「新入社員の呪いを解くため」に、CTOが気をつけているポイントをご紹介

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新年度、新入社員を迎えている人事の方も多いのではないでしょうか。採用したメンバーに早期に活躍してもらうために必要なのが、新入社員オンボーディング(受け入れ研修)ですが、他社のノウハウは意外と知る機会が少ないものです。そこで今回は、LAPRASのCTOにオンボーディングにおける「新入社員の呪い」と「その解き方」を聞いてきました。

この春、オンボーディングを担当されている方や、これから受け入れの準備をされる方のご参考になると幸いです。

目次

「新入社員の呪いの解き方」というスライドを作った経緯

rocky:元々はウェビナーに登壇する際に、「採用かオンボーディングについて」というテーマの指定があり、その中であれば「オンボーディングに」について語ろうと思って、登壇資料としてスライドを作成しました。

ーLAPRASは採用ツールを作っている会社ですが、あえて「オンボーディング」を選んだ理由はありますか?

LAPRASは採用選考について独自性が高く、どうしても他社では再現しづらいノウハウが含まれてしまい、他社の方の参考になるような話をするのが難しいと判断しました。一方で、LAPRASでは専門チームを作って新入社員のオンボーディングに力を入れていますし、他社でも再現性のある形にまで整えられていると思います。自分自身も3年ほどそのチームで一緒にオンボーディングを試行錯誤してきたこともあり、オンボーディングについて話してみようと思いました。

ーLAPRASが専門チームを作ってまで、オンボーディングに取り組んでいる理由はなんでしょう?

良い人を採用しても立ち上げが上手くいかないと、採用の努力が水の泡になってしまうので、影響の大きい要素だと捉えているというのが格好良い理由です。格好悪い理由としては、フルリモートの企業なのでどうしても接触が少なく、新入社員が悩みを抱え込みやすく立ち上がりづらいというこれまでの反省等も踏まえて、オンボーディングを手厚くしています。

新入社員にかかる「呪い」について

ースライドの中身についても深掘りさせてください。「呪い」というキャッチーな表現が出てくるのですが、具体的にどういうものが呪いになってしまうのでしょうか?

よく聞くオンボーディングの失敗パターンとして、スライドのような例があります。高いパフォーマンスを期待されて入社した社員の方でも、会社が変わると、最初は学習が必要です。その時期を上手く過ごせないと、どんどん自己肯定感が下がって辛くなってしまい、状況を打開するために焦って行動してしまいます。しかし、パフォーマンスを出すために必要な情報が足りていないため、行動してもあまり成果に繋がらず、周囲からの評価も下がってしまい…というのが「呪い」と表現したものです。

この呪いのサイクルに入ってしまうと、なかなか抜け出すのは大変です。不安からパフォーマンスが落ちてしまうと、さらに焦って不安が強まるという悪循環になってしまいます。また、社内からの評価を気にするあまり、仕事を抱え込んだり他責な振る舞いをしてしまうと、さらに社内の評価が下がってしまい、こちらも悪循環になってしまいます。

ーこれらの「呪い」については、実体験がもとになっているんでしょうか?

お恥ずかしながら、そうです。自分自身も過去に呪いにかかったことがあり、その時は「本当にチームのためになるようなもの/向き合うべき課題」ではなく「自分が評価されるような分かりやすい成果が出るもの」を出すことで、自分の居場所を確保して不安を和らげることを優先してしまったという反省があります。

一方で、受け入れる側としては、そのような新入社員の不安は分かりつつも「自分が評価されるような分かりやすい成果が出るもの」を優先されると「本当に向き合ってほしい課題」が疎かになるので、できるだけ「呪い」の状態は避けたいということもあり、どういう状態に新入社員があれば、呪いにかからずに立ち上げができるのかというのはずっと課題を感じていました。

そのような問題意識で、LAPRASに入社した際には自分から既存メンバーと期待値を揃えに行く動きをすることで、不安を和らげていたのですが、これを新入社員個人にそれぞれ期待するのではなく、誰でもできるような制度設計にした方が良いのではないかと思って、オンボーディングにも関わり続けています。呪いを解く…というよりは呪いと上手く付き合うために、そして大きな呪いにかからないように、LAPRASではオンボーディングが設計できていると思います。

呪い」を解くために、受け入れチーム/人事がそれぞれできること

新入社員の呪いを解くために、受け入れるチームができることはなんでしょうか?

スライドではいくつか具体的な例を紹介したいのですが、まず大前提として「自分たちのチームに迎え入れるんだから、自分たちが立ち上げるんだ」という意識をチーム全員が持つことだと思います。いわゆる「お手並み拝見」のような動きは絶対にしないこと。そして、新入社員が立ち上がるまでは、チームで責任を持って立ち上げを行うこと。

そのための具体的なノウハウとして、トレーナーやメンターの制度であったり、ペアでの作業であったり、できるようになったことを可視化していく「実績解除マップ」等があると思っています。

新入社員の呪いを解くために、人事担当者にもできることはありますか?

会社全体にそのような「迎え入れるチームが立ち上げるのが当然」という文化を醸成してもらえると、チーム単位での意識づけが楽になると思います。そこが「新入社員が頑張るもの」という文化だと、なかなか受け入れ体制も作りづらいので。

また、新入社員を受け入れる方は、通常業務プラスアルファになるので、ある程度負荷が高まります。それについても(新入社員が入ることで)「負荷が高くなるからフォローする」「通常業務を減らす」のが当然であるという文化を作ってもらえたり、またリソース等の調整を人事や経営側でお願いできると、非常に助かります。

あとは、チームに限らず共通する部分については人事で担当してもらえると現場の負担は減ります。例えば、定期的に新入社員からアンケートの回収して、そのフィードバックを各チームに伝えるとかは、非常に助かっています。チームで受け入れていると、ある程度慣れてしまう部分もあるので、そのような時に「こういう部分がまだ改善できますよね!」や「他のチームではこういうことやってうまくいっていたみたいですよ」等と人事担当から追い風を吹かせてもらえると、またチームで背筋を伸ばして頑張ろうという気持ちになります。

新入社員以外にも呪いがかかる場面があるんでしょうか?その際の対策はどうしていますか?

社内で部署異動したメンバーや、育休等から復帰したメンバーにも、同様の呪いがかかる可能性は高いと思います。これはまだ今もトライを続けている状態なのですが、復職したメンバーにも最初やトレーナー、メンターをつけて、呪いがかからないように工夫しています。

また、復帰したメンバーや新しくチームに加わったメンバーを「新入社員」と捉えることも有効だと思います。もちろん、そもそも会社にいたので前提知識等はあると思うのですが、パフォーマンスについて不安に思う気持ちは新入社員と同じなので、受け入れるメンバーが「もしかしたら呪いにかかるかもしれない」という意識を持って受け入れることが大事かなと思います。

ー登壇後にスライドを公開してから、SNS等でも反響があったかと思います。どういう思いで見ていましたか?

とても嬉しかったです。他職種の方からも反響があり、意外とエンジニアだけでなく、いろんな職種の方にも通ずるものがある話なのかもしれないと思い始めました。

一般的に「転職したら個の力で100日以内に結果を出せ」というような考え方もあると思うのですが、「個人の成果を出せるようにチームで支える」という考え方が個人的には好きなので、その考え方への共感をもらえたのが、一番嬉しいポイントだったかもしれません。

まとめ

今回はLAPRASのCTOのrockyさんに、オンボーディングの「呪い」とその対応策についてお話をお伺いしました。採用後の立ち上げまでを、現場と人事担当でそれぞれしっかりと分担し、フォローすることで、より採用した方の活躍の幅を広げることができます。この記事が御社のオンボーディング設計の参考になると幸いです。