要なポイントは下記の通りです。

 

<ポイント>
・エンジニア採用はコロナ渦でも変わらず過熱
・一方、給料の高騰は解雇の危機に繋がる恐れも

・中途採用は求人倍率が低下
・リモートワーク終了とともに求職者が更に増える可能性も

・新卒採用数は約8割がコロナ前の計画通り

・オンライン面接が普及。実際した中途・新卒求職者は約6割
・オンライン面接、説明会の実施可否が企業選びのポイントに

 

市場の状況は自社採用の成果に大きく関わってきます。紹介した調査データ、またその他の信用できるファクトをベースにして自社の採用計画、実施施策を再度見直してみるのもよいのではないでしょうか。


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