ゼロから設計した“理想のエンジニア組織”。KDDIアジャイル開発センターが分社化で体現した、大企業×自律型チームの未来

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「この会社で働きたい」と思ってもらえるかどうか。それが、いま企業の成長を左右する時代になっている。

特にエンジニア採用は、単なる人員補充ではない。事業を前に進めるための“仲間”を迎え入れる営みであり、カルチャーをともにつくる基盤となる。スキルの高さだけでなく、その人がどんな価値観で働くのか。どんなチームを好み、何にやりがいを感じるのか。企業側がその人に「何を託したいのか」。こうした相互の理解と信頼がなければ、本当の意味での採用成功とは言えないだろう。

KDDIアジャイル開発センターは、そんな“人との向き合い方”に真剣な会社だ。母体であるKDDIから分社化し、アジャイル開発を軸にDXを推進する技術組織として、エンジニアが活躍できる環境をゼロから設計してきた。その中心にあったのが、採用という営みへの誠実な向き合いだった。

「人事は候補者の味方でありたい」
「応募はゴールではなく、対話のスタート」

そう語るKAGの人事担当者たちの姿勢には、KAGの採用観に通底する信念が垣間見える。今回は、KAGの採用に対する考え方、文化のつくり方、そしてツール活用の実態まで──思想と実践の両輪をじっくり紐解いていく。

≪プロフィール≫

KDDIアジャイル開発センター株式会社(KAG)
KDDIアジャイル開発センター(以下KAG)は、KDDIグループの一員として、アジャイル開発とサービスデザインの知見を活かし、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する専門組織である。2022年に設立され、KDDI本体の開発組織を母体として発足した。ユーザー視点での価値創出を重視し、短いサイクルでの継続的な改善や仮説検証を実践することで、迅速かつ柔軟な開発を実現している。

リモートワークや全国各地のサテライト拠点を活用し、多様な人材が地理的な制約なく活躍できる体制を整備。アジャイルな開発文化と自律的な組織運営を軸に、顧客企業や社会に対して本質的な価値を提供し続けることを使命としている。

CHRO
土橋 孝充さん(写真右):
KDDI株式会社に新卒入社後、情報システム部門やサービス開発部門でのシステム開発業務を経て、ソリューション領域・コンシューマ領域の開発組織にてエンジニアリングマネージャーを歴任。アジャイル開発の黎明期から組織づくりをリードしている。2022年、KDDIアジャイル開発センター株式会社の立ち上げと同時に人事責任者として参画。採用戦略、人事制度設計、組織開発、研修設計など、人と組織に関わる仕組みをゼロから構築。「採用は信頼づくりの出発点」と語り、選考プロセス全体を“対話を通じた関係構築の場”として設計。エンジニアリングマネージャ出身の経験を活かし、現場に寄り添う採用の在り方を模索し続けている。

リクルーティングスペシャリスト
渡邊 幸一郎さん(写真左):
新卒からHR領域に携わり、採用広告営業・採用コンサルティング・事業会社での人事立ち上げなど多様な立場で経験を積む。2024年、KDDIアジャイル開発センター株式会社に入社。リクルーティングスペシャリストとして採用業務全般を担いながら、人事組織の中核を担っている。組織の生産性と柔軟性を高める基盤づくりを、人事の立場から支えている。


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KDDIからの分社化の理由と、組織設計の哲学

KDDIアジャイル開発センター(KAG)が誕生したのは、2022年。KDDI本体の開発部署として長年積み上げてきた知見をもとに、より俊敏で柔軟な開発体制を実現するために設立された。

背景にあったのは、KDDIグループ全体が掲げた「サテライトグロース戦略」だ。これは、グループ内に俊敏な意思決定と機動性を持った開発組織を持つことで、社会や顧客のニーズに素早く対応し、デジタル変革を加速させるというビジョン。その中核として期待されたのが、KAGだった。

― まさに「グループの成長を牽引する開発機能」として、KAGが生まれたんですね。

土橋:そうですね。ただ、私たちは「俊敏な組織」をつくるだけでは足りないと考えていました。もう一歩踏み込んで、「エンジニアが本当に活躍できる環境を、自分たちで設計する」ことを大切にしたかったんです。

― KDDI本体と異なる環境をつくる必要があった、と。

土橋:はい。KDDIは様々な事業展開をしている企業であり、定義されている職種も非常に多岐に渡ります。KDDI版ジョブ型人事制度という新たな人事制度も策定し、社員1人1人のプロフェッショナル性を高めていくための人材マネジメントを進めています。

一方でエンジニア採用市場は特に競争激化が加速しており、地方居住も可能とするフルリモートワークの提供や、エンジニアの役割を細分化した等級制度など、更に一歩踏み込んだ「エンジニアのための制度づくり」の必要性も感じていました。

― エンジニアという職能に最適化された制度設計が必要だったんですね。

土橋:そこでKAGでは、会社の設立と同時に、人事制度も一からつくり直しました。職種特化型の制度設計、フルリモートの前提、副業の推奨、心理的安全性を重視した評価制度など──すべて「エンジニアが活躍するにはどうすればよいか」という視点から設計しています。

― 人に制度を合わせるのではなく、職能に制度を合わせるアプローチですね。

土橋:そうです。制度を先に決めて人を当てはめるのではなく、「エンジニアの最善の働き方とは何か」を出発点にして、そこから逆算して制度を整えてきました。人事の仕組みも、すべてその考えの延長線上にあるんです。

― その考え方は、採用活動の中にも自然と表れていそうですね。

土橋:はい。制度や枠組みに人を当てはめるのではなく、一人ひとりの志向や価値観と対話しながら、最適な形を共に設計していく。私たちの採用は、そういう姿勢で行っています。

人事は候補者の“味方”であり続ける

KDDIアジャイル開発センター(KAG)では、すべての選考フェーズに人事が同席し、候補者と対話を重ねていく。その姿勢は、2022年の分社化・組織立ち上げ期から一貫している。

― KAGの採用では、どの選考フェーズにも人事が同席すると伺いました。

土橋:はい。この方針は、分社化して組織を立ち上げた初期から一貫して続けています。最初のカジュアル面談から、最終面接まで──同じ人事担当がずっと並走するんです。これは、候補者の不安をできるだけ軽くしたいという思いと、私たち人事が候補者を深く理解するためでもあります。

― 面接のすべてに同じ人事が関わるのは、かなり珍しい運用ですね。

渡邊:たしかに他社ではあまり見かけないかもしれませんね。たとえば最終面接には、代表やVPoEが参加しますが、私はそこで質問はしないようにしているんです。

― それはどうしてですか?

渡邊:あまりにも全員が質問攻めにすると、候補者の緊張が高まってしまうんですよね。なので私は、“味方”の立場としてそっと候補者の隣にいるようなイメージでいます。空気を和らげる存在になれたら、と思っていて。

― 実際に、入社後にそういった安心感を語ってくれる方もいるのでしょうか?

土橋:「面接のときにいてくれた人事担当の存在が安心できて、入社を決めた」という声は、頂いたことはあります。

― KAGがどれだけ「信頼」を大事にしているかの表れかもしれませんね。

土橋:そうですね。私たちは採用活動を、単なる人員補充ではなく「長期的な信頼関係のはじまり」だと考えています。だからこそ、人事は常に“味方”として候補者に向き合い続けたいと思っているんです。

採用の可否よりも、どんな出会いを創造できるか

KAGの採用活動を見ていると、「採るか、採らないか」という単純な判断軸では語れないことがよくわかる。

彼らが重視しているのは、「この出会いが、どんな意味を持つか」という視点だ。採用とは、単なる選抜ではなく、対話と共感の積み重ね。そのためにKAGでは、選考の設計そのものに細やかな配慮が込められている。

― KAGの採用活動では、面接の直前にブリーフィング時間を設けているそうですね。

渡邊:あらためて別日にミーティングを設定するのではなく、面接の直前にメンバーが集まって、候補者の情報を共有するようにしています。たとえば、前回の面談で見えた強みや懸念点をすり合わせて、面接の場が“初対面”にならないようにするんです。

― 単なる評価の場ではなく、前回からつづく「対話」の延長線上にあるわけですね。

渡邊:カジュアル面談後には候補者アンケートを実施しています。KAGのどこに魅力を感じてくれたのか、どこに不安を持ったのかを可視化して、次の採用活動に活かせるようにしています。返信率や通過率といった定量的な指標も大切ではありますが、それ以上に「どんな人がどんな反応をしてくれたのか」を大事にしています。

― スカウトに対しても、強いこだわりがあると聞いています。

渡邊:はい。「この人のどこに惹かれたのか」を明確にしてからスカウトを送るようにしています。ただ“声をかける”のではなく、「ちゃんと経験を見た」「ちゃんと知った」うえで声をかけたい。そうじゃないと、仮に選考が進んだとしても、お互いにとって意味のある出会いにはなりにくいですから。

たとえ採用に至らなかったとしても、「いい会社だったな」と感じてもらえること。それが、私たちが目指している採用のかたちです。

KAGとLAPRAS。採用への思想と親和性

候補者との出会い方に強いこだわりを持つKAGにとって、LAPRASは単なる「スカウトツール」ではない。その思想や運用の柔軟さが、KAGの採用スタイルと高い親和性を持っていた。

― LAPRASを使おうと思ったきっかけは、どのような点だったのでしょうか?

渡邊:最初に惹かれたのは、情報発信との相性の良さです。GitHubやQiita、X(旧Twitter)など、技術的なアウトプットが活発な人と自然につながれる点が魅力でしたね。なぜなら、KAGはエンジニアは勿論ですが、職種に関係なく技術や経験のアウトプットや様々なコミュニティへの参加が活発なカルチャーがあるからです。

― エンジニアのアウトプットを通して、人物像まで見えてくると。

渡邊:そうなんです。KAGでは「ちゃんと見てスカウトを送る」という姿勢を大切にしているので、まさにフィットするツールでした。

土橋:LAPRASのポートフォリオには、文章だけでは伝わらない情報がにじみ出てるんですよね。面談前からその人の思考や技術の深さを立体的に把握できるので、対話の質が上がりますし、選考の焦点も自然と絞れていきます。

― 実際に成果としても手応えを感じていますか?

土橋:はい。導入当初はスカウトの反応率や適合度に少し苦戦しましたが、ターゲットの絞り込みや文面のブラッシュアップ、LAPRAS側の機能改善もあって、ここ数カ月は「月に1名」のペースで採用に結びついています。

― それは着実な成果ですね。ほかに印象的だったことはありますか?

渡邊:LAPRAS経由でつながった候補者について、メンバーの誰かが「名前見たことある!」って言うことがすごく多いんです。技術イベントやSNSなどで活動を見かけていたりして、Slackでも『この人知ってるよ』って話題になることもあります。

― すでにKAGの文化圏にいるような人材と自然につながれると。

渡邊:まさにそうですね。LAPRASは技術発信に積極的な方と出会えるので、KAGの発信文化との親和性がとても高いと感じています。

多様な人材と共に歩んでいく為に

KAGではいま、採用の対象を少しずつ広げ始めている。これまで中心だったエンジニア職に加え、現在は「POリード」と呼ばれるポジションや、コンサルティングセールスといった非エンジニア職にも力を入れている。

― 設立からわずか数年で、組織は一気に拡大しましたよね。

土橋:はい。KAGは出向メンバーを含めて、立ち上げ当初は80人規模でしたが、いまでは230名を超える組織になっています。

― それだけ急速に拡大すると、文化面でのズレや揺らぎも出やすくなりそうですね。

土橋:おっしゃる通りです。だからこそ、私たちは採用のときに「カルチャーフィット」を非常に重視しています。スキルだけでなく、KAGの価値観や働き方に共感してもらえるかどうかを丁寧に見ています。

― KAGではリモートワークや出社に関する制限などは設けていないと聞いています。

土橋: はい、そうなんです。リモートワークか出社か、どちらかを前提としたルールはなく、「どこで働くか」は本人の判断に任せています。地方に住んでいるメンバーもいますし、育児や介護といった事情がある人でも、安心して働けるような環境を大切にしています。

もちろんオフィスもあるので、チームで集まりたいときや集中して作業したいときには、自由に使ってもらっています。「出社する/しない」を誰かに強制されることはなく、自分に合ったスタイルを選べるのが、KAGらしい働き方だと思っています。

― 対面の価値もありつつ、それに縛られない柔軟さがKAGらしさなんですね。

土橋:そうですね。これからの時代、どこに住んでいても、どんなライフステージでも、自分の専門性を活かして働けることが、企業としての魅力になると思っています。エンジニアリングという強みを活かして、場所に縛られない働き方を“当たり前”にしていく。それが、私たちがこれからも守りたい挑戦のかたちです。

候補者と企業が、採用活動を通して信頼を築いていく

KAGが目指す採用は、「信頼関係の構築」から始まる。企業の“最初の顔”として候補者に向き合い、選考の最後まで寄り添う。そんな存在である人事が、現場とも深い信頼関係を築くことで、採用活動は単なる選考ではなく、未来をともにつくる対話になる。その思想は、組織の立ち上げ期から今に至るまで、KAGの採用を支え続けている。

― 人事という役割に、どのような想いを持って取り組まれているのでしょうか。

渡邊:転職って、すごく孤独な決断だと思うんです。誰かに相談できるわけでもなく、自分ひとりで考えて、答えを出さなきゃいけない。だからこそ、人事は候補者の“味方”であるべきだと思っていて。その想いはずっと変わっていません。

― KAGでは、その想いが選考設計にも深く反映されていますね。

渡邊:はい。人事は企業の“最初の顔”であり、“最後の支え”でもある。候補者の不安に寄り添って、信頼できる対話相手になれるように心がけています。

― 一方で、採用は事業成長の要でもあります。そのバランスはどう考えていますか?

渡邊:私たちは「人事=調整役」ではなく、事業部門と一緒に採用をつくっていく立場だと思っています。たとえば、私が紹介する候補者なら安心して任せられる、と思ってもらえる関係性を、現場と築いていきたいと思っています。

土橋:エンジニアリングマネージャとして現場にいた経験も大きいと思っています。開発のリアルを理解した上で、組織や採用の仕組みを考えられる。過去の経験があるからこそ、今は人事として、KAGの組織づくりに真正面から向き合えていると感じます。KAGでは制度も仕組みも“与えられるもの”ではなく、現場とともにつくっていくものだと思います。

― 組織としての立ち位置については、どのように感じていますか?

KAGは大手通信キャリアであるKDDIをバックボーンとした経営基盤と、スタートアップ的な自律性の高さ、どちらも手にできる企業だと思っています。正直、エンジニアリングマネージャのキャリアから人事に転じるのは不安もありました。ただ、長年システム開発の現場で見てきた”エンジニアのリアル”を人事に反映させることが日本一のアジャイル組織の実現のために必要だと感じましたし、私は、それに本気で取り組みたいと思いました。

KAGでは、現場と人事が立場で対話しながら、組織の未来をともに設計できる。そんな環境でこそ、自分のキャリアや志向性を活かした“本気の挑戦”ができると思っています。技術にも組織にも真剣に向き合えるこの場所で、これからも新しい価値を生み出していきたいですね。

― なるほど。本日はありがとうございました!


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