LAPRASの開発担当に、AIを活用したエンジニア採用の未来を聞いてみた!

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ダイレクトリクルーティングを伴走支援するAI機能シリーズ「AI採用パートナー」をリリースしたLAPRAS。AIを用いた採用はこれからますます現実味を帯びてきます。そこで、生成AIを活用した開発を行っている鈴木さんと本庄さんに現段階でLAPRASがAIを活用してどのようなエンジニア採用を実現していきたいのか、見解と思いを語っていただいております。

R&D責任者 / Product Manager 鈴木亮太さん

Product Manager 本庄真希子さん

生成AIが出て「採用における開発」で変わったこと

まずはLLMが出てきて変わったことは何かお聞かせください。

鈴木:LAPRASはChat-GPTが出てくる以前からAIを使った機能を出してきました。Chat-GPTをはじめとするLLMが出てきたことで一番大きい点は自然言語処理を使った機能をとにかく早く試すことができるようになった、というところだと思います。これまでは最初の技術検証に時間かかっていたところを、粗めに作った上で様々試す、そしてその中から良いものを選ぶ・検証していくということがとてもしやすい状況になったと感じています。また、これまでの自然言語処理技術ではとても大変だった「文章を生成する」ことがLLMによって現実的なものとしてプロダクトに採用できるようになったことが技術的には一番違うところかと思います。

例えば過去に開発して大変だったけれども、今はスムーズに開発できる機能の例はありますか?

鈴木:例えば先日リリースした「AIレビュー」の機能はまさにその典型例です。実は以前似たようなことを構想していたことがあり、技術検証ではある程度良いものは出ていたのですが、実装や運用のことも含めると大変ということでお蔵入りになってしまいました。しかしながら、今回大規模言語モデル(LLM)を使うことによって、とても短い期間で検証と開発を終えることができたことは衝撃的でした。

採用企業側の機能でいうと今回の「AI採用パートナー」第一弾、求人票の自動生成機能に関してですが、求人票を生成する話はアイディアとして過去挙がることはあったのですが、なかなか難しく、これもLLMによってできるようになったという感じです。

ありがとうございます。では、LLMをはじめとするAI技術によって今後採用業務にどのような変化が起きそうでしょうか?

本庄:我々がサービスを提供しているスカウトメールやダイレクトリクルーティングは文章でのやり取りが多い領域です。企業の採用担当者や人材エージェントの方々は日々大量のメールを書いていると思います。そういった作業にはLLMは非常に相性が良く、人がやり取りするための文章を作るところにLLMがどんどん使われるようになっていくのではと思います。また、履歴書や職務経歴書の文書の読み込みという作業も非常に多く、それらの文章の読み込みやサマライズ、評価もLLMが得意とするところなのではと思います。

採用の現場ではアシスタントさんを採用して履歴書の目視チェックを多くお願いするということもあります。今までこういったものは何万何十万という応募が殺到する超有名企業に限られた取り組みでしたが、これもLLMによって手軽に、かつそれなりの精度で大量に処理できるようになってくるので、そういった今までのAIで難しかった業務が一気に置き換えられていく可能性はあるんじゃないかと思っています。

鈴木:今はまだAIが採用業務に入ってきたばかりで、業界を見回してもAIが有効に使われている箇所はかなり限定的だと思います。どちらかというと既存の採用業務の一部をAIが代替していくみたいなものが多いです。しかし、今後は採用プロセス自体が変革していくフェーズになってくると思います。今は文章作成やコミュニケーションに人間が介在する部分がかなり多いというのが現状ですが、将来的にはそのプロセス自体が変わり、採用企業側、採用される候補者側に対してAIがそれぞれのエージェント(代理人)として交渉やスキルマッチ、カルチャーマッチの判断を代替していく、そういう世界観になっていくのではと思ってます。

本庄:既に面接などのビデオをAIが分析して、面接を分析するソリューションが出てきています。感情分析などの応用ですね。将来的に例えばわざわざ面接や技術テストやペーパーテストを行わなくても、その人の普段の振る舞いやスキル、パーソナリティのようなもの、例えば何か仕事をしている時のビデオを送って、あなたと企業のカルチャーの相性を分析できるというのはそう遠くない未来だと思っています。適性検査でなく、リアルの人間が動いているところを分析して、実務に即したデータ、自社で戦力として活躍できそうな人かどうかといったことをAIが判断、今までの面接や筆記試験のようなものを置き換えていく未来は想像の範囲内かと思います。

AI採用のメリット・デメリット

次はAIを活用した採用のメリット・デメリットを教えていただけたらと思います。

鈴木:メリットは人が職業や会社とマッチングする上で本質的には必要ないであろう時間や手間、コストなどを、AIによってかなり圧縮することができると思ってます。企業探しや、最初のやり取りから徐々に企業のことを知っていくプロセスなど、そういったところは時間と心理的コストがかかるためどうしても「仕事探しは気が重い」と感じてしまう。転職は生活を大きく変えるものです。本質的に重い部分があるのは仕方ないとしても、それ以外の部分について、AIが介在することで楽になる部分は多いのではないかと思います。

デメリットとしては、よく言われることですが、AIに頼りすぎることで人間が思考停止してしまう可能性があることが挙げられます。いくらAIが介在したとしても、職業選択の本質的な部分、すなわち「自分がどうありたいか」「どんな仕事に就きたいか」を最終的に判断するのは本人の意思によらねばなりません。そのため、AIが介在するサービスであっても、自分の強みを意識したり、やりたいことを自分で考えたりといったことはAIのサポートを受けつつも自分でやり続けなくてはいけない。AIに言われるままの仕事にするみたいな形のサービスを目指してはいけないし、そのようなサービスは社会に認められないのではないかと思います。

本庄:まず良いところは先程も出ていましたが、採用はコミュニケーションにすごくコストがかかるものです。初めまして同士の人間のやり取りになるので、挨拶のやり取りであったり、ちょっとした言い回しや語尾、表現には、採用される候補者側も採用企業担当者もかなり神経を尖らせる必要があります。そこに気を配る割合が減るだけでも、双方がより多くの企業ないしは候補者へアプローチができるようになります。つまり、より多くの人が多くの選択肢を持てるようになる可能性があるということです。そういった意味で、お互いのコミュニケーションのアクセスが良くなることによって様々な機会が増えるところがいい点かなと思います。採用業務や転職活動は感情労働的な側面があるので、例えば、これこういう風に書いたら担当者はどう思うか、とあれこれ頭を悩ませるような点を和らげるようAIがクッションになってフォローするなどが良いのではないかと思っています。

AIがクッションとはどういうイメージなのですか?

本庄:形としてはいろいろあると思いますが、LLMが送った文章とわかれば目くじら立たないないだろうというのがイメージです。例えば転職エージェントには、候補者もある程度素直に要望を伝えたりしますよね。ただ直接企業の担当者に言えるかというとそうではない。例えば給料100万円上げたい、それ言ったらどうなるだろう?落とされるかな、など考えないといけないですし、言い方も、どのタイミングで言うか、なども戦略的に考えないといけない。自分が直接相手に言わずとも、LLMにまかせてそれを言うことができれば心理的負荷を減らせるというのはあるかと思います。

AIが転職エージェントの代わりとなることで、素直な要望がこじれなく伝わるということでしょうか?

鈴木:素直さというのはたしかにあります。ただ、全てを素直に伝えることが必ずしも良い結果を生むわけではありません。先ほどの年収の話は分かりやすいですが、転職における交渉はある種の駆け引きですので、素直な要望がそのまま伝わってしまうと不利になる可能性がある中で、いつでも味方をしてくれる信頼できるAIがいることで、そのAIにはなんでも言うことができ、複雑な交渉を代替してくれるようなものにできればと思っています。

なるほど!ありがとうございます。逆に本庄さんの思うデメリットは何でしょうか?

本庄:デメリットはメリットの裏返しで、今の新卒採用でもよく起こってることとしてスタープレイヤーに人が集まりやすくなる、良い企業が優秀な候補者からより注目を集めやすくなり、人気の企業や候補者にアプローチが集中してしまうところは、今のLLMでは直接的には解消してくれない部分だと思います。

これが加速されてしまうというリスクがありますが、もう一つ、よく言われることとしてバイアスの問題もあります。AIで今作られているものはもちろん全て過去の事例を学習データとして使っています。例えば選考における差別問題です。直接的に今いけないとされている差別を表面的には禁止できたとしても、例えば育休を取ったことがある人が低く評価される傾向になるなど、基本的には過去の人類の社会のフレームワークをそのまま持ってきてしまう傾向にあります。AIが理想的な社会を定義してくれるわけではないので、そこは注意しておかないといけないところだと思ってます。どういう判断をすべきかという点には、かなり強く人間の意思を入れないといけないと思っています。

鈴木:我々が目指したいところはバイアスを増幅させることではなく、転職や採用における不必要に重い部分をAIによって軽くし、人間がより本質的な部分に集中できるようにすることです。その結果、個人が選べる選択肢の幅を広げることができればと思っています。従来は限られた情報ややり取りのみから採用活動や転職活動をすることで、ステレオタイプやアンコンシャスバイアスが結果に与える影響が大きかったですが、AIが介在することで、採用時により多様な情報を用いたり、候補者としても多彩な選択肢を扱えるようになり、むしろバイアスを減らしていくことはできるのではないかと考えています。

もう少し過去の事例を学習データとして使っていることで発生するバイアスの問題について詳しく伺わせて下さい

本庄:AIが結果的に構造上そうなってるみたいなものを回避できないということですね。AIもアンコンシャスバイアスを持っているという話です。
例えば、男性女性だけならそれで差別することはないけど、結果的に女性が多く持っている属性や経歴(「育児休暇」など)に反応して何かの要素を低く評価するようなことは、まだ解決できていないようです。

LAPRASのAI採用の構想

工数削減によって選べる選択肢を広げるというお話もありましたが、改めてLAPRASのAIを使った採用に関する構想を伺わせてください。

鈴木:まずは、採用活動においてすでに顕在化している無駄な部分をAIを使って削減をしていくことが必要だと思っています。そして、次の段階としては、採用活動という形自体を見直し、AIが当たり前に使われることを前提とした新しい形に変えていくことが重要かと思っています。これは、AIを前提とすることで可能となる企業と候補者の理想の関係性を再定義していくことだと思っています。そのためには、最初に取り組む「無駄な部分の削減」のフェーズにおいても将来的な展開を見据えて改善を行っていく必要があると思っています。
当面は目に見えている無駄の削減に注力しますが、それだけでとどまらないようにすることが重要だと思っています。

本庄:採用業務は文章を大量に取り扱う仕事なので、まずはそこの対応を楽にしていくことはやっていきたいと思っています。その上でAIは採用のお手伝いをしてくれる、業務の手足となって動いてくれるという形を考えています。AIに判断してもらうよりも、最終的に決めるのは人間であるべきだと考えていますので。具体的なイメージとしては、求人票の文章のドラフトを起こして響く文章へ変換することを一緒に試行錯誤し助けてくれる、また候補者のレジュメも情報量が多いので、そういったところの理解や読み込みを助けるなど考えています。

LAPRASのAI採用を活用してほしい企業

それでは、最後にLAPRASで構想しているAI採用をどのような企業の方に使ってほしいなどありますか?

本庄:難しいですね。皆さんに使ってほしいのはもちろんですが、採用の苦しみ・辛みはどんな企業にも存在していて、苦しみ方は様々だと思います。敢えて上げるとすると、大きくない会社はネームバリューも人手も少ないですし、採用にフルコミットできる人材もいない。となるとエージェント頼みになってしまうので、そういう企業にはぜひ使ってほしいなと思います。もちろん、大きい企業さんも大歓迎です。

そうですよね、皆さんに使ってほしいですよね(笑)最後は難しい質問でしたが、ここまでありがとうございました!