LAPRASでは、2025年7月に新機能「AIスキルハイライト」をリリースしました。ITエンジニアの中でもハイスキル層に関連する、特定の職種の経験を持つ候補者が見つけやすくなる機能です。この機能が誕生するまでにどんな経緯があったのか、LAPRASは今後どんなサービスを目指していくのかを開発者に尋ねたインタビューの内容をお届けします。
<インタビュイー紹介>
LAPRAS株式会社 プロダクトマネージャー /廣瀬鮎美

顧客満足度・従業員満足度向上支援のコンサルティング会社を4年、総合コンサルティング会社を3年経験後、カスタマーサクセスマネージャーとして2019年10月にLAPRASに入社。2023年7月よりプロジェクトマネージャーに転身。
「AIスキルハイライト」開発の背景
AIスキルハイライトとはどんな機能ですか?
(廣瀬)エンジニアの中でもハイスキル層の経験がある人をAIが判断し、探しやすくなる機能です。たとえば「エンジニアチームの技術的なリードを担った経験がある」とか「ピープルマネジメント経験がある」といった方を見つけるのに役立ちます。
この機能はどんな課題を解決するために開発されましたか?
(廣瀬)弊社の運用代行チームで作っていた機能が発端でした。なぜこうした機能が求められたかというと、運用代行チームがお客様から採用の依頼を受けるポジションとして、リード経験やマネジメント経験のある方々を求める声が多かったからです。
そもそもハイスキル層ということもあり、母集団が少ないので候補者を探すのが難しい職種ではあるのですが、従来はLAPRASの候補者検索で「それらの職種の経験がある」と選択している人の中から探す、というやり方をしていました。
「特定職種の経験」がある候補者の母数が少なかったのでしょうか?
(廣瀬)明示的に「職歴◯年」と書いていなくても、実質的にそれらの職種と同様の役割をこなした経験がある候補者は潜在的に大勢いるのではないかと感じていました。
そうした「潜在的な経験者」を見つけ出すためには、候補者の職歴情報を時間をかけて丁寧に読み解いていく必要があります。
この作業は手間がかかり負担も大きく、またヒューマンエラーから見落としが発生する可能性もありました。さらに、職務経歴を読み込む人の解釈によって「経験ありとみなすか、なしとみなすか」に違いが出てくる場合もあります。
そこで、現在のトレンドであるLLMの技術がこうした課題の解決に役立つのではないかと考え、開発に取り組んでいきました。テックリードやピープルマネジメント、PM/PLなど、特定の経験を明確に定義した統一見解を作り、それをAIに学習させることで、希少な経験を持つ候補者探しを効率的に探す機能を作ろうとしていました。
この機能によってLAPRASを利用しているエンジニアの方や採用担当の方に、どんな価値を提供できると考えていましたか?
(廣瀬)LAPRASに登録されている方は、エンジニアであるかに関わらず「自身の経験を元に正当に評価されてほしい」と考えていると思います。しっかりとした経験があるにも関わらず、それが見つけてもらえないことで評価されていない方がいるなら、その状態を改善して正しい評価が受けられる状態にできれば「良いマッチング」が生まれる機会を増やせるのではと考えました。
採用担当の方々にとっては、候補者情報の読み込みやスクリーニングにかかる手間を減らし、採用業務の負担軽減につながるメリットが生まれます。
例えばまだエンジニア採用の経験が浅い方だと、職務経歴を読み込んでも特定職種の経験の有無に気付けないケースも考えられます。また、日々多くの方の情報を読んでいくと、つい職歴やプロフィールのわかりやすいキーワードのみを目で追っていく、ということにもなりがちです。
明確にそういった職種で仕事をした経験がなくとも、「実績をきちんと読み込んでいくと実質的に同じような役割を担った経験がある」という方も大勢いて、「そうした人が見過ごされているのではないか」と感じていました。
AIスキルハイライトによって、そうした候補者の方に少しでも良いマッチングの機会を提供できたらうれしいです。
開発における挑戦と取り組み
開発をスタートする段階で意識したことや、当面の目標にしたことはありましたか?
(廣瀬)対象となる経験をどう定義するか、それをどう評価するかがポイントでした。社内でLAPRASの運用代行チームにヒアリングを行い、テックリード・ピープルマネジメント・PM/PL経験をできるだけ具体的に、明瞭化するところからスタートしました。
経験の定義がある程度定まったら、それをAIに学習させ社内で運用しながら、人間の目でAIの出力を確認していきました。AIが「経験あり」と判定したものを実際に人間が確認して「経験あり」と評価できたらGood、そうでなければBadと評価します。このGood/Bad評価の比率=適合率をKPIとし、90%以上を目指して改善に取り組んでいきました。
AIを活用した機能開発という面で、特に苦労したポイントはありますか?
(廣瀬)使用するAIの種類によってプロンプトに「好み」のような一定の傾向が生じるところに注意が必要でした。たとえば「このAIはこういうプロンプトの書き方をすると、適合率が高くなる」といった、プロンプトごとの「好み」をチェックしなくてはなりませんでした。
出力結果を改善するには「使用するAI自身の性能を変える」と「入力するプロンプトの書き方を変える」という2つの方法があります。そのどちらが、どれだけ出力に影響を与えているかのバランスを取っていくのが大変でした。
技術的な面以外に直面した課題はありましたか?
(廣瀬)機能ができたあとで使うことになる運用代行チームと、実際の機能開発を担当するR&Dチームがうまく連携していけるよう気をつけていました。「経験の定義文」を作るための、運用代行チームへのヒアリングの際は、解像度が高まるようR&Dチームも同席して行いました。また、運用代行チームにもR&Dチームがやろうとしていることを共有するための時間を設けました。
LAPRASでは、日常的に運用代行チームの運用の場にエンジニアが参加する機会を設けていたので、もともと距離が近かったこともあってチーム間の連携はうまくいきました。
チーム間の連携は、開発にどのように寄与しましたか?
(廣瀬)先に述べた「プロンプト」と「使用するAI」との間でバランスを取っていく過程で、それぞれ役割分担をしながら解決していくことができました。
「使用するAI」については、探り探りではあったもののR&Dチームが生成AIの利用コストも加味したうえで選択肢に当たりをつけてくれました。
定義分は運用代行チームとも連携しながら私がチューニングを行い、双方の改善がうまく結びつきました。
開発中に特に工夫した点や、印象に残っている出来事があれば教えてください。
(廣瀬)工夫した点は「なぜAIが経験ありと判定したのか」という根拠を出力するようにしたことです。AIの場合、ハルシネーションを起こして間違った情報を出力してしまう可能性もあるので、根拠が間違っていないかを人の目で判断できる仕組みが必要だったからです。
印象に残っているところは、やはり定義文を作る過程での試行錯誤ですね。AIの出力に対してGood評価をつけるかBad評価をつけるかで、人によって解釈が分かれることもありました。そういうときは2~3回、社内でインタビューをするなどして経験の定義を見直したり、個々の事例をメンバー各自が詳細に確認する、といった工程が必要でした。
今後のLAPRASが目指していくものは?
この機能のリリースによって、どのようなインパクトがありましたか?
(廣瀬)候補者検索で特定の職種を探す際、条件を入れて検索したときに表示される候補者の件数が以前よりも増加しました。現在はテックリード経験・エンジニアリングのリード経験・PM/PL経験をAIに判定させると、4000人を超える候補者がヒットします。
これら特定職種の経験者を探していたものの、なかなか有望な候補者を見つけられなかった方も、シンプルに該当する候補者の母数が増えたことで以前よりも見つけやすい状態になったと思います。
社内での課題感であった運用代行チームの日々の運用・候補者スクリーニングについても効率化することができました。
今後の改善点や、将来的な拡張計画についても教えて下さい。
(廣瀬)候補者のスクリーニング作業には、まだまだ属人的な領域が残っています。今回実装したAIスキルハイライトの精度を上げることで、こうした領域をより効率化していきたいと考えています。また、今回とは異なるスキル・経験の有無の判定をできるようにするなど、より別の観点でもAIスキルハイライトの活用領域を広げていけないか検討しています。
この機能が、将来的にLAPRAS全体のサービスにどのような影響を与えると期待していますか?
(廣瀬)エンジニア採用では、一定のドメイン知識が必要になるため、各企業はそうした知見を持つ人材の確保に注力しています。また、ハイスキル層の需要もAIの登場によって今まで以上に競争が激化しています。このような状況において、AIを活用した機能の拡充は質の高いエンジニア採用サービスを属人的ではない形でスケールさせるうえでLAPRASにとって非常に重要な意味を持つと考えています。
自社でLAPRASの運用を行う企業の方々に対しては、そうした機能によってより楽に、かつ効率的な運用ができるようなツールを提供していきたいです。
運用代行のお客様に対しても、高い生産性を保ちつつ良いマッチングの機会を次々に提供できるような状態を確立していきたいですね。
最後に、この機能を利用する採用担当の方々へのメッセージをお願いします
(廣瀬)AIスキルハイライトは、まだまだ新しい試みです。より精度を高めていくためにも、ユーザーの皆さんからのフィードバックを積極的に取り入れていきたいと考えています。
スキル判定の根拠となった経験についての評価やコメントをユーザーの皆さんからフィードバックいただける機能がありますので、気になる点がありましたらご利用いただけるとうれしいです。
我々もまだまだ手探りの状態なので、どうぞお気軽にフィードバックをお寄せください!
<フィードバックの方法はこちらから>
LAPRASの新機能「AIスキルハイライト」
LAPRASの新機能「AIスキルハイライト」でリード・PM・マネジメント経験のある候補者をAIが見つけ出してラベリングします!
LAPRASのAIスキルハイライトは、AIが職務経歴書を解析し、以下3つの経験を持つ候補者を自動で抽出します。
AIが経歴から見つけ出す、見落としがちな「スキル/経験」
- エンジニアリード
- ピープルマネジメント
- PM/PL(プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダー)
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