生成AIの急速な進化と普及は、ITエンジニアの業務環境に大きな変化をもたらしています。
今回LAPRASでは、こうした変化の渦中にあるITエンジニアの実態を把握するため、LAPRASに登録するエンジニアを対象に「働き方」と「仕事の価値観」に関する意識調査を実施しました。
目次
全体サマリー:主な調査結果
今回の調査から、生成AIの台頭によって、ITエンジニアの働き方と価値観に大きな変化がもたらされていることが明らかになりました。
- 回答者の属性
過半数が経験10年以上のシニア層であり、自社プロダクト開発に関わるエンジニアが中心。
- 現在の役割・価値観
仕事で大切にしている価値観として「ユーザーへの価値提供」が最多。一方、実際の業務はまだ「実装」が中心。
- 意識の変革
生成AIの普及に伴い、エンジニアとしての将来の価値は「実装力」そのものから「プロダクト/事業貢献」へシフトすると予想している層が多い。
- 行動・アウトプット
自己研鑽のための社外アウトプット活動を行う層が多く、その学習意欲が社内の生産性向上にも還元されている。
- 生成AIと今後
約8割が生成AIを毎日利用。転職先選びでも「生成AIが活用できる環境」が重要な判断基準となっている。
調査概要
本調査の概要は以下の通りです。
- 調査名称:生成AI時代のITエンジニア「働き方」と「価値観」に関する意識調査
- 調査対象:LAPRAS登録エンジニア
- 調査方法:Webアンケート
- データ抽出日:2025年12月1日
- 有効回答数:264名
質問の概要
大きく以下4つの内容についての質問を行いました。
- (1)回答者の属性
- (2)現時点でのエンジニアの役割意識と価値観
- (3)生成AI時代における「強み」の意識変化
- (4)社内外での行動やアウトプット活動
- (5)生成AIの利用状況や今後の重要領域
(1)回答者の属性
職種


所属企業の業態


ITエンジニアとしての経験年数


(1)ポイント:回答者は「経験豊富な即戦力・シニア層」が中心
- 経験年数:過半数(51.14%)がエンジニア経験「10年以上」であり、「5年以上」を含めると約7割に達する。
- 所属企業の業態:自社プロダクト開発が約6割を占める。
これらのことから、LAPRASには採用市場におけるミドル〜シニアクラスの経験豊富なエンジニアが集まっており、自社サービスを技術力で成長させていくことに関心の高い層が中心であることがわかります。
(2)現時点でのエンジニアの役割意識と価値観
事業やプロダクトへの関わり方


大切にしている価値観


(2)ポイント:ユーザー価値を重視しつつ、現場での実装業務が中心
- 大切にしている価値観: ユーザーへの価値提供(34.09%)が最多。
- 現在の役割: 技術的な課題解決(37.88%)と実装・テスト(34.09%)が上位を占める。
価値観としては「ユーザーへの価値提供」を最優先する傾向にありますが、実際の業務役割としては、設計や実装、テストといった具体的な開発実務が依然として中心であることがわかります。
(3)生成AI時代における「強み」の意識変化
エンジニアとして強みを感じる領域


エンジニアにとって「より重要になっていく」領域


(3)ポイント:実装から事業貢献へ。役割意識の劇的変化
- 現在の強み: 実装・開発推進力(43.18%)やテクニカルリード(31.06%)の割合が多い。
- 今後重要になる領域: プロダクト/事業貢献(36.36%)が最も多く、実装・開発推進力(17.80%)の割合は半分以下に減少する。
これらの対比から、エンジニアの役割意識に大きな変化が生じていることが示されました。
多くのエンジニアが、生成AIの進化に伴い「コードを書いて実装する」というスキルそのものの価値が相対的に低下していくと予想しています。代わりに重要視されているのが、技術を活用し「いかに事業やプロダクトに貢献するか」という価値創出の領域です。多くのエンジニアは、そうした領域こそが「これからの時代に求められる本質的な役割である」と強く認識し、軸足を移そうとしている姿勢が浮き彫りになりました。
(4)社内外での行動やアウトプット活動
「社外」でのアウトプット活動


アウトプット活動を行う動機


社内で意識的に行っていること


(4)ポイント:自己研鑽が生む「自走力」と組織貢献
- 社外アウトプット活動: 約8割が過去1年間に社外へのアウトプット活動を実施。
- 活動の動機: 過半数が自己研鑽(51.52%)と回答し、自己ブランディング(12.12%)を大きく上回る。
- 社内での行動: ツールや仕組みの改善(55.30%)やドキュメントによる知識蓄積(54.92%)に積極的な傾向が見られる。
この結果から、LAPRAS登録エンジニアには、転職活動のためだけではなく、純粋な知的好奇心で周囲に貢献できる優秀な潜在層が多く含まれていることがわかります。彼らは社外で得た知見を社内に還元し、自律的に組織の生産性を高める「自走力」を備えた人材であると言えます。
(5)生成AIの利用状況や今後の重要領域について
生成AIの利用頻度


利用している生成AIツール


生成AIの利用目的


転職先選びでAI活用度合いを重視するか


(5)ポイント:AIを前提とした「選ばれる環境づくり」が採用のカギ
- 生成AIの利用頻度: 回答者の79.17%が、開発業務で生成AIをほぼ毎日利用していると回答。
- 転職先選びでの重視度: 「社内業務やプロダクト開発でのAI活用」について、非常に重視する(47.73%)、ある程度重視する(39.02%)を合わせると、9割近くが重視すると回答。
エンジニアにとってAI活用はもはや特別なスキルではなく、日常的な開発の前提条件となっています。 採用する企業側の視点に立つと、求人票で具体的なツール名や権限範囲を明記する「開発環境の透明化」や、AI活用を前提とした評価軸へのアップデートなど、時代の変化に即した「選ばれる環境づくり」が急務となっています。
まとめ:変化するエンジニアの価値観と、求められる採用戦略
今回の調査で、LAPRASに登録しているエンジニアの方々が、生成AIによる変化を前向きに捉え、自身の役割を「実装者」から「事業価値の創出者」へアップデートしようとする姿が明らかになりました。
企業には、この変化に応じた採用戦略が求められます。具体的には、開発環境の透明化や、技術力に加え「事業への貢献度」を評価する視点を持つことなどが考えられます。
LAPRASでは、今後も変化するエンジニア市場の実態を調査・発信してまいります。次回のレポートにもご期待ください。



