LAPRASのカスタマーサクセスとソフトウェアエンジニアが、サンプルの求人票を添削、それを元に改善ポイントを解説する記事シリーズです。
今回は、転職後にアサインされるチームや開発の流れなどの「組織体制」、そして「募集背景」の書き方についてご説明します。「どんな職場で働くのか?」「自分は何をやったら良いのか?」といった求人元へのイメージを左右する重要なポイントです。
どうやったら魅力的な求人だと思ってもらえるか、ネガティブな印象を持たれないためにはどんなことに気をつけるべきか、ポイントを解説していきます!
<インタビュイー紹介>
・Chiri Yuki(千里):Customer Sucess Manager 2021年9月にLAPRASへジョイン。入社後は一貫してCustomer Success Managerを担当。顧客のLAPRAS活用と継続利用の支援を行う。2023年からはカスタマーサクセス領域のマネージャーとなり、サークルの戦略策定やメンバーマネジメントといったマネジメント業務と、顧客へのCS業務・CSOps等のプレイング業務を兼務中。
・板谷美玲(ことね):ソフトウェアエンジニア 2022年4月にLAPRASへジョイン。プロダクト周辺の技術的な課題解決による貢献を行い、約1年後に課題解決の専門チームを立ち上げてリード。2024年4月からはCS領域での課題解決にフォーカスし、エンジニアリングやアジャイル開発のスキルを駆使してメンバーの支援や業務改善などにコミットしている。
目次
関わるチームは「部署」と「チーム」どちらの話か明確に
求人票のサンプル:Before
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●関わるチーム
▼体制
Software Enginner: 10名程度
Site Reliability Engineer: 1名
配属チーム:開発部門
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(千里)「関わるチーム」は「どんなメンバーと働くことになるのか?」を記載する場所です。エンジニアの方々の注目度も高いため、メンバーの人数、バックグラウンドなど「人となりが分かる情報」を入れるようにすると良いでしょう。
また、プロジェクトアサイン制の働き方となる場合は「サービスごとの開発の進め方」や「それぞれのチームで、何名ほどで開発しているか」などの情報も追加で記載するのがおすすめです。
注意点として「部署全体のことを言っているのか」「配属予定先となるチーム単位のことをいっているのか」が区別できるように書かないと誤解を生む原因になるので気をつけ気をつけたいです。可能な限り、配属予定先となるチーム単位の話を書けると良いと思います。
(ことね)そうですね。組織の規模感がイメージと違ったり、誤解されたりするとアンマッチが発生する原因になってしまうので、全社の話か個々のチーム規模の話か明確に記載するほうが良いでしょう。
「開発の流れ」はワードチョイスと文章内での矛盾に注意
求人票のサンプル:Before
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▼開発の流れ
当社では、アジャイル開発手法を採用し、2週間単位のスプリントで開発を進めています。各部署からの要望をプロダクトマネージャーが整理し、戦略に基づいて優先順位を決定します。エンジニアからの提案や内部改善も重視しています。
GitHubでのコードレビューを経て、自動化されたリリースプロセスを採用しています。効果測定にはBigQuery、Redash、Lookerを使用し、継続的な改善を行っています。
日々の朝会や定期的な振り返りを通じて、情報共有とチームビルディングにも注力しています。このように、効率的かつ柔軟な開発環境を整えています。
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「洗練された」ワードチョイスができている求人は好印象
(千里)「開発の流れ」での注意点は、エンジニアの方々にとって「当たり前すぎること」を書かないようにすることです。
(ことね)たとえば「日々の朝会」や「定期的な振り返り」といったアクションは、スクラムを採用していれば当然やることなので、あえて書く必要はないと思います。「そんなこともわざわざ書かなければならないほど、特筆することがない企業なのでは?」といった、ネガティブな連想につながってしまう恐れもあります。
(千里)エンジニアにとって「当たり前すぎること」が載っていると、閲覧者に「この求人はエンジニアリングの実務に精通していない人が作成したのではないか」という印象を与えてしまいます。文面ができたら、社内のエンジニアの方に求人をレビューしてもらって「エンジニアにとって当たり前のことが誇張して書かれていないか」をチェックしてもらったほうがいいでしょう。
(ことね)そうですね。同じことを伝えるにしても、エンジニアが魅力的に感じるようなワードを選ぶことが重要です。サンプル求人の場合、たとえば次のように別のワードに置き換えるとより魅力的になります。
「日々の朝会や定期的な振り返りを通じて、情報共有とチームビルディングにも注力しています」 →スクラムイベントを通じて、情報共有とチームビルディングにも注力しています。
内容的に「ちゃんと知識がある『わかっている人』が書いているな」というワードチョイスができていると、魅力的な求人だという印象を与えられます。
読んでいて「矛盾」を感じる内容が含まれていないか?
(ことね)また、求人の中で「内容が矛盾しているのでは?」と感じさせるような箇所をつくらないことも重要です。サンプル求人を元にご説明します。
「各部署からの要望をプロダクトマネージャーが整理し、戦略に基づいて優先順位を決定します。エンジニアからの提案や内部改善も重視しています」
この文章では、前段で「各部署からの要望と戦略に基づいて優先順位を決定する」と言っていますが、後段では「エンジニアからの提案や内部改善も重視」と言っています。このままだと「結局のところ、どちらが優先されるんだろう?」というふうに疑問に思われてしまう恐れがあります。以下のような表現に改めるほうが良いでしょう。
「開発の優先順位は各部署からの要望を基本としつつも、エンジニアからの提案や内部改善も重視しています。プロダクトマネージャーが整理し、戦略に基づいて優先順位を決定します。」
(千里)別の例を上げると「アジャイルを掲げている求人なのに、ウォータフォールを連想させるようなキーワードが含まれている」といったケースが過去にありました。このような場合も人によっては矛盾するような印象を与えてしまいかねないので、別の「洗練された」表現に置き換えられないかは検討するほうがいいでしょう。
募集背景には明るい未来と直近のテーマを明示
求人票のサンプル:Before
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●REASON(募集背景)
開発リソースの拡充が必要
当社の主力プロダクトであるLAPRAS SCOUTと LAPRASは、ユーザーの増加に伴いさらなる開発が必要な状況になりました。現在の開発体制では、新機能の開発や既存機能の改善に十分なリソースを割くことが難しくなっています。
また、長年の開発により、アプリケーションの規模が拡大し、全体把握や大規模な機能追加・変更が困難になっているという課題も抱えています。さらに、多様な規模の組織で使用される本プロダクトは、高度なカスタマイズ機能が必要で、特にデータベース処理がボトルネックとなっています。
これらの課題に対応するため、新たな人材を募集しています。具体的には、コード品質に強いこだわりを持ち、クラウドインフラストラクチャに精通し、高性能なバックエンド開発をリードできる人材を求めています。
入社後は、まず開発フローの理解や社内のコミュニケーションに慣れていただき、その後、機能開発タスクを担当していただくことを想定しています。将来的には、サービスの主要な機能の仕様を把握し、技術的負債の返済や効率的な開発環境の提案などにも取り組んでいただきたいと考えています。
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課題だけ書かず、短期的な目標を入れるのが吉
(千里)前提として、募集背景には「明るい未来の姿」を想像させるような、ポジティブなことを書きたいです。サンプル求人は「とにかく課題を解決してくれ!」という印象を強く感じる文面ですね。解決したい課題を掲げるのは良いのですが「いつまでに、どの程度の成果につなげたいのか」といった部分まで書かれていると良いなと思いました。
これ以外によくある例として「とにかく人がほしい」という表現も避けたほうが良いでしょう。リソースが足りないのはわかりますが、それは企業側の都合です。求職者は「どんな目的のために増員したいのか」に関心があります。たとえば、サービスの特徴などを伝えたうえで、
「現在●●の領域に課題があり、それを解決して▲▲のようにしていきたいので、その実現を加速していくためにも○○な方を探している」
といった伝え方のほうが説得力が高められます。
(ことね)私もそう思います。まず課題があって「助けてください」という伝え方だと、どうしても「なぜ私なんだろう」という疑問につながってしまいやすいです。企業側の想いを正直に書くと、このような表現になってしまうのは理解できますが・・・。
(千里)このように「課題ありき」で話が始まると「課題の困難さ」にフォーカスがいってしまい「どれだけ大変な課題なんだろう?」と、悪い想像につながってしまいやすいです。
「直近のテーマ」としてどこまでを目指すのかを明確に
(ことね)募集背景にも魅力的に伝わる「求人のストーリー」があります。次のような流れにするのがおすすめです。
【募集背景:良い求人のストーリー】
①プロジェクトの目的など「取り組んでほしいテーマ」はなにか
②将来目的が実現できたらどんな明るい未来があるか
③そのために直近3~6ヶ月くらいでどこまでの進捗を目指すか(直近のテーマ)
(千里)プロジェクトの目的と、それが達成されたあとの「明るい未来」を示すだけでは、目的達成までの道のりが長すぎて「大変そう」という印象が強まってしまう恐れがあります。「直近でどこまでを目指すか」も合わせて記載し、最終的な目標に対してどのように取り組んでいくか、その過程をイメージしやすいようにするほうがいいでしょう。
この「目標達成までの過程」は、求人票を作る企業それぞれの個性を出しやすいポイントでもあります。
たとえば、
「前職の経験が活かせそうなテーマだから挑戦してみようか」
「個人開発でやっている領域に近いテーマだから面白そうだ」
というふうに、見る人の「応募したい」という気持ちが高まるきっかけになる要素でもあるからです。「自社ならでは」の魅力が伝わるような、魅力的でやりがいを感じられる「直近のテーマ」を打ち出していきましょう。
今回使用したサンプルの改善案
*************************************** ●関わるチーム ▼体制 Software Enginner: 15名(うち業務委託3名) Site Reliability Engineer: 2名 配属チーム:LAPRASの開発チーム ●社内のエンジニアの特徴 今まで複数社でWebエンジニアの経験を持っている方が多く、実際メンバーに聞いても周りにレベルが高い人たちが多く仕事を進めやすいという声を聞きます。 また、メンバーに「なぜLAPRASで働き続けるのですか?」と質問をすると ・解決しようとしている課題が難しいが、社会的にとても価値があるのでチャレンジしていて楽しい ・エンジニアの実力を可視化し、実力がある人が活躍できる世界を作りたい ・会社として目指している方向が明確で、全員がそこに向かっていっているのが好き ・ビジネスチームとエンジニアが対等に話せて、お互い意見をいいながら良いプロダクトを作っていける環境がある というように、会社の目指している姿や周りのメンバーとの関わり方に関するような回答が多かったです。 ●社員紹介 LAPRASキャリア図鑑:https://note.com/lapras_corp/m/m1274c20d8504 LAPRASで働いているメンバー(及び過去に働いていたメンバー)へのインタビュー記事です。 ▼開発の流れ スクラムによる開発フローを採用しています。 コードレビュー、ペアプロ・モブプロなどのアジャイルプラクティスを採用し、情報をオープンにしてコミュニケーションをとりながら開発しています。 LAPRAS SCOUT及びLAPRASのプロダクトマネージャは双方ともエンジニアバックグラウンドをもっているため、実現不可能な機能やスケジュールの要求が降りてくることはなく、計画や仕様には必ず一度開発チームのフィードバックが入るようになっています。一方でそれに甘えず、自分たちで自分たちの最大限のパフォーマンスを出せるように律する必要のある環境でもあります。 ●REASON(募集背景) 日常的に技術的な負債を返済していけるチームに LAPRAS SCOUTと LAPRAS は、現在フルタイムのエンジニア10名程度の体制で開発をしていますが、ユーザーの増加に伴いさらなる開発が必要な状況になりました。 新しいメンバーに入っていただくことで開発リソースに余裕を持たせ、今まで手を付けられていなかったカイゼンや、将来の変更に耐えうる設計を模索したりなど、緊急ではないが重要な活動にチームとして取り組みます。日常的に技術的な負債を返済していけるチームを作り、規模を拡大してもスピードや品質を失わない構造を手に入れたいと考えています。 ***************************************
まとめ:見る人が読むのをやめない求人づくりを目指して
今回は「求人票の改善ポイント:中級編」として、前回の「タイトル・サービス紹介」に続き「組織体制・募集背景」について改善のポイントをご紹介してきました。
エンジニアの方々は「どんな環境で働くのか」「なぜ人材を欲しているのか」といった部分に納得感のある説明を求めています。ワードチョイスの良し悪しには、感じ方の個人差もありますが、見る人が「変なところで引っかからないこと」を目標に改善に取り組んでみましょう。
次回は求人の本丸とも言える「仕事内容・求める役割」についての改善点をご紹介していきますので、ぜひお楽しみに!