<イベントレポート>就職人気企業ランキングの違いから見る、新卒・中途別のエンジニアを惹きつける採用広報戦略

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企業の認知度は、採用活動において特に重要な要素のひとつです。転職したい層に対してポジティブな企業イメージを創出できれば優秀な人材から自ずと選ばれる理想的な状態を実現できます。
とはいえ、どうやって好ましい企業イメージを作り出していくか、その方法がイメージできない採用担当の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、2024年3月7日に実施されたイベント「就職人気企業ランキングの違いから見る、新卒・中途別のエンジニアを惹きつける採用広報戦略」の様子をご紹介します。このイベントは、新卒エンジニア採用で知見を持つサポーターズ社と中途エンジニア採用を営むLAPRASが、人気企業がどのようにブランドイメージを作り出しているのか、そのノウハウを掘り下げたものです。

サポーターズ、LAPRASの2社がそれぞれ調査した「人気企業ランキング」を元に、新卒・中途エンジニアに選ばれる企業になるためにはどのようなポイントを押さえればよいか、データに基づいて明日から実践できるノウハウを解説しています。

エンジニア採用戦略に悩んでいる採用担当者の方は必見の内容ですので、ぜひご覧ください!


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※記事中に「LAPRAS SCOUT」の文言がある場合は「LAPRAS」と読み替えてください。

目次

登壇者プロフィール

株式会社サポーターズ / 技育プロジェクト事業責任者 / 桑原利旺

京都大学卒業後、サポーターズに新卒入社。メガベンチャーからスタートアップ企業まで幅広く100社以上の新卒エンジニア採用を支援に従事。その後、広報部門の立ち上げ等を経て、2022年より学年不問のエンジニア学生キャリア支援プログラム「技育プロジェクト」責任者及びサポーターズ全社のセールス、マーケティング、広報部門の統括を担う。

LAPRAS株式会社 / 広報PR責任者 / 大西 栄樹

2010年オムロン株式会社入社。BtoBの法人営業を経験後、広報・PRやマーケティングなど国内外のブランドコミュニケーション業務に従事。 2021年8月よりLAPRASにジョインし、PR・広報を中心に、noteやイベント運営など採用広報も担当。大企業、ベンチャーなど様々な規模の企業での採用広報の経験から採用広報のコンサルティングも実施。

新卒人気企業ランキング

桑原さん:サポーターズでは、エンジニア新卒学生を対象とした「新卒就職希望企業ランキング」を発表しています。今回ご紹介するのは、2025年卒業予定の学生を対象とした最新のランキングです。
それでは、ランキングの詳細を発表していければと思います。プレスリリースでも公開しておりますので、合わせてご覧ください。

ランキングの傾向について簡単に触れますが、トップ3にはWebサービス、SIerやITコンサルティングなど、IT業界企業が中心にランクインしています。おそらく、10〜15年前はソニーなどのメーカー企業が上位に並んでいたと思います。おそらく、大学や大学院からの就職活動が推薦が中心だったという背景が大きいと考えられます。

そこから、ここ10年でWeb系企業が新卒エンジニア採用に力を入れ、サイバーエージェントやLINEヤフー、DeNA、楽天グループなどがランクを大きく上げてきました。

しかし最近では、ソニー、NTTデータ、アクセンチュアなど、Webサービス以外の企業もIT人材の採用に力を入れるようになり、業界全体でバランスの良いランキングになってきたように感じています。

新卒人気企業の顔ぶれが過去10年で大きく変化

大西:なるほど、ありがとうございます。この10年で企業の顔ぶれが結構変わってきたんですね。

桑原 そうですね、徐々に変わってきたと感じています。サイバーエージェントやDeNA、LINEヤフーなどは例年人気ですが、ITコンサルや大企業も入れ替わりながらランクインしています。

IT産業以外の事業会社も注目されており、たとえば自動運転への取り組みで注目されるトヨタなど企業もランキングに入ってくるようになってきました。

大西:桑原さんから見て、特に注目しているポイントなどありますか?

新卒ではITコンサル、SIerの人気が高い

桑原さん:個人的には、ITコンサルやSIerの人気が高まっていることに注目しています。安定性と成長環境のバランスが人気の理由であると考えられます。

大西:なるほど、特にSIerが注目されているという点は、新卒ならではの傾向かもしれませんね。

桑原さん:新卒のエンジニア採用は、いわゆる新卒の総合職採用と中途のエンジニア採用の中間くらいの位置にあると感じています。新卒採用では、学生はまだ働いたことがなく企業のイメージが湧きにくく、企業のブランド名で選ぶ傾向が高いと思います。

一方で、中途のような側面もあります。エンジニア専門職として学生時代にインターン経験を通して会社を選ぶことがあったり、その中でも特に優秀な方は中途水準の年収提示を受けることもあります。この2つの要素が混ざったランキングになっているのではないでしょうか。

大西:なるほど。単純にイメージだけで選んでいるわけではなく、中身の部分も結構しっかり見ているというのは特徴的ですね。

中途人気企業ランキング


大西:続いて、中途エンジニアの人気企業ランキングに移ります。LAPRAS社のエンジニア向けサービスに登録している、技術力が高いとされる154名を対象にしたアンケート結果をご紹介します。働きたい会社について、具体的に3つの社名を挙げていただく形で質問しました。

全体のランキングは、1位にGoogle、2位にMicrosoft、3位にAWSとなっています。

若手中途エンジニアにはメガベンチャー、外資系が人気

しかし、34歳以下の若手ITエンジニアを対象に絞ったランキングでは、1位にGoogle、2位にメルカリ、3位にサイバーエージェントという結果になりました。若手エンジニアにとって、メルカリやサイバーエージェントなどのメガベンチャーの人気が特に強いことがわかります。また、5位にはゆめみがランクインしていますね。

桑原さん:ゆめみは、2~3年前ぐらいから採用に急速に力を入れはじめた印象があり、新卒採用にも影響が出ているように感じます。

中途では「SIerから自社Webサービスへ」の傾向が強い

大西:ランキングをみると、SIerが上位に来ていないことも特徴の一つとして見られます。メガベンチャーやWebサービス企業が比較的上位にランクインしています。

ソニーなどの大手企業もランキングには名を連ねていますが、トップというわけではなく、20位以内に位置しているような状況です。

桑原さん:LAPRASに登録されている方で、現職がSIerの方も、Web系企業への転職意向が強いということですか?

大西:そうですね。現職SIerの方々が、次のキャリアとして「自分でサービスを作ってみたい」と考えるケースは多いです。そのため、自社でWebサービスを展開している企業への人気が集中しているのかなと思いますね。

桑原さん:ありがとうございます。外資系企業の人気もやはり高いですね。新卒との違いでみると、ログラスやSmartHRなどスタートアップ企業のランクインですね。

大西:ランキングを踏まえて、新卒採用でエンジニアを惹き付けている会社の採用戦略というのは、どういう点がポイントなのでしょうか?桑原さんからご紹介お願いします。

新卒採用でエンジニアを惹き付ける会社の採用戦略

桑原さん:私からは、新卒エンジニア採用が新卒の総合職と中途エンジニア採用の中間ぐらいに位置すると述べさせていただきましたが、その点をもう少し深掘りして説明したいと思います。

新卒エンジニアのエントリーは「9社以内に厳選」の傾向

まず、半数以上の学生が本選考にエントリーする企業数は9社以内で、厳選応募する傾向があります。新卒の総合職就職では幅広い企業へのエントリーシートを提出し、転職ではスカウトがきた中で特定の企業だけに応募するケースが多いかと思います。新卒エンジニア就活の場合は、平均して10社を超えない程度のエントリーであり、新卒総合職と中途エンジニア職の中間くらいです。

就業型インターンシップは優秀層の獲得に有効

新卒ならではの特徴としては、働くイメージを持ってもらうことが非常に重要であり、そのためインターンシップが重要とされています。特に、優秀層に対してはインターンシップが必須とされている現状があります。

大西:インターンシップに力を入れている企業は昔からありますが、最近はインターンシップの内容にも変化がありますか?

桑原さん:新卒エンジニア採用において特に注目されているのは2~3週間の就業型インターンシップです。開発現場で使用される技術、会社の雰囲気を体験することが重視されています。

優秀な学生ほど、就職先を選ぶ際にこれらの体験を重要視しています。就業型以外のインターンシップも効果的ではありますが、優秀層を確実に獲得するためには、就業型インターンシップが効果的です。

大西:なるほど、ありがとうございます。

エンジニア学生は情報収集経路に特色あり

桑原さん:「学生はどこからインターンの情報を得ているのか?」という点についても、サポーターズでは学生アンケート実施しました。

やはり、1番多いのは「就活関連サイト・イベント」です。学生にとって初めての就職活動になるので、まずは就活サイト・イベントで情報を得ているようです。

エンジニアならではの特徴としては、「魔法のスプレッドシート」と「企業のテックブログ」でしょうか。魔法のスプレッドシートというのは、元々有志のメンバーがインターンシップの情報をGoogleスプレットシートにまとめたことからはじまったものです。現在はnotionに移行し、各企業やエンジニア・学生個人が情報を追加できるような仕組みになっています。

テックブログに関しても、新卒エンジニアはよく見ている印象がありますね。

新卒エンジニアは「技術的に成長できて待遇が良い企業」を求めている

桑原さん:学生エンジニアがインターンで重視していることとしては「技術的な成長・挑戦と待遇のバランス」です。

新卒総合職と中途エンジニア職の中間だなと思うのですが、成長だけでも、待遇だけでもなく、両方のバランスですね。メガベンチャーが人気な理由としては、大規模な開発に参加できるという挑戦環境、充実した研修制度、優秀な人が働いているという成長環境など全体的なバランスが良いからだと感じます。

新卒への情報発信は「SNSとテックブログの組み合わせ」が有効

情報収集のチャンネルについては、SNSとテックブログの組み合わせが特に効果的だと考えています。エンジニア学生はX(旧Twitter)で情報収集をしていることが多くいため、Xでの情報発信は効果的です。

その他:新卒エンジニアに有効なアピール方法

桑原さん:他には、「学生向けカンファレンスへの協賛」というのもおすすめです。例えば、サポーターズでは『技育祭』という国内最大級のエンジニア学生向けテックカンファレンスを毎年開催していますが、自社をターゲット学生に知ってもらうためにぴったりの場です。

また、「新卒の研修資料の公開」も費用をかけずにできることとしておすすめです。その会社で成長できそうかの判断材料として、学生が見ている場合があります。近年はWeb系企業やベンチャー企業を中心に、公開されるケースが増えてきたように感じます。

「テックブログの運用」については、インターンシップ参加レポートなどは、新卒採用向けのコンテンツをインターン生自身に作成してもらうこともおすすめです。テックブログが活発だと、人事だけでなく、全社一丸となってエンジニア採用に力を入れているという印象を与えられます。よく「人事以外を巻き込んでいくのが大変」というお悩みをご相談いただきますが、まずはエンジニア採用がいかに難しいかを経営層やエンジニアに認知してもらうことから始めると良いかと思います。

「SNSでの発信」は、SNSという媒体の特性を活かして、真面目一辺倒ではなく、少しユーモアのある発信をするなど、エンジニアのカルチャーに合った発信ができると効果的です。

大西:テックブロックの話はよく中途の採用でも出てきます。運用を継続していくところに非常に難しさがある中で、逆にしっかりやりきれるということは、企業としての姿勢がしっかり見えますし、 エンジニアに対して投資していることが伝わります。長期的に強い武器にはなりますよね。

桑原さん:ここ数年でエンジニアに特化した採用広報ポジション(従業員)を設ける企業も増えてきましたよね。

中途採用でエンジニアを惹き付ける会社の採用戦略

最も重視されるのは提示年収

大西:ここからは、中途採用におけるエンジニアを惹き付ける採用戦略についてご紹介します。

まずは調査結果を共有します。スカウト時に何を求めるかというと、最も重要視されるのが「提示年収」です。中途採用では現年収を基準に、次のステップでどれだけ収入を増やせるかがポイントになります。

また、働き方の柔軟性も大きな関心事です。リモートワークと出社のバランス、特にITエンジニアにとっては、リモートワークの可能性がどれだけあるかが重要です。毎日の出社が前提な会社は避けられがちな傾向があります。

さらに、組織のカルチャーや人、事業内容が自分のやりたいことに合っているかも、重要なポイントです。

大企業よりも成長できそうなスタートアップを選ぶ傾向

転職先としては、Web系上場企業やメガベンチャー、外資系企業が特に人気です。次いでシリーズA~Cの未上場スタートアップへの関心も高く、大企業よりも人気が高いです。

桑原さん:スタートアップへの転職を志される方は、スタートアップのどのような点に魅力を感じるケースが多いでしょうか。

大西:やはり成長できるかどうかが重視されます。若手~中堅だと、最初入った会社で経験を積んで、次どうするかと考えた時に、技術的に新しい領域をやったりとか、もっと関わる仕事の範囲を広く深くしていきたいと思われてる方が多いようです。

中途の場合だと、自分の興味のある領域が結構分かってきた結果、成長環境や自分にあった事業を求めてスタートアップを目指す方もいらっしゃいます。

採用広報で自社の魅力を伝えるための4つのポイント

大西:ここまでアンケートをもとにお話してきましたが、ここからは中途採用においてエンジニアを惹きつけるポイントについてお話します。

先ほど転職活動において求められるものとして「成長環境を求める傾向が強い」とお話しました。では、どのようにそれを伝えていったらいいのかというと、①企業理念、②人・文化、③事業・業務内容、④働き方・待遇の4つにわかれます。

この4つをすべて、同じ粒度で伝えていくのはなかなか難しいため、どのようにバランスを取って設計していくかが、採用広報では重要になってきます。

自社の魅力を伝える4種のメディア

この4つの中身を決めたあとは、どの媒体・場所で伝えていくのかを考える必要があります。4つのメディアカテゴリーについて紹介します。

  • Earned:パブリシティ(報道)、アナリスト・レポートなど
  • Shared:SNSのシェア、リツイート、商品レビュー、口コミなど
  • Paid:広告、エンドースメント(著名人契約)、PPC(Pay Per Click)など
  • Owned:企業・団体の所有するメディア(ウェブサイト、ソーシャルメディア・オフィシャル・ページ、企業ブログ、会社案内、メールマガジン、Webinarなど)

どのメディアがエンジニアによく見られていて、 どんな内容を出せばエンジニアに魅力が伝わるのかということを設計していくという流れです。

採用広報の事例①(株式会社ゆめみ)

大西:先ほど少し出てきたゆめみさんの事例をご紹介します。

ゆめみさんの採用広報のポイントとして、①自社の魅力をわかりやすく伝える、②適切な配置や動線、③圧倒的な情報開示量の3つが挙げられます。

代表が「自分の言葉」で自社の魅力を語る

相当採用広報に力を入れてやってらっしゃいますが、その中でも際立っているのが代表のメッセージです。ゆめみという会社がどんな会社なのか、わかりやすく書かれています。ここまでしっかりと自分の言葉で魅力を語っているケースは意外と多くはありません。他社との差別化ポイントですね。

桑原さん:先ほど新卒・中途の人気企業ランキングを紹介した中で、メガベンチャーや外資系企業が人気だと分かりました。その中で、中堅企業はどのように戦っていくかが重要です。ゆめみさんは採用広報に成功している事例として非常にわかりやすく、学ぶべき点がたくさんありますよね。

事例から有名企業との関係性を伝える

大西:よく中途採用では、「受託開発を行う企業は魅力を伝えにくい」という相談を耳にしますが、ゆめみさんはその課題に対しても非常にわかりやすくオープンに情報開示されています。

例えば、開発事例として出ている有名企業との関係性が良いんだなということもわかりますよね。有名企業とも、しっかりとタイアップして開発ができるという魅力が伝わってきます。

採用ページのメッセージで「成長できる環境」を想起させる

大西 ゆめみさんの採用ページもみてみましょう。「ゆめみのなか」という採用ページが作られているのですが、上部にある「圧倒的に成長できる環境、あります」というキャッチフレーズから、シンプルにゆめみがどんな会社なのかが伝わってきます。

「ゆめみオープンハンドブック」というコーナーでは、会社にまつわるさまざまな情報がまとめられています。採用ページの中でここまで情報開示をしている企業は珍しいと思いますが、成功事例としてみなさん取り入れやすいのではないでしょうか。


桑原さん:「ゆめみオープンハンドブックとは?」という項目で、情報の透明性という自社の姿勢を示しているのもいいですよね。ちょっと気になってクリックしてしまいますし、読んでいて楽しいんですよ。

求める情報が得やすい導線設計をする

大西:テックブログへの動線など情報がうまく繋がっていて、人が情報を得やすい設計にもなっているようです。

「コーポレートサイト ゆめみ」と検索すると、まずトップページにたどり着きます。メニューから採用情報を選択すると、採用に関する情報が4つの大カテゴリに別れています。具体的に自分が知りたいことに対して分かりやすい動線になっていて、情報が多いことによる探しづらさがなく、情報設計が綺麗です。エンジニアはサイト設計からも、「この会社ってすごくこうしっかりしてるんだな」と好印象を抱くので、採用にとっても非常にポジティブな要素ではないでしょうか。

桑原さん:「採用サイトがイケてないから志望度が下がった」という話は、よく耳にしますよね。

大西:そうですね。ある程度整った採用サイトを作っておくのは、エンジニア採用において重要だと思います。

採用広報の事例②(株式会社SmartHR)

大西:つぎに、SmartHRさんをご紹介します。SmartHRさんはこれまでは中途採用が中心でしたが、新卒採用にも力を入れ始めています。

ポイントは①膨大なコンテンツ量の中から見るべきものを厳選して配置していること、②文化理念の伝え方に重点を置いていること、③募集職種を探しやすいなど、候補者への配慮が丁寧であることの3点です。

マーケティングの考え方で企業のイメージを打ち出す

コーポレートサイトで、まず最初に出てくるのが「well-working」という言葉。意識的にこう、企業理念とかミッション、ビジョン、バリューみたいなものを表現する言葉を入れています。ここでしっかりと、「どんな会社で何を目指しているのか」を伝えられているのが、非常に特徴的ですね。

採用サイトは、メニューがシンプルで、コンテンツがわかりやすいように配置されています。エンジニア採用や新卒採用は独立された枠が設けられており、別ページへの動線がうまく設計されています。

桑原さん:SmartHRさんはマーケティング界隈でも、マーケティングが非常に強い会社であると認知されています。最近は、マーケティングの考え方や技術が採用広報に染み出していくトレンドが出てきているように感じます。みなさんも採用広報ブランディングを進めていく中で、一度社内のマーケティングチームと相談することで、採用広報に役立つアイデアが得られるかもしれません。

大西:社内連携という考え方は参考になりますね。ぜひ真似できると良いですね。

採用戦略のはじめ方チェックシート

大西:ここまで「新卒・中途エンジニアを引き付ける採用広報戦略」についてご紹介してきました。明日からこうしたノウハウを自社にどう取り入れるか検討する際は、以下のチェックシートをご確認ください。こちらを元に、ご紹介したノウハウの中で「自社に何を取り入れるか」を決めていくと、リソース配分を見定めていくことができます。考え方や取り入れ方のアイデア出しに使っていただけたら幸いです。

Q&A

エンジニア採用において効果的なクロージングについて教えてください。

大西:中途採用観点でお話をさせていただきます。最後のクロージングは、 各社いろんな取り組みをしています。やはり採用担当者が全体のプロセスを進めつつも、エンジニア部門の責任者が関与し、候補者のキャリアを詳しく聞いていき、どういう風にこの会社で働けるのか、どんな仕事ができてどう成長できそうなのかをしっかりと伝えることが最後まで重要になってくると思います。

理想は働いている自分の姿がイメージできることなので、候補者が抱えている不安を人事がうまく吸い上げ、それを解消できるようなアクションをしていくのがベストです。人によっては会社見学を好む候補者もいれば、記事を送ることで解消できる方もいたり。候補者に合わせたアトラクト(動機付け)が重要です。

桑原さん:新卒・中卒とは限りませんが、エンジニア採用における人事の役割は、サッカーで言うとボランチ(司令塔)だと思います。シュートを決めるところは、現場のエンジニア社員になってくるかと思うので、候補者の希望や懸念を吸い上げた上で、 動機付けできるエンジニア社員をアサインしていくのが、人事の役割であると思います。

新卒採用においては、いわゆるエモーショナルさを意識している企業も多いです。内定を出すタイミングなどで、面接官となった配属先上長が手紙を書いて候補者に送る、オファー面談では来社してもらい「ぜひ一緒に働きましょう」と対面で伝えるといったクロージングが効果的だったという事例はよく耳にします。

施策ポートフォリオの設計やROIの算出について難しさを感じています。どのように考えるといいかなど教えていただきたいです。

桑原さん:前提として、必ずしも企業の魅力(①企業理念、②人・文化、③事業・業務内容、④働き方・待遇)の全てを充実させなければいけないわけではありません。まず、自社が4つ魅力の中でどこに強みがあるのかを分析した上で、施策ポートフォリオを考えていくことが必要です。

大西:実施中の施策や配置してるリソースというのも重要な観点です。

実施中の施策の中にも上手くいきそうな施策と、あまり効果がなさそうな施策があると思います。リソースは限られているため、やめるものを決めるというのも重要です。

ROIやKPIという観点だと、テックブログなどでKPIを厳しく立てると結局続かないというケースがよくあります。最初は、KPI自体を「続けること」とし、反応はできる限りウォッチはするけど、 そこまでそれを気にしないという形にするのもありだと思います。

長期で見ないと効果が算出できないというのが、採用方法の難しいところですよね。

弊社はシード期のスタートアップです。エンジニア採用は生命線であるとともに、採用活動に使えるリソースが限られています。最優先すべきことはなんでしょうか。

大西:まずはどんな人を採用したいのかという要件定義について、経営層含めてしっかりと合意することだと思います。

そこが定義できないと、施策が成果に繋がらないことがあるので、まず採用ターゲットをしっかりと定義した上で、 その人たちがどういうところで情報をキャッチするのだろうかを考え、確率の高そうなところにリソースを配置していく。

次に、過去に応募してくださった方が辞退したポイントとか、自社の魅力が伝わりづらかったポイントとかをあぶり出して、そこを重点的に攻めていく。

リソースをどこに投下するのかっていう見極めをかなりしっかりしていくっていうのは大事だと思います。

桑原さん:個人的に1番大事だと思うのが、「ターゲットとしている人が本当にいるのか」という点です。青い鳥を探し続けてリソースを浪費してしまうケースは多々あります。市場にはどのような候補者がいるのかについては、我々のような採用支援会社が詳しいので、ぜひお声がけるといただけると嬉しいです。

シード期だと、CTO中心に採用計画を作っていくと思いますが、その人たちの周りには優秀な人しかいません。CTOからすると「これぐらいの人ならたくさんいるだろう」と思っていても、実際には「そもそもそういう人はあまり市場にいない」という話はよくあります。そのような市況感を役職者に正しく把握してもらう。市況感を把握した上でどうするか考えていくのがすごく大事だと思います。

大西:おっしゃる通りですね。本当に中途でもよくある話で、 自分たちの理想はあるけれども、それを市況感や外部環境と照らし合わせた際に、現実的でないというケースですね。外部環境を踏まえた上で、「自分たちとして狙うのはこういう人だよね」と柔軟に対応していくことは重要ですね。

エンジニアが見るのは採用担当者が頑張っているSNSよりも、自社の現役エンジニアの方が発信している情報の方が良いでしょうか。

大西 採用担当者個人のアカウントをエンジニアが見ているケースは非常に少ないです。エンジニア同士の繋がりで情報を見ることが多く、エンジニアが発信している情報であれば、届きやすいです。エンジニアの口コミやシェアする情報が効果的です。情報をシェアしやすい形にすることも大切です。

まとめ

新卒か中途かによってエンジニアが企業選びで重視する要素には違いがあります。そこから適した採用広報の戦略や、有効な情報提供の仕方が決まってくることがご理解いただけたのではないでしょうか。ご紹介した他社事例を参考に、ぜひ「自社にとって最適な採用広報戦略」を検討してみてください。採用にプラスにつながるだけでなく、自社のイメージアップにも寄与するはずです。

(ライター:酒井 駿)


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