LAPRASは2020年3月26日にフルリモートワーク体制に移行しました。
そして東京都の緊急事態宣言が解除された後、現在のオフィスを退去しリモートワーク体制を続けることを選択しました。
そんな体制の中、4月1日に入社した新入社員へのオンボーディングもすべてオンライン上で行われました。そして、LAPRASはいくつかの失敗を犯しました。
今回の記事では、リモートワーク体制のオンボーディングで実際に起こった問題、そしてその改善の取り組みをインタビューとともに紹介します。
目次
インタビューで見えたLAPRASのオンボーディングの課題
《プロフィール》
LAPRAS株式会社 HR&Legal 飯田 裕子
長崎県出身。中央大学法学部法律学科卒業。新卒で日本ユニシス株式会社に入社し、金融システムの営業を行った後、司法書士法人トリニティグループにて企業法務と人事採用業務を行う。その後、行政書士資格を取得し、レスターグループにて新規事業の立ち上げ及びバックオフィス全般に携わる。Legal &HRとして2020.4LAPRAS入社。趣味はスポーツ撮影で、カメラマンとしてバドミントンの実業団チーム等に写真提供を行っている。
– オンボーディングはどのように行われたんですか?
基本的にはZoomのオンラインMTG機能を使って、画面共有で資料をみながら進みました。
– リモートでのオンボーディングについて、オンボーディングされる側として課題は感じましたか?
課題はとても多くありましたね。
例えば、文章だけでやりとりすると表現によっては素っ気なく感じてしまうこともあります。
ただ質問をされているだけなのに「責められているのかもしれない」「どんなリアクションを期待しているのだろう」と考えてしまうことがありました。
LAPRASでは新入社員1人に対して1人のトレーナーがアサインされるのですが、トレーナーに「このコメントは指摘ではなくて、純粋な質問ですよ〜」と言ってもらうこともありましたね。
– 直接会ったことがなくてコミュニケーション量も少ないと、発言の温度感がわからないということはありそうですね。
温度感がわからないのは大変でしたね。30人のメンバーの顔と名前と仕事内容を一致させるのにも2週間以上かかりました。
メンバーとの心理的な距離感がなかなか埋まらないことも問題でした。リモートワークの環境では、雑談は自然発生しないので、仕事上関わらない人とはほとんど話さない状態です。同じ会社で働く仲間なのに遠く感じていました。
– 距離感が縮まらないことで実際に業務への影響はありましたか?
いくつもあるのですが、1つ例を挙げると質問がしづらかったです。オフィスでは、ランチのついでの雑談で簡単に解決できる疑問も、雑談がないため文章に起こしてテキストベースで聞かないといけない。
そして、その簡単な質問をほぼ話したことがない人たちに対して投げないといけないということには躊躇が生まれました。些細な例では「MTGの時間になったのにSlackのcallボタンが見つからない」のような疑問も、話をしたことがないメンバーに聞くには躊躇してしまい、一旦自分で検索して、結局わからずにSlackに投下するなど余計な手間をかけていました。
その時はSlackのアップデートが原因で表示が変わっており、他のメンバーもみんな戸惑っていました。
でも私にとっては「みんなは知っているのに、私だけが知らないだけかもしれない」と思ってしまいました。
– いわゆる「心理的安全性」がなかったということが問題ですね
そうですね。私自身が性格的に自己反省してしまうタイプだということも悪循環を生んでいました。
会社全体としてもリモート体制に移行したばかりだからうまくいっていないことも多くありますが、それと自分自身のキャッチアップの問題との区別がつかず、ストレスを感じていましたね。
– これらの問題は現在は解決されたんですか?
幸いにもLAPRASは全員との1on1が入社後のプログラムとして組んであったり、オンラインで入社式や歓迎会をやってもらっていたこともあり、徐々にコミュニケーションの問題は解決していきました。
また、ホラクラシー組織なので、自分で感じた課題を解決するために自らメンター制度を作るなど仕組み自体の改善にも取り組みました。
改善施策は他にもありますが、コミュニケーション面ではオンラインランチやオンラインでラジオ体操をはじめ、何気ない交流でも良いので接触量を増やすようにしています。
雑談を作り出すこと、そして雑談がしやすい土壌を作ることを意図的に仕掛けていくこと、今回のオンボーディングで見えてきた課題の解決に繋がるのではないかと考えています。
成功のために必要だった2つのポイント
LAPRASのオンラインオンボーディングの失敗は「気兼ねなく質問や相談ができる関係性」を作れなかったことに原因があります。また、「気兼ねなく質問や相談ができる関係性」に必要だったのは下記の2点だと考えています。
①雑談による信頼関係の構築
②新入社員と既存社員の認識のずれを埋めること
①雑談による信頼関係の構築
メンバー同士の雑談は信頼関係を構築し、相談や提案のハードルを下げ、業務を円滑に動かします。
「見当違いのことを言っても丁寧に指摘してくれる」「雑な提案を投げてもきちんと打ち返してくれる」「冗談にリアクションしてくれる」というような安心はコミュニケーション上では重要です。相手の人柄もわからない場合「自身の質問は無知だと笑われるのではないか」「見当違いの提案は場をしらけさせてしまうのではないか」という不安が生まれます。その結果、メンバーが発言を躊躇するようになってしまいます。
②新入社員と既存社員の認識のズレを埋めること
20人の壁を乗り越えるためにLAPRASが行った組織開発手法「ダイアログ」の記事でも紹介したとおり、LAPRASでは新入社員と既存社員の間の認識のズレを埋めるためにダイアログという手法を採用していました。
組織が拡大すると、在籍歴によって会社での経験は増え、様々な事象についてのコンテキストを理解することができます。
一方、新入社員は会社での経験がないためコンテキストを理解することが困難です。例えば「うちの会社らしさ」という言葉が何を示すのか、「●●の案件と同じ感じ」という曖昧な表現、社内で生み出された造語について、既存社員とは捉え方が異なります。
そのためにダイアログなどの手法で、認識の不一致を明らかにし、相互理解を深めていく必要があります。
LAPRASでは新入社員のオンボーディングとリモートワーク移行のタイミングが重なったこともあり、ダイアログ、またダイアログに準ずるようなカジュアルな会話をする機会は十分に設定されませんでした。
結果として、新入社員が感じていた不一致はオープンにされることがなく、既存社員がサポートすることも困難でした。
改善フォーカスは信頼構築と業務領域の見える化
失敗を経て、LAPRASでは「①雑談による信頼関係の構築」にフォーカスして改善を行っています。具体的には、中途社員であってもメンター制度を実施し、従来開催されていた新入社員とのリモートランチ、歓迎会についても既存メンバーとのコミュニケーションを重視した内容に刷新しています。
併せて「誰に聞いたらいいのかわからない」という問題を解決するために、社内ドキュメントの各メンバーの自己紹介を更新する、既存メンバーとの1on1で業務領域についての説明パートを設けるなどの対策を講じています。
いずれも、抜本的な改革ではなく愚直な改善です。
しかし、こういった一歩一歩の改善を重ねることによって少しずつコミュニケーションが前進しているのを感じています。
おわりに
新入社員は、新しい職場とリモートワークという2つの慣れない環境で業務に当たらなくてはならず、オンボーディングにあたっては様々な問題が発生します。
特に1人で入社する中途社員においては、悩みや問題を共有できる仲間がいないことが大きなストレスになります。
心理的安全性を確保したコミュニケーション、そのための雑談、そして認識の差異を埋めるための努力はどんな企業でも必要です。
自社でも問題は起こっていないか、表面化していないだけではないのか、今一度見つめ直してみてください。
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