AI技術の進化が加速する昨今、様々な企業がAIを積極的に活用し、事業戦略に組み込みながら「自社の強み」に変えていこうと試みています。
そのためには「AIを用いて事業成長を牽引できるITエンジニア」をいかに採用するかが、これまで以上に重要なテーマとなっています。
こうした中、株式会社Speeeは、AIで産業構造そのものを変革する「産業AX」に取り組んでいます。AI時代を見据えた事業戦略を牽引するエンジニアから「選ばれる企業」になるために、どのような採用戦略を掲げて取り組んでいるのか、事業部長の上野様と開発組織を率いる佐藤様のお二人に詳しく伺いました。
本記事が、読者の皆様が自社の採用戦略や組織づくりを考える上でのヒントとなれば幸いです。
AI時代に高まる開発以外のスキルの重要性
「コードを書く」ことから「事業貢献」へ。マネジメント・リードなど、「作る以外の役割」を果たせるエンジニアのニーズが、ますます高まりを見せています。
事業成長を牽引するこれらのスキル、LAPRASなら見極められます!
「AI時代に求められるエンジニア」を見つける方法目次
《インタビュイー紹介》
上野 健人(うえの けんと)さん:デジタルトランスフォーメーション事業本部 / リフォームDX事業部長 兼 ウェルネス事業部長

京都大学工学部を卒業。
2016年Speeeに新卒入社。
マーケティングや営業企画、事業企画など領域を広げ、リフォーム事業にて経営企画を経験した後、2018年7月にヌリカエ事業(現リフォームDX事業)の事業部長に就任。
さらに介護領域の新規事業立ち上げから携わり、2024年にウェルネス事業部の事業部長を歴任。リアル産業のDXを推進するとともに、現在は200名以上のメンバーのマネジメントも担う。
佐藤 亨(さとう とおる)さん:デジタルトランスフォーメーション事業本部 / リードエンジニア

一橋大学社会学部卒業。
SIerやスタートアップを経て2020年頃からSpeeeにジョイン。
不動産査定サイト「イエウール」の開発などに従事し、2024年から「ヌリカエ」をはじめとしたリフォームDX領域の開発組織立ち上げを担当。3つの開発チームの立ち上げの傍ら、AIによる生産性の圧倒的向上を目指して日々奮闘中。
お二人の役割とSpeee社について
――まずはお二人の現在の役割について教えて下さい。
上野さん: はい、私、上野はリフォームDX事業部の事業部長を務めています。
Speeeの事業セグメントは、「DXコンサルティング」「レガシー産業DX」「金融DX」の3つに分かれていますが、私の担当は「レガシー産業DX」の中のリフォーム領域です。
――リフォームDX事業部では、具体的にどのようなことに取り組んでおられるのでしょうか?
上野さん: 事業部内では、「ヌリカエ(外壁塗装事業者紹介サービス)」や「リフォスム(水回りリフォーム事業者紹介サービス)」、またリフォーム会社様向けのSaaSである「Budii」といった複数のサービスを運営しています。私は、それら事業部全体の統括を担当しています。
――ありがとうございます。では続いて佐藤さん、お願いいたします。
佐藤さん: 佐藤です。私は、上野が管掌するリフォームDX事業部の開発部長を務めています。
自社プロダクトで中小企業のDXを支える
――事業セグメントのお話がありましたが、改めて、Speeeさんの事業の現在地について教えてただけますでしょうか?
上野さん: はい。我々は自社を「BizDev(事業開発)の会社」と定義しています。社会に潜在する課題を抽出し、企業や産業を変革する事業を開発していく、というのが我々のスタンスです。
創業は、当時の急成長市場であったデジタルマーケティング領域に参入しました。大手企業様(エンタープライズ)も含め多くの企業がデジタルマーケティングへのシフトを迫られており、Speeeは高い分析力と技術力を強みにその変革をコンサルティングでご支援する事業が、我々の一つの柱でした。
――なるほど、創業期はデジタルマーケティングのコンサルティングがメインだったのですね。
上野さん: はい。ただ、我々はあくまで「BizDev(事業開発)の会社」ですので、デジタルマーケティングだけに留まらず、次に取り組むべき大きなテーマとして「DX」に着目しました。
特に、私たちが今フォーカスしているリフォームのような「レガシー産業」は、市場が非常に大きいにも関わらず、変革が進んでいない領域です。ここはデジタルを前提としたトランスフォーム(変革)が強く求められており、現在の日本において最も重要な社会課題の一つだと捉えています。
――マーケティングコンサルティングと、レガシー産業のDXでは、アプローチも大きく異なりそうですね。
上野さん: まさにその通りです。マーケティングコンサルティングは大手企業様を多く支援させていただいてますがレガシー産業の中心となるのは中小規模の事業者様です。
そういった事業者の皆様に「コンサルティング」を提供しようとしても、現実的にはコスト面などで難しい場合も少なくありません。そこで我々はアプローチを変えることにしました。
――どのような方法を取ったのでしょうか。
上野さん: はい。我々が持つマーケティングの強みを活かしてまず見込み顧客(エンドユーザー)を集客し、その顧客を成果報酬型で事業者様にご紹介するという支援からレガシー産業DX事業がスタートしました。
祖業でもあるマーケティングは我々の強みではありますが、それはあくまでBizDevのための手段です。DXによる中小企業支援という日本の大きな社会課題を解決するために、現在は様々な自社プロダクトの開発・運営に注力しています。
今では、このレガシー産業DX事業がSpeee全体の売上の約70%を占めています。マーケティング支援から始まった会社が、今や自社プロダクトで産業変革に挑む会社へと軸足を移している、とご理解ください。
AIを前提とした産業全体の変革を目指す
――Speeeさんは近年「DX」からさらに一歩進んだ「AX(AI Transformation)」という言葉を掲げられています。この「AX」とは、どのような概念なのでしょうか?
上野さん: 先に、基本的な考え方が共通する「産業DX」から説明したいと思います。
我々はDXにレベルを定義しており、例えば「DX Level1」は、個社単位で、部分的な業務をデジタルに書き換える、といったものです。
しかし、私たちがやりたいのは、そうした部分改善ではありません。目指しているのは、ある産業全体のユーザー体験や、企業の経済活動のすべてをデジタル前提で書き換えていく、つまり「産業全体をトランスフォームする」ことです。そして「産業AX」とは、その変革の前提となる「デジタル」の部分を、現代のAI時代に合わせて「AI活用」に置き換えて産業全体を変革していく、という概念です。
そしてこのデジタルを今AIに変えて、AXとしています。これまでのデジタル技術だけでは到達できなかった変革を、AIなら出来ると確信しています。
――多くの企業が「AIをどう業務に取り入れるか」を考えている中で、Speeeさんは「AIを前提とした産業のスタンダード」そのものを作り出そうとしている、ということですね。
上野さん: はい、そのとおりです。
集客だけでは解決できない業界独自の課題とは
――なぜSpeeeさんは、そこまで踏み込んだ「産業AX」に注力するようになったのでしょうか? きっかけがあれば教えてください。
上野さん: はい。そのためにはまず「なぜ我々がDXに注力するようになったか」からお話しします。
我々は「ヌリカエ」や「リフォスム」のようなリフォーム施主・施工業者のマッチングプラットフォーム事業からスタートしましたが、その中で「集客の支援だけでは、業界を変えられない」という事実に直面したのが大きなきっかけです。
――具体的には、どのような気づきがあったのでしょうか。
上野さん: 2つの視点からお話しします。 まず、エンドユーザー(リフォームの施主)の視点です。リフォームは多くの方にとって人生の中で何度も経験するものではなく、情報が得づらい領域なので我々のサービスで良い施工業者を探せること自体には価値があります。
しかし問題は、業者とマッチングした後の体験にありました。現地調査に足を運び、やり取りは電話、契約書は紙で郵送……といった具合に、施工業者さんと出会った後の工程がまったくデジタル化されていなかったのです。日々の生活が忙しい中で、こうした煩雑な手続きに悩まされ、結果として施工自体をやめてしまうお客様もいらっしゃいました。
――マッチングが成功しても、その先の体験がボトルネックになっていたのですね。
上野さん: ですから出会う場を創出するだけでなく、施工が完了するまでの体験すべてをデジタルで滑らかにしないと、エンドユーザーへの本当の価値提供にはならない、と痛感しました。
もう一つが、企業(施工業者)側の視点です。もちろん、チラシやオフライン店舗での集客に限界を感じ、デジタルマーケティングに取り組みたいというニーズはあります。 しかし、それ以上に日本社会の大きな問題として「職人不足・人手不足」が深刻化しています。この課題に立ち向かうには、集客のお手伝いだけではなく、企業側の生産性を上げ、経営全体を支援していく必要がありました。
これら2つの視点から、「エンドユーザーの体験向上」と「企業の経営支援」の両方をやらねばならない。これが、我々が「産業DX」に踏み出した理由です。
「中小企業ならでは」の課題をAIで解決したい
――なるほど。「産業DX」に取り組んだ背景については分かりました。では、そこからなぜ「AX」へと舵を切ったのでしょうか?
上野さん: 一般的なDXは、SaaSのようなツールを導入して「業務の標準化」を進めることが多いですよね。しかし、そこには企業さんに「SaaSを使いこなしてもらう」ことが前提としてあります。
我々が向き合うレガシー産業は、中小企業の事業者様が中心です。彼らが必ずしもSaaSを使いきれない、という現実的な課題がありました。
――確かに、中小企業が新しいツールを定着させるのはハードルが高そうですね。
上野さん: そこで我々がとっているアプローチは、企業さんに「やらせる」のではなく、我々がAIで「自律的に駆動できる」プロセスに丸ごと置き換えていくというものです。
企業さんは、AIが処理した業務に対して「承認する」だけ。それによって生まれたリソースを、AIでは対応できない「施工」といった本来のコア業務に集中していただく。
この「AIによる自律駆動」と「人間(職人)のコア業務への集中」という分業こそが、中小企業の多いレガシー産業の変革を本当に加速させると考え、我々はAX推進へ本格的に取り組んでいくこととなったわけです。
AI技術を積極的に自社プロダクトへ活用
――「産業AX」を実現するため、具体的にどのようなプロジェクトに取り組まれているのでしょうか? 差し支えない範囲で教えてください。
上野さん: はい。現在、AXプロジェクトとしては10個ほどが立ち上がっています。すべてがアクティブなわけではありませんが、具体的な例をいくつかご紹介します。
参考:Speee、リフォーム・不動産DX領域においてAI時代の新コンセプト『産業AX(AIトランスフォーメーション)』を策定し、住まいの情報インフラを革新する10の挑戦を始動。
まず、我々が「営業領域のAX」と呼んでいる領域についてです。「ヌリカエ」は、リフォームに関する消費者体験がないユーザーを支援するため、専門のアドバイザーが電話で意思決定を支援する機能が事業価値の核となっています。
この「人が介在する営業業務」を、現在は架電で行っているのですが、それをAIで根本から置き換えていくプロジェクトを進めています。
――事業のコアである営業オペレーションそのものにAIを導入されているのですね。
上野さん: はい。短期的には、営業メンバーとユーザーの会話録音データをAIで自動的に文字起こし・要約し、企業様へお送りする情報として加工・格納することで業務効率化を図っています。
さらに中期的には、この半年ほどでAIが架電業務の一部を担う状態を作ろうと思ってます。
――企業向けのプロダクトでの取り組みはいかがでしょうか?
上野さん: はい、リフォーム会社様向けのSaaS『Budii』へのAI機能の実装も進めています。 例えば、ユーザーからいただいた図面からAIが面積を自動で積算し、見積りを自動算出する機能や、住宅の画像データをもとに塗装後の色味をシミュレーションする機能などを実装し、リリースしています。
佐藤さん: また、少し領域が異なりますが、不動産事業の領域でも、AIエージェントサービスを開発しています。
PdMやマーケターもAIを使って開発を推進
――SaaSプロダクトにAIを積極的に組み込んでいるんですね。
上野さん: はい。それから、社内の生産性改善の取り組みもユニークだと思います。エンジニアが開発効率を上げるためにAIを使うのはもちろんですが、SpeeeではPdMやマーケターといったプランナー職種の社員もAIを使って自ら実装まで行っており、「AIプランナー」と呼んでいます。
リフォームDX事業部のプランナー、7割くらいは「AIで自分で実装して本番リリースした」経験があります。多い人だと、AIを活用して今月20回くらいリリースしているメンバーもいます。
PDCAを高速化するために、プランナーがAIを積極的に活用して開発を進めている状態です。
事業成長の根幹に、手触り感を持って携われる
――非常に多岐にわたるプロジェクトが進んでいるのですね。もし今、エンジニアの方が貴社にジョインした場合、具体的にどのようなことにチャレンジできるのでしょうか?
佐藤さん: まず、エンジニアリング組織の視点からお答えします。 一つは、先ほどの上野の話にもあった「営業領域のAX」です。弊社カスタマーセールスでのエンドユーザー向けの架電業務は、我々の事業の中核を担う重要な領域です。
そこのAXを、エンジニアが主体となって企画し、中心メンバーとして入っていけることがまず挙げられます。AI活用は多くの企業が始めていますが、Speeeではそれが「実際の事業インパクトのドライバー」として、非常に手触り感を持って取り組める点が魅力だと思います。
――事業成長の根幹に、エンジニアが企画段階から関われるのですね。
佐藤さん: はい。もう一つは、SaaSプロダクトの開発です。我々はリフォーム業界にバーティカルな形で深く入り込んでいるため、開発においても業界の業務実態への理解を深めながら、それをどうAIと繋ぎ合わせていくか、という経験が積めます。
確かな事業アセットが裏付ける、変革がもたらすインパクト
――全社的に、課題解決に対して積極的に取り組める環境があるのでしょうか。
佐藤さん:Speeeの社内には、AIによって変革すべきオペレーションが非常に多くあります。それらをイシューとして、エンジニアグループが主体的に「AIで効率化しよう」と企画・推進する構造になっており、「課題の定義から解決までを一気通貫で担えるチャレンジ機会」が豊富にあるのが特徴です。
上野さん: 事業部長の視点から補足すると、佐藤が言ったようなチャレンジを、「強固な事業アセット」の上で実行できる点が非常に大きいと考えています。
――強固な事業アセット、といいますと?
上野さん: 我々の自社プロダクトには、すでにリフォーム業界でNo.1のサービスがあり、業界内では広く知られた存在です。他社と比較して2~3倍の流通額がある上に、月間3~4万人のユーザーに使っていただいており、事業として黒字化も達成しているため、次の変革に向けたAI投資も積極的に行えます。
スタートアップとの対比で言えば、ゼロからAIサービスを立ち上げる場合、それが将来どの程度の規模のユーザーに使われるかは分かりません。しかしSpeeeでは、我々が開発したAI機能は、リリースした瞬間から数万人のユーザーにすぐに使われるわけです。
AIの登場によって、企業のプロダクト開発スピードは今後も加速していくと考えられますが、その際「強固な事業アセットが揃っている」という点は大きな競争優位性になります。ユーザー基盤、トラフィック、収益基盤、そして解決すべき明確な課題など、AIで産業を変革するために必要なアセットが揃った環境で、大きなインパクトを出せる。これがSpeeeで挑戦する醍醐味だと思います。
――既存の事業アセットを活用して大きなインパクトを出せる、というのは非常に魅力的ですね。
異なる事業領域・チームから幅広い知見を吸収できる
上野さん: 加えて、Speeeは事業領域が広いこともメリットだと思います。 私がいるリフォームDX事業だけでなく、不動産DX事業や介護事業、あるいは祖業であるマーケティングコンサルティングの事業でも、それぞれがAI活用について試行錯誤しています。
社内には「AIセンター」のような組織もありますし、グループ会社にはブロックチェーン開発に取り組んでいる「Datachain」という専門家集団もいます。 部門を超えて、そうした異なるドメインの事業知見やプロダクト開発の知見をヒアリングし、学び合える環境があるのは強みですね。
――事業領域が広く、多様な知見が共有できるメリットもあるんですね。
「オペレーションの改善」に取り組む意義を実感できる
佐藤さん: Speeeは、ある意味「純粋なプロダクトカンパニー」ではない、と私は捉えています。 事業の中にセールスやアドバイザーによる「リッチなオペレーション」が非常に多く存在しており、そのオペレーション自体が事業の競争優位性の一部になっています。
――先ほどの、架電業務なども当てはまりそうですね
佐藤さん: はい。そして、そのオペレーションをAIで自動化・効率化することが、事業の売上インパクトに直結するんです。 ですから、「ちょっとAIを使ってみましょう」というレベルではなく、「売上インパクトを生むための社内AI化プロジェクト」が社内にゴロゴロ転がっています。
――エンジニアにとって、挑戦する価値を実感できる課題が豊富にあると。
佐藤さん: そうですね。売上や組織のオペレーションに大きなインパクトを及ぼせるイシュー(課題)がどこにでもあり、エンジニアが主体的にそれを見つけてチャレンジできる環境だと思います。
組織の魅力:「変革」を支える組織づくり
――「産業変革」という壮大な目標を達成するには、それを支える組織文化が不可欠だと思います。Speeeさんが大切にされている組織づくりの哲学について、まず「エンジニアのキャリアパス」という観点からお聞かせいただけますでしょうか?
上野さん: エンジニアのキャリアパスについては「BizDev(事業開発)に染み出していく」のが基本的な流れです。
もちろん、新卒で入社してリードエンジニアになり、そこからEMやVPoEを目指すという、開発スキルや技術マネジメントのスキルを伸ばしていくキャリアパスもあります。
ただ、それだけではなく、エンジニアからPdMになったり、あるいはエンジニアでありながら企画を考え、事業の売上責任まで持ったりするような、開発からビジネスサイドへ業務領域を広げていくキャリアパスも主流です。
上野さん: 根底にあるのは、プロダクトを作るだけでなく、「そのプロダクトが世の中でどう使われ、事業の売上や利益にどう貢献するか」という点にまで責任を持ってほしい、という考え方です。技術的なスペシャリストを目指す道もありますが、基本的には事業やビジネス領域に近づいていくキャリアパスを推奨しています。
能力に応じて任される大きな裁量権
――エンジニアがBizDev領域まで責任を持つとなると、相応の裁量権や意思決定のスピードが求められると思います。その点についてはいかがでしょうか?
佐藤さん: まず前提として、Speeeは「事業部の権限が非常に強い」文化があります。会社がトップダウンで決めるというより、リフォームDX事業部なら上野(事業部長)が実質的に経営を担っているような、各事業部の裁量が非常に大きいのが特徴です。
例えば、SaaSの『Budii』のような新規事業も、事業責任者が売上責任から開発まで含めてすべての裁量を持って進めています。
――その「事業部の裁量」は、現場のメンバーにも移譲されているのでしょうか?
佐藤さん: はい。もちろん売上責任そのものは責任者が持ちますが、その中での開発推進などについては、メンバーの能力を見ながらどんどん任せていきますし、あえて「本人の現在地よりも少し難易度が高いテーマ」を渡していく文化があります。
柔軟な権限移譲を可能にする意思決定の仕組み
上野さん: こうした裁量権とスピードを支えている考え方が、Speeeの「ミッション・ビジョン経営」です。 実は、我々の会社には「単月の予算」という概念がないんですよ。
――月次の予算がない、というのは大きな特色ですね。
上野さん: ええ。常に問われるのは、「ミッション・ビジョンを実現するために、その投資は妥当なのか?」という一点だけです。「今月は予算がないから、これはできない」といった会話は一切ありません。
ミッション実現のために5年かけて投資回収するプロジェクトもあれば、1ヶ月で回収を目指すものもあります。それを常にミッション・ビジョンに照らし合わせて丁寧に議論する文化です。もちろん、見通しの甘いプランは通りませんが、会社の計画や予算の都合で意思決定が滞ることがないのです。
結果として、承認フローも非常に簡略化されています。一般的な企業で「CEO・役員・マネージャー・部課長」といった4ステップの承認が必要だとすると、我々は1~2ステップで完了する感覚です。
佐藤さん: 組織構造も工夫しています。プロダクト開発グループは、「ヌリカエ」などの各サービスの下にぶら下がるのではなく、事業部長(上野)直下の「横断組織」としてまとめています。これも、プロダクトに関する意思決定スピードを意図的に早めるための組織デザインです。
「得られる期待値が大きいチャレンジ」を重視
――エンジニアが積極的にチャレンジしやすい仕組みが社内にあることは理解できました。同じように「失敗しても咎められない」など、挑戦を後押しするようなカルチャーはあるでしょうか?
上野さん: 「失敗してもいいよ」と積極的に謳っているわけではありませんが、似たような価値観はあります。私自身は、常に「期待値(=成功時のインパクト × 確率)」を重視して仕事上の判断を行っています。こうした点が、結果的に挑戦を歓迎する文化に繋がっているのだと思います。
――「期待値を重視する」とは具体的にはどのようなことでしょうか。
上野さん: はい。成功時のインパクトが非常に大きい挑戦であれば、たとえ失敗したとしても、挑戦前の期待値は高かったわけですから問題ない、と考えるということです。
確率を上げることばかり考えてインパクトが小さい挑戦をするよりは、インパクトが大きくて勝率が50%程度のものに数多く挑戦する方が、最終的な事業への貢献は大きくなると考えています。 ですから、メンバーには「挑戦するなら、そのインパクトは小さくないか?」とはよく言いますが、期待値の高い挑戦をした結果としての失敗を問うことはありません。
佐藤さん: 開発スケジュールに関する考え方でも、似たような文化があります。 私はメンバーに「開発スケジュールにバッファを積まないように」とよく伝えています。
――バッファを積まない、というのは思い切っていますね。
佐藤さん:「インパクトを大きくする」という観点だと、バッファを設けて確実に達成できるような目標を立てても意味がありません。 そうではなく、達成できるかどうかわからなくても「野心的なスケジュール」を掲げ、そこに近づける努力をすること自体を重視しています。
上野さん: 評価制度もそれを支えています。 我々は、評価を「達成率」で行っていません。
代わりに「成果の総量」が、その人の役割や期待値に対して妥当だったかどうかを、過去比や市場比なども含めて総合的に評価します。
もちろん、そのためにはマネージャー側に、メンバー一人ひとりの「成果定義」をトップダウンで決めてしまうのではなく、丁寧に行う高度な能力が求められます。 ただ、こうした「期待値で判断する思考」と「成果の総量で見る評価」があるからこそ、メンバーが野心的な目標に挑戦しやすい土壌が作れているのだと思います。
「組織成長」を後押しする協力しやすい社内文化
――組織内のコミュニケーションはいかがでしょうか? 例えば、周りへの相談のしやすさなどについてお聞きしたいです。
佐藤さん: まず大きな特徴として、エンジニアだけでなくリフォームDX事業部の全員が、一つのフロアに出社しています。
――物理的に近い距離にいらっしゃるのですね。
佐藤さん: はい。それに加えて、毎朝9時半に事業部の全員が集合して「朝会」を行い、カルチャーを浸透させるためのコンテンツを共有する時間を毎日設けています。 こうした取り組みによって、組織としての一体感を作っています。
上野さん: ですから、相談のしやすさは抜群に高いと思います。
――それは、今おっしゃったような物理的な環境や仕組みの面が大きいのでしょうか? それともカルチャー的な面でしょうか?
上野さん: 両方ですが、カルチャーも非常に大きいです。 Speeeには大切にしているカルチャーが合計15項目あるのですが、その一つに「組織成長への貢献」というものがあります。
参考:Speeeの行動基準
https://speee.jp/about/speee-style/
自分が学んだことは積極的に共有したり、協力を求められたことに対しては全力で貢献したりする、というカルチャーが根付いています。シンプルに「いい人が多い」ということかもしれません。
これは採用の段階からカルチャーフィットを非常に重視しているからでもあります。「スキルは高いがカルチャーが合わない」という方は、基本的には採用しません。
佐藤さん: 新卒入社者が多いこともあり、「同期」や「先輩・後輩」といった文化もそれなりにあります。それが所属チームや役割を超えた横の繋がりを生んでいる側面もあると思いますね。
採用戦略:いかにして「変革の当事者」となりうる人材と出会うか
――貴社が「一緒に働きたい」と思えるエンジニアの人物像について教えてください。まず、志向性やマインドセットについてはいかがでしょうか?
上野さん: まず大前提として、Speeeが大切にしているカルチャーにもある「素直・謙虚・率直」であることや、「大きなことを成し遂げたい」「知的好奇心がある」といった、仕事やミッションに真摯に向き合える方であることは重視しています。
佐藤さん: その上でエンジニアの方に求めるマインドセットとしては、「主体的に問題解決に関わっていける」ことを非常に重視しています。 単に「技術を使って開発ができる」というだけでなく、その先にある「問題解決そのもの」に働きかけていける方、そして、その課題解決を通じて「事業を伸ばしていくこと」に関心があるかどうかは、非常に重要なポイントです。
――技術はあくまで手段であり、それを使って事業課題を解決し、伸ばしていく意志が問われるのですね。
佐藤さん: はい。そうした主体的な問題解決におけるリーダーシップを発揮してほしいと思っています。
――技術スタックやキャリアプランについてはどうでしょうか?
佐藤さん: 技術スタックで言うと、メインはRuby on Railsですので、Web系の技術に関する知見は求められます。
キャリアプランについては、まさに先ほどお話ししたような志向性の方に来ていただきたいです。 つまり、「エンジニアという軸足は置きながらも、自分のやれることや持てる責任の範囲を大きくしていきたい」という姿勢を持っている方ですね。そういう人にとって、Speeeは非常に良い環境だと思います。
価値観のバックボーンとなる人生経験を問う
――そうした人物像を、採用プロセスの中でどのように見極め、また惹きつける工夫をされているのでしょうか?
佐藤さん: 面接の中では、候補者の方が今いる環境や組織について、かなり解像度を高くイメージしながらお話を聞くようにしています。
例えば、そのプロジェクトの組織構造はどうなっていて、誰がどこまでの役割を担っていたのか。その中で、候補者ご自身が「どれだけプロジェクトに食い込んでいるのか」。あるいは、問題が起きた時に「主体的に解決しようと動いたか」といった具体的なエピソードを伺い、先ほどお話しした主体性やリーダーシップを見させていただいています。
上野さん: 私が担当する最終面接などでは、相互理解のために「職務経歴書だけではない」部分をかなり深く聞くようにしています。
――仕事とは直接関係ない人生経験についても尋ねている、ということでしょうか。
上野さん:はい、 私は、人の「価値観」が形成される背景を知るために、あえて「過去の人生経験」を伺っています。 どんな幼少期を過ごし、何に自信を持ち、何に劣等感を抱いてきたのか。そうした人生経験を通じて形成された価値観が、Speeeのカルチャーと合うかをすり合わせたいからです。
もう一つが「意思決定の経験」です。人生の節目で、なぜその選択をしたのか。その意思決定の背景には、その人の性格や判断基準、困難への向き合い方が詰まっています。
ありのままの自社の姿を飾らずに伝える
――かなり深くパーソナリティに踏み込むのですね。逆に、候補者に対してSpeeeさん側の情報を伝える際に注意していることはありますか?
上野さん: 我々が意識しているのは、「期待値を上げすぎない」ことです。
採用のために自社を良く見せようとするのではなく、我々が今できていないことも含めて、そのまま率直にお伝えしています。
LAPRASなら「本質的に自社とマッチする候補者」に出会える
――Speeeさんの採用戦略の中で、LAPRASはどのような役割を果たしているのでしょうか?
佐藤さん: まず、我々はSpeeeが「必ずしもすべてのエンジニアに万人受けする会社ではない」と自覚しています。
先にお話ししたような「事業への関心」や「責任範囲の拡大」といった独自のカルチャーやキャリアパスがありますので、大量の母集団を集めることよりも、「お互いにしっかりマッチする人と会いたい」というニーズが非常に強いです。
その点でLAPRASは、「ピンポイントで会いたい人」にこちらから連絡し、マッチできる、という部分で大きな役割を果たしてくれています。
上野さん: そうですね。LAPRASには、我々が求めるような志向性を持った候補者の方がいらっしゃると感じますし、なにより候補者の方々が「フラットに見てくれている」という実感があります。
他の媒体だと、どうしてもスカウトの送り手となる会社の社名など、ブランドイメージに引っ張られてしまう側面があるかと思います。
しかし、LAPRASを使っている候補者の方々は、ブランドイメージだけでなく、スカウト文面をちゃんと読んでくれた上で、「その企業が本質的に何をやりたいのか」をちゃんと理解した上で返信してくれていると感じます。 弊社の場合、LAPRASは他の媒体よりもスカウト返信率が高くなっているのですが、その理由もそこにあるのではないかと考えています。
今後の展望と読者へのメッセージ
――最後に、今後の展望についてお伺いします。「産業AX」をさらに実現していくために、今後の組織づくりにおいて注力していきたいポイントをお聞かせください。
上野さん: そうですね。我々のリフォームDX事業は、元々業界でNo.1の事業でしたが、その強さの源泉はマーケティングや営業のオペレーションでした。
しかし、この2年ほどで、プロダクト開発の比率を意図的にグッと伸ばしてきています。
――組織のケイパビリティを変えてこられたのですね。
上野さん: ええ。これからの産業変革は、当たり前ですが「プロダクト」で実現していきたいと強く思っています。 事業部にはマーケティング、営業、開発と様々な機能がありますが、あえて言うなら、今後は「プロダクト開発が主人公」だと考えています。
プロダクト開発の力によって業界を変えていく。そのために、我々は今後さらに投資もしていきますし、組織も大きくしていきますし、なにより大きな期待を寄せていきます。
AI時代は「エンジニアが挑戦できる環境」が魅力になる
――最後に、記事の読者に向けて、メッセージをお願いいたします。
佐藤さん: 我々が日々感じているのは、AIの進化によって、エンジニアが活躍できるフィールド、事業や社会に与えられるインパクトが爆発的に広がっているということです。
だからこそエンジニア採用においては、彼らが単なる「開発者」に留まらず、いかに「事業や社会の変革に“当事者”として関われるか」という視点が、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。
――技術的な関与だけでなく、事業変革への貢献が鍵になる、と。
佐藤さん: はい。我々の組織で言えば、「解決すべき顕在化した課題」が豊富にあることや、エンジニアがBizDev領域に染み出し「成果の総量」で評価されることなどが例として挙げられます。さらに、上野が話したように、これから「プロダクト開発を主人公」として、組織の中核を担っていくフェーズであることからも、エンジニアが活躍できる機会が多くあることを示しています。
今後、エンジニア採用に取り組んでいく企業では、こうした「挑戦できるイシュー」や「得られる経験」を、自社の魅力としてPRしていけるかがポイントになっていくのではないでしょうか。
Speeeが万人受けする会社ではないように、すべての会社がそうである必要はなく、自社のミッションやカルチャーに本当にマッチするエンジニアと出会うことが、結果的にお互いの成長に繋がるのだと思います。
上野さん: 我々の取り組みが、皆様の組織づくりや採用戦略を考える上で、少しでも参考になれば幸いです!
佐藤さん: そしてもし、この記事を読んでくださっているエンジニアの方で、Speeeが目指す「産業AX」や「プロダクトが主人公になる」これからのフェーズに共感し、ご自身の挑戦の場として可能性を感じていただけたなら、ぜひ一度お話しできると嬉しいです!
――本日はありがとうございました。
AIが「作る役割」を担う今、エンジニアの役割は「技術で事業成長を導く」ことへと変わりつつあります。
採用市場では、従来の開発力に加え、「事業貢献」に直結するスキルの重要性が高まっています!
- 課題解決能力:顧客やビジネスへの深い理解で、技術を価値創出につなげる
- 技術応用力:新しい技術(特に生成AI)でチームの生産性を高める
- マネジメント能力:戦略策定・組織運営・人材育成で事業成長を牽引する
こうしたスキルを持つ人材は、従来の経歴書だけでは見極めが困難です。
LAPRASなら、「AI時代に求められるエンジニア」とそのスキルを、独自のアプローチで可視化できます。
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