求人票・スカウトで差をつける!エンジニア採用で「出社/リモート」の働き方を自社の魅力に変える伝え方とは?

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ITエンジニアに限らず、転職先選びでは「自身の価値観やライフスタイルを大切にした働き方ができるか」がひとつの大きなポイントになってきます。

なかでも「勤務スタイル」(出社、フルリモート、ハイブリッドワーク等)は、そうした個人の志向性と深く結びついており、候補者によって好みがはっきりと分かれる重要な要素です。求人票やスカウトにおいて、「なぜその勤務スタイルを選んでいるのか」を自社のカルチャー・価値観と関連付けて説明できれば、候補者のアトラクトにつなげることができます。

この記事では、出社とフルリモート、そしてそれらを組み合わせた柔軟な働き方の3つを取り上げ、それらを「働き方の魅力」として効果的に伝えるためのポイントを解説します。

出社の魅力を伝えるポイント

まずは、エンジニアにとっての一般的な出社のメリット・デメリットを整理しましょう。

エンジニアが携わる開発業務は多くの場合、リモートでも業務が可能です。そうした中で、あえて出社のスタイルを選んでいる企業は、候補者にその意図を明確に説明しておくほうが自社のカルチャーがより明確に伝わりやすくなります。

よく言われるメリット・懸念点

メリット

  • 雑談を含めた対面コミュニケーションが円滑で、チームの一体感が生まれやすい。
  • 周りとすぐに質問・相談がしやすい。
  • 偶発的な会話から新しいアイデアが生まれやすい。
  • 物理的なセキュリティが担保された環境で開発できる。

懸念点

  • 通勤の手間がかかる。
  • 育児・介護など、家庭との両立が難しい場合がある。
  • 採用ターゲットが通勤圏内に限定される。
  • オフィス環境によっては(例:オープンスペース)、集中しづらい場合がある。

出社を好む候補者の例

エンジニアの中にも、以下のような理由から出社をポジティブに捉える層は一定数存在します。

  • チームメンバーとの対面コミュニケーションや一体感を重視する人
  • 仕事とプライベートのオン/オフを明確に切り替えたい人
  • キャリア初期で、先輩から直接指導(OJT)を受けたい人
  • 雑談や一体感の中から新しいアイデアを生み出したい人

魅力を伝えるポイント:「出社ならではの価値」を言語化する

エンジニア採用で重要なのは、単に出社を「決まっているルールだから」と提示するのではなく、「なぜ出社を重視するのか」という背景にある価値観を言語化することです。懸念点を払拭し、「出社だからこそ得られる価値」を具体的に伝えましょう。

出社の魅力を採用につなげている企業の例:株式会社スタメン

「人と組織の強さで勝つ」という価値観を掲げる株式会社スタメンでは、オフィスでの雰囲気やチームの空気感といった「現場感覚」を大切にするため、出社を前提とした勤務スタイルを採用しています 。

参考記事はこちら:

同社が実践している魅力の伝え方は以下の通りです。

(1)価値観・空気感を伝える

「人と組織の強さで勝つ」という価値観のもと、オフィスでの活発なコミュニケーションやチームの一体感といった「現場感覚」を重視していることを明確に打ち出しています 。

(2)具体的な制度を伝える

サウナ部や料理部、映画部といった「社内の部活制度」があり、業務外でも部署や役職を超えて人とつながれる仕掛けを用意しています。これにより、「出社=単なる業務」ではなく「仲間との信頼関係を築く場」という価値を伝えています 。

(3)選考でのスタンスを伝える

こうしたカルチャーを入社前に体感してもらうため、選考を「相互理解の場」と位置づけています。あえて堅苦しい雰囲気にはせず、現場エンジニアを交えた雑談ベースで話すことで、候補者は「実際にこのチームでどう働くか」という空気感をリアルに感じ取ることができます。

フルリモートの魅力を伝えるポイント

コロナ禍の収束後は出社回帰の動きも見られる中、フルリモートを継続・導入している企業は、エンジニアにとって非常に魅力的な選択肢となり得ます。ただし、「周囲の人の動きが見えない環境」への不安をどう払拭するかが鍵となります。

よく言われるメリット・懸念点

メリット

  • 通勤の手間(時間・コスト)がゼロになる。
  • 働く場所の自由度が高い(国内遠方や海外での勤務が可能になる場合も)。
  • 育児や介護など、家庭の事情と仕事を両立しやすい(中抜け等がしやすい)。

懸念点

  • テキストコミュニケーションが中心となり、雑談などが減ることで「孤立感」を抱きやすい
  • 成果を出すための仕組みが整っていないと、業務遂行や評価に不安を感じる
  • 仕事とプライベートのオン/オフの切り替えが難しい

フルリモートを好む候補者の例

他者からの指示を待たず自律的に動けるスキルを持つエンジニアの中には、フルリモート環境を強く志向する方々が一定数見られます。

  • 自己管理能力が高く、自走して業務を遂行できる人
  • テキストベースでの円滑なコミュニケーションが得意な人
  • 育児・介護などと仕事を両立させるため、柔軟な働き方を求めている人
  • 地方や海外など、オフィスの場所に捉われずに働きたい人

魅力を伝えるポイント:「孤立させない仕組み」と「信頼」を言語化する

フルリモートの求人では、候補者が抱きがちな「孤独になるのではないか」「正当に評価されるのか」という懸念を先回りして払拭することが重要です。「なぜフルリモートなのか」という背景にある価値観とともに、安心できる仕組みや実績をアピールしましょう。

リモートの魅力を採用につなげている企業の例

CLINKS株式会社

同社はSESであり、コロナ禍以前からテレワークに取り組んできました。そうした長年の実績と、自社したテレワーク支援ツール「ZaiTark」によって「孤立させない仕組み」を具体的に提示しています。仮想オフィスなどの機能でチームの存在を感じられる環境を示すことで、フルリモートに対する候補者の不安を「安心感」に変えることに成功しています。

参考記事はこちら:

株式会社ビープラウド

「信頼して、余計なルールは作らない」という価値観を背景に、性善説に基づいたフルリモート環境をアピールしています。監視や細かい報告を求めず、海外勤務や柔軟な中抜けも可能にするなど、エンジニアをプロフェッショナルとして信頼している姿勢を示すことで、自律的な働き方を好む層のアトラクトにつなげています。

参考記事はこちら:

その他:ハイブリッドワークなど、柔軟な働き方

「週◯日出社」や「原則リモートだが出社も可」といった、出社とリモートを組み合わせるハイブリッドワークも増えています。こうした働き方は、双方のメリットを享受できる反面、運用がうまくできないと中途半端になってしまうリスクもあります。

メリット・懸念点については出社・フルリモートと重なる部分も多いため、ここではそれらを組み合わせた場合に生じうるものに絞ってご紹介します。

よく言われるメリット・懸念点

メリット

  • 出社による「一体感・密なコミュニケーション」と、リモートによる「柔軟性・集中できる環境」の「良いとこ取り」を目指せる。
  • ライフステージや業務内容に合わせて、働く場所を最適化できる

懸念点

  • リモート参加者と出社参加者との間で、会議や情報共有の質に格差が生まれる恐れがある。
  • 制度が複雑になり、「公平な評価がされるのか」という不安を抱かれやすい

ハイブリッドワークなど柔軟な働き方を好む候補者の例

自由度の高い勤務スタイルのメリットを最大限活かし、必要に応じて自分で出社・リモートを選択できる、自己管理能力の高い人に好まれる傾向があります。

  • 業務内容(集中作業 or ブレスト等の共同作業)に応じて、働く場所を自分で最適化したい人
  • 信頼関係の上で、自律的に働くことを好む人
  • 育児や介護など、ライフステージの変化に合わせて働き方を柔軟に選びたい人

魅力を伝えるポイント:「自律とパフォーマンス」を言語化する

ハイブリッドワークの魅力を伝える際は、「どっちつかず」だと受け取られないように注意が必要です。

  • エンジニアのパフォーマンスを最大化するため
  • 育児や介護など、事情がある人でも活躍できる環境を作るため

といった形で、「なぜ柔軟な働き方を推奨するのか」、その背景にある理由をポジティブな価値観とセットで言語化しましょう。

「会社が働く場所を指定する」のではなく、「成果を出すために、社員自らが場所を選べる、最適化できる」という自律性をアピールすることが、アトラクトの鍵となります。

柔軟な働き方を採用につなげている企業の例

KDDIアジャイル開発センター(KAG)

同社では、出社かリモートかという二項対立ではなく、エンジニアがパフォーマンスを出すために「働く場所を強制しない」というスタンスを貫いています。

参考記事はこちら:

同社が実践している「完全自由選択型」の魅力の伝え方は以下の通りです。

(1)価値観・哲学を伝える

「エンジニアが活躍するにはどうすればよいか」を起点に制度設計しており、会社都合で働く場所を強制しないことを明言しています。これにより、自社で働くエンジニアへのリスペクトを伝えています。

(2)具体的な「仕組み」を提示

リモートか出社か、どちらかを前提とするルールはなく、どこで働くかは完全に本人の判断に任せています。非常に自由度の高い働き方そのものが、同社で働くうえでの大きな魅力になっています。

(3)「選択肢」としてのオフィス

オフィスに行くことを義務にするのではなく、「チームで集まりたい時や集中したい時に自由に使える選択肢」として位置づけています。これにより、候補者は「自分らしく働ける環境」としての魅力を感じることができます。

勤務スタイルを「条件」ではなく「魅力」として伝える

エンジニア採用において、勤務スタイルは単なる「募集条件」ではありません。それは、企業のカルチャーやエンジニアへの向き合い方を如実に表すメッセージそのものです。

自社の勤務スタイルが、出社とフルリモート、それらを組み合わせた柔軟な働き方のいずれに当てはまるにしても、重要なのは「なぜその働き方なのか」という背景にある価値観や意図を言語化して伝えることです。

  • 背景(Why)を伝える:「ルールだから」ではなく、事業貢献やチームビルディング、個人の自律性など、自社が大切にしている価値観と紐づけて説明する。
  • 懸念を払拭する:それぞれの働き方が持つ特有の懸念点(通勤の負担、孤立感、公平性など)に対し、それをケアする具体的な仕組みや実績を示す。

これらを丁寧に行うことで、候補者の抱く不安を払拭して安心感に変え、さらに「この会社で働きたい」という魅力へと昇華させることができます。 ぜひ自社のスタンスを明確にして、それに共感してくれるエンジニアとの出会いにつなげてください!