採用を成功させるために選考フローごとに目標(KPI)を設定している企業は多く、KPIについてはどのような目標や基準を設けるべきかが難しく、自社の状況を踏まえて決めた方が良いと分かっていても、どこをどう見て目標設定するかについてお悩みの採用担当の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、特に選考フローの後半、採用歩留まり率にフォーカスして、一般的にはどのくらいの数値を目標にすべきか、そして歩留まりの改善のためにはどういうアイデアがあるのかについて解説します。
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目次
ダイレクトリクルーティングの全体像
KPI設定のためには、まず採用業務の全体像を捉える必要があります。上記の図は採用の全体像を図示した一例です。
- 求人作成:欲しい人材を定義し、求人票やスカウト内容を作成する
- 候補者探索:欲しい人材に当てはまる候補者を探す
- アプローチ:スカウトメール等で、候補者にアプローチする
- カジュアル面談:興味を持ってくれた候補者とカジュアル面談を行う
- 選考:カジュアル面談後、選考に進む意向を受けて、書類・試験・面接等により選考を行う
- 内定:選考通過した候補者に対し、内定を出す
- 内定承諾:内定後、候補者が内定を受諾する
- 入社:内定受諾後、実際に入社してもらう
さらに、それぞれのフェーズを細分化すると、例えば「選考」にも「書類選考」「コーディング試験」「一次面接」「二次面接」「最終面接」等といったそれぞれの段階があります。目標設定や改善のためには、まずは全体像を把握し、それぞれのフェーズを把握する必要があります。
エンジニア採用における歩留まり率の参考数値と目標設定の仕方
全体を把握し目標設定する上で、各歩留まり率をどう考えるかは難しいポイントです。ここでは、4つの歩留まり率について、一般的に目安とされている数値をご紹介します。
・スカウトメールの返信率
・カジュアル面談から選考への移行率
・選考の各フェーズの移行率
・内定承諾率
具体的に「この数字であればOK」という風に申し上げるのは難しいのですが、強いて言えば以下のような数字をひとつの目安としてみてはいかがでしょうか?
スカウトメールの返信率
一般的には10-20%がひとつの目安になります。ただ、求人毎の戦略により、返信率の目標とすべき数値は大きく異なります。例えば、CTO等のハイスキル層の採用を目指している場合、ターゲットを絞って、少ないスカウト通数で確実に候補者の方とのマッチングを狙うという戦略が有効になります。その場合、そもそも送ることができる人数が限られているような場合もあるので、スカウトメールの返信率は非常に重要な数値となります。
一方で、ジュニア層の採用を複数名目指すような場合、できるだけ可能性のある方に幅広くスカウトを送るという戦略もあります。この場合は、スカウトを通じたリーチ量が先ほどよりも重要です。そのため返信率をやや低めに想定するなど、目標設定も戦略に合わせたものにする必要があります。
カジュアル面談から選考への移行率
こちらは会社ごとの差が一番出るところですが、25-35%が目安となります。スカウトと同様に、可能性がある方と幅広くカジュアル面談を実施する場合、選考への移行率は低くなりますし、転職活動中の方等に絞って面談を実施する場合には選考への移行率は高くなります。
選考から内定までの移行率
選考についても、どのような選考を実施するかによって、企業毎に差が出るものになります。スカウト経由の場合、30-50%程度が一つの目安になるかと思います。
内定承諾率
内定承諾率については、50-80%が一つの目安になるかと思います。ただし、特に優秀層の場合は内定を複数獲得するケースも多く、その場合は内定承諾率をやや低く想定すべきでしょう。
エンジニア採用における歩留まり率を改善するためのヒント
スカウトメールの返信率
スカウトメールの返信率を改善したい場合は、スカウト内容の見直しと、スカウトを送信している対象者の見直しの2つが考えられます。
スカウト内容の見直しにはスカウト本文の見直しだけでなく、掲載している求人、エンジニア採用コンテンツ等の見直しの双方の視点が必要です。スカウトを受け取った人が、面談に進みたくなるような情報提供ができているか、自社の求人や採用サイト等の情報が十分に足りており、興味を持ってもらえるような内容になっているか等を見直してみましょう。
また、カジュアル面談で毎回説明している内容やよく質問される内容についても、できるだけ求人票に盛り込みましょう。候補者が魅力に感じてくれる自社の強みが、スカウトメールが届いた時点でしっかりと伝わるようになることで、返信率の改善が見込めます。
その際には、社内のエンジニアに協力を仰ぎ、実際の求人や採用情報をエンジニア目線で見てもらうことも有効です。エンジニアに伝わらない内容や、魅力的に映らない表現がある場合には、その改善により返信率の改善が見込まれる場合があります。また、直近で入社したエンジニアの方がいる場合は「何が入社の決め手だったのか」について聞いてみましょう。自社の魅力づけのヒントがもらえることで、よりエンジニアに魅力的に映るスカウト・求人の作成が可能になります。
カジュアル面談から選考への移行率
カジュアル面談から選考への移行率は、①選考に進めたい方と会えているか、②選考に進めたい方が選考に進んでいるか、の2つのポイントがチェックポイントになります。
選考に進めたい方と会えているかという点に関しては、50%が目安になります。後者のカジュアル面談で良いと思った方が選考に進んでいるかについては、25〜35%の移行率が目安になります。
①選考に進めたい人に会えている率が低い場合は、カジュアル面談の中身というよりもその手前のスカウト対象者の選定や求人票の内容に問題があるケースが多いです。カジュアル面談をエンジニアの方が担当しているのであれば、実際にカジュアル面談に来られた方と採用したい方とのギャップを確認して、スカウト対象者の選定基準を見直したり、求人票の内容が採用したい方から見て魅力的に映る内容になっているのかを確認して改善していったりすることが必要になります。
②選考に進んで欲しい人が選考に進んでくれていない場合には、面談の内容や面談の終わり方に課題があります。実際に「カジュアル面談で楽しく盛り上がるのに、そこから選考に繋がらない」というお悩みは、多くの企業の担当者の方から寄せられる悩みでもあります。
カジュアル面談の内容に関しては、候補者に自社の魅力を伝えることが重要です。候補者の興味関心に合わせて、候補者ごとに面談で何をどのくらい話すかのタイムスケジュールを決めましょう。具体的には、カジュアル面談の冒頭で、候補者が「聞きたいこと・興味を持っていること」、「懸念に思っていること」をヒアリングし、話すべき項目を選定して話すと良いでしょう。
一方で、候補者ごとに都度一から面談を設計するのは現実的ではありません。
カジュアル面談では以下のような内容について情報提供を行うことが多いので、リストを作成してどの部分に多めに時間をとるかを決めると良いでしょう。
・会社・事業の内容やミッション
・組織体制、開発体制
・技術的課題や最新の取り組み
・キャリアパスや育成支援
・一緒に働くメンバーや社風
その上で、候補者のバックグラウンドや会話での反応、質問などから、その候補者にとって、自社のどのようなポイントが魅力に映りそうか探りつつ、しっかり伝えるようにしましょう。一方的な情報提供で終わるのではなく、候補者の興味関心があるトピックを中心に、対話を深めるような面談ができると理想的です。
また面談の終わり方については、、候補者に一歩踏み出してもらうように企業側から促すことが大切です。お互いに「本日はありがとうございました!いつか機会があればまた!」と、次の機会が曖昧なまま終わってしまっては採用の機会を逃してしまいます。
次の選考の打診や、役員・現場メンバーの紹介やオフィス見学等のオプションを提示しましょう。特に最も有効なのはその場で次回の予定を設定することです。面談を担当する社員が採用したい方に出会ったときに、何をネクストアクションとして打診するのか、次のステップを明確にしておくと良いでしょう。
もし、上記を改善しても選考への移行率が改善しない場合は、カジュアル面談後の方にアンケートを取るという方法もおすすめです。アンケートでは、採用側としては選考に進んでほしかったものの、選考に進まなかった方の本音を、拾えることで、どこに改善点があるかを発見することができます。
選考から内定への移行率(選考通過率)
選考通過率については、いくつか要因があり、また選考フロー毎に登場人物も異なるため、非常に難しいところではあります。まず、書類選考の通過率が低い場合は、そもそものアプローチ対象に課題がある場合が多いため、自社の求人とアプローチ対象があっているかについて、一度確認するのが良いでしょう。
また、面接官によって基準の「解釈」や候補者を選ぶ際の視点がぶれてしまっているケースもあります。面接毎に担当者が異なることが多い採用活動では、面接官と人事担当者との視点合わせは非常に重要です。
内定承諾率
内定を出すものの、内定を承諾してもらえない場合は、入社に向けた動機づけができていない場合があります。例えば、内定を出す際にオファー面談等を実施して、入社してほしい理由をしっかりと伝える。面接の合間や内定後にもフォロー面談や食事会等で接点をもちつつ、会社の雰囲気を伝える等、候補者の気持ちを盛り上げるような取り組みをするのも良いかと思います。
どうしても、内定承諾率が上がらない場合は内定辞退者にフィードバックを依頼することも改善に繋がります。内定に至るまでの選考プロセスを振り返りながら、自社に対するモチベーションが上がった場面、下がった場面、自社よりも他社のほうが魅力的に感じられた場面などを確認していくとよいでしょう。
まとめ
ここまで、参考数値や改善案をお話ししてきましたが、当然ながら採用したいポジションや会社によって数字は大きく変わってくるものです。そのため、「歩留まりを何%にする」ということが一番重要なのではなく、採用目標から逆算して数値を設定し、改善の余地があり、かつ、改善の余地がある歩留まりから、順番に改善していくことの方が重要です。
100人採用したい企業と、1人採用したい企業では目標も異なりますし、各歩留まりの改善しやすさや改善した場合の全体へのインパクトも異なってきます。数値目標は達成・未達成が分かりやすく、課題の洗い出しにとっては必要なものですが、そこに囚われすぎず、その先にある「採用目標の達成」と入社後に活躍していただける「良い採用」にフォーカスしつつ、各工程でPDCAを回すのが、一番良い方法だと思います。
ぜひ、この記事が皆さんの採用活動のご参考になると幸いです。
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