優秀なエンジニアはどうやって採用する? リードタイム14ヶ月の成功事例からアプローチ方法を解説

昨今のエンジニア採用市場では、マネージャーやモバイルアプリエンジニアなど、市場価値の高いエンジニアになるほど採用倍率が高まる傾向にあります。競合企業と候補者を奪い合う争いを避けるためには、転職潜在層の段階から候補者にアプローチを仕掛ける必要性があり、各社がその戦略や施策に注目しています。

一方で、潜在層へのアプローチといっても何をどうすればよいのか、ということはあまり提唱されておらず、活動を補助するツール・サービスも海外に比べ日本では非常に少ないといえるでしょう。

本記事では、LAPRASが14ヶ月間をかけて採用したエンジニアの事例を基に、潜在層へのアプローチのフェーズを大きく3つに分割し、それぞれのフェーズでどのようなアプローチをしたか、また各アクションのきっかけとなった情報は何か、それぞれのフェーズでどのようなことを考えていたかといったリアルな採用担当者の心境を紹介します。

これにより、中長期期間でアプローチが必要となる潜在層の採用について、具体的なアクションのヒントとなることがゴールです。

どのサービスでもエンジニア採用はレッドオーシャン

「なかなか採用がうまくいかない」「このポジションはずっと採用できていない」と、多くのエンジニア採用担当者からお悩みの声をいただきます。

特に「リーダー」や「マネージャー」といった管理業務も担うポジション、もしくは「技術力が高い」「経験が豊富」といった業務のレベルが高い方を採用しようとする際には採用が難航することが多いでしょう。

この問題は、採用サービスを入れ替えても簡単に解決するものではありません。根本的な問題は「転職したい候補者」と「採用したい企業」の需要と供給のバランスが崩れていることですので、このバランスが特別に企業側に有利(つまり候補者には人気で企業側はあまり使っていない)媒体というものは見つけることは難しいでしょう。
もちろん、候補者側へのマーケティングを先行して行った新興サービスでは、一時的にそのようなことは起こるかもしれません。しかし、すぐに市場全体の倍率に近づいてくるはずです。

そんな背景から、昨今では転職サイト上で転職活動をしているエンジニアだけでなく、リファラル採用やダイレクト・リクルーティングなどを利用し、現時点では転職の意思はない「転職潜在層」に対してもアプローチの幅を広げる企業が増えています。

潜在層の採用は時間がかかる。ポジションオープン前から、「ゆるく接点を持つ」ことが重要

潜在層の採用は顕在層の採用に比べ倍率も低く、且つ転職活動前(多数の企業との比較検討前)にアプローチできるため、様々な面で採用に有利に働きます。

しかし、潜在層の採用は時間がかかります。もちろん、最初に一度声をかけたことがきっかけで転職意欲が高まり(もしくは入社意欲が高まり)、すぐに転職をすることもあるでしょう。しかし、多くの場合は転職意欲のない人に転職を検討してもらい、実際に転職をしてもらうには3ヶ月〜長くて3年ほどの時間がかかるものです。エンジニアは3年以内の離職率が70%以上(※1)ですので、最長3年を目安に考えると良いでしょう。

このとき、潜在層採用を理解して、きちんと割り切って施策を走らせることが大切です。

潜在層へのアプローチにおいて、採用要件が決定し、求人の掲載などポジションをオープンにしてから取り組み始めたのではやはりその分採用結果がでるまでに時間がかかってしまいます。つまり、明確に採用要件が固まる前、もしくはポジションオープン前から「候補となりそうなエンジニア」とゆるく接点を持ち、継続的にコミュニケーションをとり関係を作っておくことが大事です。

そして、いざ社内で採用が必要となり、要件が決まり、募集を開始した際に、その関係を活かし、自社の潜在層のプールの中から声をかけていきます。

もちろん、なにかの専門分野に特化したポジションの場合はこの通りではありませんので、ポジションオープン後でもよいでしょう。

しかし、開発チームの人数が多くなればマネジメントのポジションが必ず必要になりますし、事業が成長すれば多くのWebサービスでモバイルアプリを展開しますので、そのポジションが必要となるでしょう。将来的に必要となるポジションはある程度予測をつけることは可能です。

現場から採用要望が挙がってくるタイミングは多くの場合「今すぐ欲しい」という段階であることも多く、リードタイムを逆算し事業への影響(損失)を最小限にすることも採用担当者側に求められています。

自社で今後必要になるポジションを大まかに予測し、現場からニーズが挙がってくる前に粗目のフィルターで優秀なエンジニアをプールし関係性を築いておけば、それだけ募集公開から採用までのリードタイムも短くて済むはずです。

具体的な取り組みや、採用ツールは?

このような比較的粗目のセグメントの潜在層プールを作り、中長期的にゆるい繋がりを持っておくためにはどのような取り組みや採用ツールが必要になるでしょうか。

まず取り組みとしては、連絡先を取得する、徐々に転職意欲を高めてもらう、そして選考に乗ってもらうことを決意してもらう、といった態度変容を促す必要があり、それぞれタイミングを見計らい継続的に情報や社員との接点を設けることが必要になります。

この段階をこの記事では大きく3つのフェーズに分けて考えてみます。

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◯フェーズ1 : ポジションオープン前
・目的:1to1でコミニケーションが取れるよう連絡先を取得し、継続的にゆるく繋がっておく
・施策: Twitter DM、GitHub掲載のメールアドレス、イベントの名刺交換、リファラル、勉強会、LAPRAS SCOUT など

◯フェーズ2 : ポジションオープン後
・目的:段階的に転職意欲を掻き立て、自社への興味を高める
・施策: ご飯会などで現職についてヒアリングする、TGIFへ招待する(※2)など

◯フェーズ3 : 転職意思の顕在化後
・目的:選考に進んでもらったり、入社を決めてもらう段階
・施策: 特別な会食の設定、自社エンジニアに口説いてもらう場の設定、業務委託で仕事を依頼するなど

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この取り組みを補助するツール・サービスとしてタレントプールやCRMサービスの導入・運用を行うことがおすすめです。中長期でのアプローチでは候補者の情報管理がもっとも重要となります。その上で各サービス、ツールにはWeb上の行動検知機能やその他社内連絡を補助する機能など様々なオプション機能がついていますので、自社にあったものを選ばれてください。

海外ではこの動きが活発で、例えば以下のような方法が取られることもあります。これらは既にWebマーケティングなどの領域では多くの企業が実践していることですので、おそらく数年以内に採用業務でも一般的なものになるでしょう。このような技術や方法論の進化は非常に早いものですから今後注目してみてください。

・採用ピッチ資料といったコンテンツを公開
・候補者がコンテンツをダウンロードする際、候補者のメールアドレス等の情報を取得
・候補者が再び自社のウェブサイトやテックブログにアクセスしたことを検知
・自動でスカウトやイベントへの招待を送る
・これらの活動が記録され分析される

次項ではこれらの取り組みやツールの利用について実際の採用事例に沿って紹介していきます。

LAPRASが行った14ヶ月の採用アクション

ここから、実際にLAPRASの社員の中で、クローラーエンジニアの両角を採用した事例から具体的にどのような活動をすべきか紹介していきます。

採用したエンジニアのスキル・志向性、個別具体のアウトプットはこちらです。

サーバサイドを主軸に、特にクローラー開発に長け、フロント・インフラ周辺なども対応ができる非常に優秀なエンジニアです。またDJとして社内の雰囲気を盛り上げたり、自らQiita、はてなブログ、note等で記事を執筆し、採用広報にも貢献しています。

 

上記の14ヶ月の候補者の活動と、それに対するLAPRASの採用活動の遷移を時間軸で辿っていくとこの様になります。

※上記の、時系列に並んだ様々なサイトの活動のログは、本人であれば「LAPRAS」から確認することが可能ですし、採用企業であれば「LAPRAS SCOUT」から確認することが可能です。

それぞれ順を追って紹介していきます。

ポジションオープン前

<ポイント>
・初回連絡は情報交換目的。とにかく好印象と印象づける。
・次の接点を候補者と約束する。そして繰り返す。
・情報をCRMに記録する。リマインダーで忘れず再連絡。

<詳細>
2017.7.10にLAPRAS SCOUT(このときは「scouty」というサービス)を利用し、GitHubに掲載されているメールアドレス宛に連絡。まずはランチへのお誘いをしました。

言うまでもありませんが、一番はじめがその後の印象をつくりますので、ブログ記事や特徴のある経歴など、その本人にしか言えないことについてしっかり言及し、「あなただから声をかけた」ということを伝えるように意識しています。

特に重要なことは、声をかける目的を選考の誘いではなく情報交換とすること。いずれ選考を受けて欲しいエンジニアですので、自社の事業やプロダクトの将来発生しうる課題などの相談をしたいという旨を伝えます。

また、一週間後にランチをセットし、代表とカジュアルランチを実施。ランチ前に情報収集を行い、両角が書いているQiitaの記事などから当日の話題を用意しておきます。当日は自社の開発の課題感を伝えるとともに、記事などを引き合いに出しながら話しを進めることでスキル感の把握や興味付けも行えます。

<本人による後日談>

「やはり自分のことを調べてくれていたり、そのことを話題にしてくれるのは嬉しいですね。単に会社概要の説明だけで終わらせたり「開発どうですか?」といったバックリな内容をしても「時間がもったいない」と思ってしまうので、そういった面談だったら印象に残らなかったと思います」

 

当日のカジュアル面談(ランチ)の一度で接点を終わらせてしまうことは勿体ないことです。
潜在層採用は継続した接点づくりが重要となりますので、「次はいつ会うか」「次はお互いにいつ情報交換をするか」といった次の約束を取り付けることが大切です。

この時は、事前の情報収集の段階で、「機械学習系のイベントへ参加している」ということをLAPRASを使ってキャッチアップしていました。そのため、自社で1ヶ月後に開催する近しい内容の勉強会にもここで誘っています。

またイベントで会うまでに時間が空いてしまうので、オフィスの案内もできないかと打診。7月の末にオフィスに来てもらい、社内の様子やプロダクトを実際に見てもらいました。

 

<本人による後日談>

「このときは代表とCTOと話をしたんですが、エンジニアとここで話せたのは良かったです。もちろん開発チームの様子や方針など、深い話ができたことは良かったですし、何より実際にプロダクトの課題について意見を出しているうちに、なんだかプロダクトに愛着というか意識が向きましたね。あと、実際にオフィスに足を運んだことで、スタートアップの会社の雰囲気を感じれたことも良かったです」

 

そして、ランチで聞いた情報、たとえば「〇〇の課題について話した」「採用業務にも興味があった」といった内容はタレントプールにしっかり記録しておき、次にお会いした際の会話のネタにすることで、継続的なコミニケーションが取りやすくなります。

このようにCRM管理は非常に重要になりますので、EXCELやGoogleSpreadsheetであっても、「どんなことを話したか」「次の約束」といった情報をしっかり社内で共有できるようにしておきましょう。ツールにリマインダー機能がついていれば設定し、なければカレンダーに次のアクションを登録しておくことで、連絡も忘れませんので、このようなマメなこともめんどくさがらず行うことが重要です。

ポジションオープン後

<ポイント>
・既存のプールから順次声がけ
・転職意欲の見極めと、転職意欲に沿ったコミュニケーション

<詳細>
2018年2月のタイミングで、今後の入社メンバーが増えることが確定し、これまで大きくWebアプリケーションの開発チームとしていたものから、クローラーの開発を独立させ別のチームで行うことになり、チームを2つに分解することになり、採用ポジションをオープンしました。

これまで接点のあった候補者の方たちの中でポジションと会う方を探し、その中から両角を含め、数名の方を採用したい候補者と位置づけアプローチを開始しました。

両角の場合、メールを通してイベントの案内をし共催イベントで再び会うことに。イベントには業務内容の近いエンジニアも同席させ会話をしてもらいました。

 

<本人による後日談>

「Facebookでscouty(旧名)のイベント開催や「記事を公開しました」というのを頻繁に発信しているのを見ていて、内容が面白かったので記事はほとんど読んでいました。それでイベントがあるのも実は知っていて、誘われたことが決め手で行くことを決めました」

「いきなりイベントに誘われても行かないことが多いと思いますが、普段から情報に触れている企業 だったら、誘われたら行こうかなと思ってしまいます。SNSで接点を持っておいて、ゆるいつながりをキープしていたっていうのは、自分には効果的だったと振り返ってみて思いますね」

 

ここでは両角を一例として挙げていますが、並行して他の候補者にもアプローチをしています。プールの中で他にもポジションとマッチする候補者がいれば積極的にアプローチしましょう。

転職意思の顕在化後 – クロージング

<ポイント>
・自社の課題を伝え、“口説く”
・応募の意思決定を促すコンテンツ
・内定出しをゴールとしない

<詳細>
自社のポジションがオープンしたからといって、上記の両角のように候補者の転職意欲が高いわけではありません。継続的な接点を持ってもすぐに転職意欲が高まるわけではありませんので、タイミングを見計らい、選考の打診を行う必要があります。

ここで、エンジニアの転職意向の高まりは「SNSのプロフィールを変えた」など、いくつかの活動から予測することができます。(※3)LAPRAS SCOUTを利用するとWeb上の活動から、たとえばTwitterの投稿内容を機械学習により抽出し、「転職するかもしれない」というアラートを出すことができます。

両角は、2018年6月ごろよりこのアラートがいくつか発生し、内容的にも転職意思が高まっている様子が伺えました。

同時期にイベントで会えることができたため、COOから現職の業務での悩みや、今後のキャリアの志向性をヒアリング。そして自社のプロダクトの課題を説明することで応募の意欲の高まりを狙ったコミニケーションをとりました。

<本人による後日談>

「やはりこのタイミングでWantedly やLinkedin のプロフィールを更新していましたね。プロフィールを更新しておいて、スカウトがくればラッキーかな、ぐらいの気持ちでした。その時に声がかかると、スカウトではないにしろその会社に興味は持ちやすい。また、イベントで話す機会があった時に仕事の悩みを話してそれに対しての回答を聞くことで、自然とその会社が持つ価値観を知るきっかけになり無意識に現職との比較をしていたんだろうなと思います」

そして、約1ヶ月後の6/25 に両角の方から選考を受けたい旨のメッセージをもらい、7月に選考に乗ってもらうことになります。

<本人による後日談>

「本格的に転職活動を開始したタイミングで、一番最初にLAPRAS (旧scouty)へ連絡しました。継続的にイベントやSNS上でのゆるいやりとりがあったので連絡することへの心理的なハードルが低かったということが理由でしたね」

 

また、応募するかどうかを迷った際にこの記事を読み、「ちゃんとした開発チームがあって開発プロセスも良さそう」と感じ、応募意思が強くなったことを覚えています。

 

転職活動時を思い出しても、開発ブログや社員紹介資料、その他のWeb上のコンテンツはやっぱり見るので、会社名を知るキッカケとしてだけでなく、応募や入社の意思決定の材料としてもとても大事だと思います。

選考に乗ってもらいさえすれば一安心ということではありません。候補者側も、自社だけでなく、他の企業の選考も並行して受けていることがほとんどです。

両角の場合も、ヒアリングで他社も受けていることを知っていましたし、Web上の活動から、選考期間中に採用競合のイベントに参加していることがわかりました。

エンジニア採用では、ストレスの掛かる採用活動を長期間行いたくないという理由で、採用プロセスが短かったり、先に内定の出た企業に入社を決めるということはよくあることです。そのため、通常のスケジュールよりもできるだけ短くし全体としてのスケジュールは、スキルチェック、カルチャーチェック、そして役員面談を経て内定を出すまで2週間程度で終えました。

結果的に採用競合よりも先に内定を出すことができました。そして内定がでていれば候補者とのコミュニケーションは取りやすくなります。

両角からは「いくつかの採用競合に内定をもらい悩んでいる」ということを聞き、二度目の役員クロージングを経て無事内定となりました。

当初志望度が高くとも、入社するまで気が抜けないことに注意してください。入社までの間に採用競合に意識が向いてしまうということへの対策も重要です。

 

<本人による後日談>

「結論を出すまでは本当に悩みました。もちろん最終的にはプロダクトや会社に魅力を感じ入社を決めましたが、選考プロセスが短かかったこともあり、他の企業より多く連絡を取り合えましたし、忙しい時期でしたが会食の時間も調整しやすかったです。もしこの内定連絡や会食のタイミングがもっと後ろになっていれば、入社していない可能性もあったと思いますね」

まとめ

本記事では、採用が難しいポジションは潜在層を狙うべきであり、潜在層の採用方法はポジションオープン前からゆるく接点を持つことが重要という話をしました。

そして、リードタイム14ヶ月の採用事例から、狙いや具体的なアクション例について紹介してきました。

中長期に渡るコミニケーションは、なかなか「キッカケ」を作りにくいものですが、定期的にSNSやブログ、イベントの参加情報をキャッチアップすることで、「最近はどんな活動をしているんだろう」「何に興味があるんだろう」「どういうフックで誘おう」といったキッカケづくりができるようになります。

単純に定期的にメールを送ってみる、といったアプローチよりも格段に多彩なコミニケーションができるようになりますので、「エンジニアのWeb上の活動は見ていない」という方は、是非日頃から観察するようにしてみてください。

 

他の企業の潜在層採用事例はこちら。

※1:エンジニアの7割は3年以内に転職!? 職種ごとに見る勤続年数分布

※2:タレントプール採用の手法 #1 〜LAPRASのTGIF〜

※3:【転職時行動の調査レポート】エンジニアはエンジニア以外の職種と比べて、圧倒的に“友達のつて”で転職活動する

 


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