ITエンジニア採用で重要なプロセスとなるカジュアル面談ですが、そこで生じがちな課題のひとつに「選考基準と候補者のミスマッチ」があります。
「カジュアル面談は定常的に実施できているが、選考基準を満たす候補者の割合が低く、なかなか本選考に至らない」
とお悩みの採用担当の方も多いのではないでしょうか。
解決の第一歩は、そうしたミスマッチがスキル要件・希望条件・カルチャーのどこで起きているのかを特定することです。この記事では、ミスマッチを生じさせる3つの原因をそれぞれ深掘りし、具体的な対策について解説していきます!
目次
「選考基準と候補者のミスマッチ」が生じる原因は?
選考基準と候補者のミスマッチが生じる原因は、主に以下の3つに分類できます。
- スキル要件のミスマッチ
候補者のスキルや経験が、求人の採用要件を満たしていない。 - 希望条件のミスマッチ
候補者のキャリアプランや待遇への希望と、企業の提示条件が合わない。 - カルチャーのミスマッチ
自社の企業文化や価値観が、候補者と十分にマッチしない。
原因が上記のいずれであるかを見極め、それぞれに応じた対策を講じる必要があります。
「半数以上」がミスマッチの場合は対策が必要
一つの目安となるのは、カジュアル面談を経て選考基準を満たす候補者の割合が「半数に満たない」場合です。こうした場合は、以下のような対策に取り組むことをお勧めします。
【原因①】「スキル要件」のミスマッチ対策
まず、スキル要件のミスマッチ対策を考えてみましょう。ここで言うスキル要件のミスマッチとは、「求めるレベルに満たない方」からの反応は取れているが、「本当に求めるレベルの方」からの反応が取れていないという状態を指します。
このような状況では、スカウトプロセスの初期段階(採用要件、求人作成、ターゲティング、スカウト文面)に課題がある可能性が高いと考えられます。
対策としては、以下のどちらかの方針を決める必要があります。
①アプローチ方法を整え、訴求点を磨く
②採用要件・目線を少し下げる
②の採用要件見直しについては、社内的な合意形成が必要になる場合もあるため、ここでは即座に取り組める①の具体的な対策について解説します。
求人作成の見直し
求人票の内容が、ターゲットにとって魅力的かつ適切かを見直します。
- 提示年収の確認:求めるターゲット層の市場価値に対して、提示年収が低すぎないかを確認します。
- 要件の背景を明記:単に「求めるスキルや経験」を羅列するだけでなく、「なぜそれが必要なのか」という根拠や背景を詳細に記述し、納得感を高めます。
シニア層には仕事の面白さ・環境の魅力を提示
特にシニア・ハイレイヤー層に向けては、そのポジションの「直近の課題」や「注力テーマ」を具体的に書き、仕事の面白さや挑戦的な環境を提示して興味を引くことが重要です。そうした層の方々は 「転職後、新しい環境にうまく適合できるか」「その後、自分のキャリアが開けていくのか」に高い関心を持っていることが多いからです。
エンジニア目線から見て魅力的な求人票を作るための注意点については、以下の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
ターゲティングの見直し
設定した採用要件に対して、アプローチしている母集団が広すぎないかを見直します。ターゲットを広げすぎると、本来なら採用要件に当てはまらない人にもメッセージが届いてしまう可能性が高まり、本当に欲しい層に刺さらないという問題が生じる恐れもあります。ターゲットを絞り込むことで、より精度の高いマッチングが期待できます。
スカウト文面の見直し
候補者に「まず自社に興味を持ってもらう」ために、以下の2点を意識して文面を作成しましょう。
- スカウトの根拠を提示する:なぜその候補者をスカウトしたのか、ポジションの直近の課題や注力テーマと絡めて明確に説明します。
- 志向性に寄り添う:候補者のプロフィールから「志向性」を汲み取り、自社であればそれをどのように活かせるか、具体的なエピソードなどを交えて伝えます。
こうした視点でスカウト文を見直すことで、候補者にとって「なぜ自身が求められているのか」が明確になり、結果としてミスマッチを減らすことにつながります。
【原因②】「希望条件」のミスマッチ対策
次に、候補者の希望(キャリアプラン、待遇、働き方)と企業の提示条件が合わない「希望要件」のミスマッチについてです。この場合、大きく分けて以下の2つのパターンが考えられます。
①優秀な人材だが、希望に添えない場合
②それ以外の場合
②についてはさまざまな原因が考えられるため、ここでは、特に「①優秀な人材だが、希望に添えない場合」の対策に絞って解説します。優秀なエンジニアは市場でも希少なため、せっかくの出会いを無駄にしないようにしましょう。
すぐに諦めず、中長期的な関係構築を模索する
「条件が合わない」とすぐに諦めてしまうのではなく、将来の可能性を含めて中長期的な視点で関係構築を模索することが重要です。
- 雇用形態
ハイレイヤー層は現職でも重要なポジションにあり、即時の転職が難しいケースも少なくありません。一方で、「副業なら稼働できる」という方もいるため、まずは副業として働いてもらい、その中で関係性を構築していく方法もあります。お互いの理解を深めながら、中長期的に正社員化を目指すアプローチも有効です。
- 希望年収
提示した待遇が、市場の相場や競合他社と比較して妥当な水準にあるか、改めて確認してみましょう。もし見直しの余地があるなら、再考の機会を作ることも重要です。
- 希望ポジション(働き方)
現時点ではポストがなくても、将来的に候補者が求めるポジションや働き方を用意できる可能性があるならば、その旨を明確に伝えましょう。 「将来的に条件が合う可能性がある」と伝えつつ、それまで関係性を維持できるような提案をしましょう。
優秀な候補者との繋がりを「一度提案した条件で合わない」だけで終わらせてしまうのは、貴重な機会を無駄にしてしまうことになります。将来的に良い条件を提示できる可能性を伝えたうえで中長期的に関係を維持し、タイミングが合うときを待つのもひとつの方法です。
候補者との中長期的な関係構築の方法については、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
【原因③】「カルチャー」のミスマッチ対策
最後に、企業文化や価値観との適合性が低い「カルチャー」のミスマッチについてです。
アプローチ前の過度な絞り込みに注意
前提として、スカウト媒体上のプロフィールや職歴情報だけでは、候補者の価値観やカルチャーへの適合性を正確に把握することは困難です。そのため、アプローチ対象を選定する段階でカルチャーマッチにこだわりすぎると、対象となる人材の範囲を狭めすぎてしまう恐れがあります。スカウト段階では、カルチャーフィットの判断を厳しくしすぎないことが重要です。
企業側から「魅力的な環境や価値観」を積極的に発信する
カルチャーのミスマッチを減らすためには、「候補者を見極める」ことだけに注力するのではなく、「幅広い候補者に、自社のカルチャーを知ってもらう」というスタンスも必要になります。
- プロフィールだけで判断しない:候補者側の情報だけで判断しようとせず、企業側からの積極的な情報提供も重視します。
- 具体的な情報発信:求人情報やエンジニア向け広報(テックブログなど)を通じて、自社の魅力的な環境や価値観を具体的に伝えます。
このように、カルチャーマッチを重視する候補者にとって、自社が「魅力的な職場である」と認識されるような情報発信を心がけましょう。自社のカルチャーを「魅力的だ」「自分と合いそうだ」と感じてくれる候補者を集める、という意識を持つことが大切です。
ミスマッチを防ぎ、カジュアル面談の精度を高めよう
本記事では、選考基準と候補者のミスマッチを以下3つの原因に整理してそれぞれの対策をご紹介しました。
- スキル要件のミスマッチ:求人に募集背景や直近の課題を明記し、候補者の納得感と興味を引き出す。
- 希望条件のミスマッチ:優秀層には副業での稼働や中長期的な関係維持を提案し、条件面も柔軟に検討する。
- カルチャーのミスマッチ:初期段階での過度な絞り込みは避け、積極的な発信で「自分に合いそうだ」と感じてもらう。
これらを分析・実施することでミスマッチを最小限に抑え、本採用の成功率を高めていきましょう。 特に「選ぶ」目線ではなく、候補者から「選ばれる」ための伝え方を工夫することが、ミスマッチの予防とアトラクトの向上に繋がります。



