エンジニア採用が難しい5つの理由と成功のポイント

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ここ数年、エンジニア採用の難易度は上がっています。
多くの企業が、エンジニアを採用したいと思いながらも、思い通り採用できている企業は多くありません。

この記事では、なぜエンジニア採用は難しいのか?を解説し、成功するためのポイントを成功事例とともに紹介します。この記事が、エンジニア採用に苦戦している採用担当者の方にとって、前向きにエンジニア採用に取り組むヒントになれば幸いです。


採用市場から見るエンジニア採用が難しい5つの理由とは

では、エンジニア採用はなぜ難しいのでしょうか?
採用市場やエンジニア採用特有のポイントがあります。
ここでは主な5つの理由をあげていきます。

求人倍率が高い

dodaの発表している2023年1月の職種別求人倍率によると、「エンジニア(IT・通信)」つまりITエンジニアの求人倍率は11.17倍です。

一方で、例えば「営業系」は2.49倍、全体では2.34倍の求人倍率になっています。

つまり、エンジニアの求職者一人に対して11.17件の求人があるのに対して、営業の求職者一人に対しては2.49件の求人ということになります。単純計算で言えばエンジニア採用は、営業職を採用する約5倍難しいといえます。(なお、これはあくまで求人倍率から出した単純計算です。)

実際は求人倍率が高ければ、ただ募集を出しているだけで応募が来る可能性やエージェントから来る可能性は減ります。なぜなら、採用競合が多ければ多いほど企業は採用手段を工夫する結果、リファラルやダイレクト・リクルーティングといった候補者フレンドリーな手段が使われるようになります。

難しいエンジニア採用を成功させるには、その現実を踏まえて可能な限り多くの時間やリソースを投入していくべきです。

エンジニアの給与水準の高まり

コロナによってDX推進に必要となるIT人材を求める企業が増えており、それに伴い、エンジニア未経験・経験の浅い層のポテンシャル採用も増加傾向にあります。20代を中心とした若年層のIT業界への転職活動は活発になっており、ジュニアレベルのエンジニアの年収平均は減少傾向にあります。逆に即戦力として迎えられるミドルレベル以上のエンジニアの年収は増加傾向があります。

エンジニアの市場価値が高まりに伴い、エンジニアに対する給与水準や待遇条件も高まっています。
特に、スキルの高い経験者の待遇は上昇しており、競合他社と比べて条件面で負けてしまったというケースや、エンジニアが求める給与水準と企業が提示する条件がズレてしまうことがあります。

エンジニア職の理解が難しい

採用を担当するのは人事担当が多いですが、非エンジニアの担当者がエンジニア職を理解することが非常に難しいです。エンジニアリング知識をインプットすることが難しいばかりか、エンジニアの関わる領域は変化の速度も速く、新しい言葉や役割が次々と生まれキャッチアップも大変です。また、転職やキャリアに関する志向性や価値基準もエンジニアと一般的なビジネス系の職種とは異なる点があります。

その結果、なかなかエンジニアの候補者の反応をイメージすることが難しく、採用のために良かれと思ってやったことが、かえってエンジニア採用にとって逆効果になることもあります。

例えば、採用を進めるためにスカウトメールを送ったら「ばらまきメールだ」と思われてSNS上でつぶやかれてしまう、カジュアル面談をしてもエンジニアの知りたいポイントを抑えていないので自社への意向があがらない、など正解がわからぬまま迷走して、採用できないばかりか、採用担当が疲弊していくこともあります。特にエンジニア採用に慣れていない場合は、そういった難しさに苦しめられることが多いものです。

逆に、もし、採用担当にエンジニアの経験があったり、エンジニア採用の経験が豊富が故にエンジニアの気持ちがわかる採用担当がいる場合はかなり大きなアドバンテージを持っていると言えるでしょう。

副業やフリーランスなどエンジニアの働き方の多様化

 政府による働き方改革の推進や副業の推進により、エンジニアの働き方が大きく変わってきています。それに伴い、企業に所属する社員としてではなく「フリーランス」として働くエンジニアや、副業をするエンジニアが増加しています。

副業を転職の入口と捉えて、副業を切り口として採用する企業も現れており、エンジニアの転職の仕方も多様化しています。エンジニアの働き方が多様化していることは、魅力的に思われる環境も多様化しています。
個人個人に合わせた働き方の提案をしていかないと採用には繋がらないので難しさがあります。

採用単価の高さ

2022年のマイナビの「中途採用状況調査2022年版」の調査結果によると、「IT・通信・インターネット」企業の系の中途採用の平均金額は574万円となっています。

全体の全業種の平均が484万円であり、大きく上回っています。つまりエンジニア採用には、それだけ多くの費用がかかっている状況です。

出典:マイナビ 中途採用状況調査 2022年版

エンジニア採用がうまくいかず苦戦する企業の5つの特徴

エンジニアの採用要件が、採用市況や自社の採用レベルからずれている

エンジニアからの応募がない、スカウトする人材が見つからない場合は、求人要件が厳しすぎる可能性があります。エンジニア採用市場は非常に厳しいという市場環境を考慮せずに、一方的に自社の理想を求人要件に盛り込むだけでは、なかなか採用にはつながりません。

自社の強みやポジションなどを客観的に捉えることで、自社が採用できる人材を考慮した上で採用したい基準を作成する必要があります。

エンジニア候補者に魅力的なポイントを訴求できていない

エンジニア候補者の母集団形成ができない。カジュアル面談から次に進まない。内定辞退率が高い。このような悩みがある企業で多いことが、自社の魅力をうまく伝えきれていないことがあります。

エンジニアは多くの企業からスカウトを受けています。その中で魅力的だと思ってもらうためには、採用プロセスの中の様々なタッチポイントで自社の魅力を感じてもらう必要があります。そのためのコンテンツ作りや機会作りといったことが必要になります。

エンジニアを巻き込んだ採用体制ができていない

エンジニアの採用にあたって大きなハードルとなるのがスキルの判断です。

エンジニアのスキルを判断するにはプログラミング言語やフレームワークといった技術的な専門知識が必要になります。非エンジニアの人事担当者の場合は、細かいところまでを理解し、エンジニアのスキルを見極めることが困難です。その場合には、社内のエンジニアに協力をしてもらう採用体制を取ることが有効ですが、この体制ができていない場合は、人事担当者1人で採用することは非常に困難になります。

また、技術レベルを示す客観的な指標は少なく、資格である程度は認識できたとしても、実際の業務でどこまで活躍できるかは未知数です。また、過去の職歴の実績がある場合でも、実際に担当した業務一部分だけというケースもありますので、十分に吟味する必要があります。

顕在層候補者へのアプローチばかりで競合に取られている

上記の求人倍率11倍という数字にも現れている通り、転職をしている層(転職顕在層)は非常に競争熾烈です。優秀なエンジニアであれば数十社から声をかけられていることも少なくありません。転職市場に現れているエンジニアは競争が激しいことを認識しなくてはなりません。そのため、面談に進むエンジニアが少なかったり、内定後に辞退されたりということが起こります。

他社に比べて事業の魅力や報酬が十分にあり、エンジニアへの魅力を相当感じてもらえないと採用に至ることはできません。

候補者へのパーソナライズが十分にできていない

エンジニアには求人広告を出すだけではなく、リファラルやダイレクトリクルーティングなどの直接アプローチをする手法を試すことが増加しています。その際に、単に定型メールをばら撒くことは非常に危険です。定型文のメールをエンジニアは何十通ともらっています。そのために定型文でメールすることは目に留まらないどころか、SNSに掲載されてブランド価値の低下に繋がることもあります。その候補者に対してパーソナライズされたコミュニケーションを実行して、いかに興味を持ってもらうかを考える必要があります。

エンジニア採用を成功させる5つポイント

求人要件を市場環境を踏まえて書く

自社が欲しい人材要件だけを書くと、ピンポイントの人材要件になったり、待遇が市場環境と合わないことがあります。自社の経営方針や課題から本当にどのような人材が必要なのかをエンジニア組織責任者とすり合わせて求人要件を記載しましょう。

詳しい求人の書き方は下記の記事を参考にしてみてください。

エンジニアを採用に巻き込む体制作り

ダイレクトリクルーティングの場合は特に必要ですが、専門知識が必要なエンジニア採用には、エンジニアを巻き込んで進めることをお勧めします。

特に、エンジニア組織の責任者であるCTOには採用プロセスに参加してもらいましょう。どのような人材をスカウトするのか、どのようなメール文面にするのか、エンジニアのチェックを経ることで採用成功率は大きく向上します。

また、カジュアル面談などでCTOなど責任者から話をしてもらうことで、エンジニア組織への魅力を持ってもらうことも必要になります。

エンジニアの個性の見極めについての参考記事はこちら

採用プロセスに合わせた自社の魅力を発信する

採用プロセスにおいて自社の魅力を伝えることが重要です。

例えば、最初応募までの段階では、事業やプロダクトに対する理解をしてもらう必要があるので、理解促進に繋がるコンテンツを作成します。採用プロセスが進み、面談から内定の段階では、自社を選んでもらうためにより組織の内面や事業の成長性など候補者の合わせた魅力を提供していきます。

他社の違いや、自社でしかできない体験などを事前に整理し伝えられるコンテンツを用意しておくとよいでしょう。

採用広報についての参考記事はこちら

副業を活用する

正社員での採用の場合は、競争率が高くなるために、まずは副業からアプローチすることも有効です。副業なので現在転職活動をしていない転職潜在層にアプローチすることができます。副業の方がハードルが低いために、副業をきっかけに自社が欲しいエンジニアと接点を構築することも考えられます。

内定承諾率をあげる

転職をしているエンジニアは複数社の選考を受けていることが多いです。そのため、いくつかの内定をもらった上で最後に天秤にかけられ内定辞退となることがあります。せっかく選考が進んだ最後に辞退されるとそれまでのコストや時間が無駄になってしまうので、内定承諾率を上げることも重要です。

内定受諾率を上げるノウハウをまとめたこちらの記事を参考にしてみてください。

エンジニア採用にオススメの採用手法・採用媒体5選

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業自らが自社に合う候補者を探し、メールなどでスカウトを送ることで直接アプローチする採用手法のことです。求職者からの応募を「待つ」のではなく、企業側からアプローチする「攻め」の採用手法として注目されています。

メリットデメリット
・欲しい人材に的確にアプローチ
・採用候補者体験をコントロールできる
・採用候補者体験に時間を要する
・現場エンジニアとの協力体制が必須

自社の欲しい人材にアプローチできるために、ブランド認知があまりないスタートアップでも採用につなげることができる手法ですが、エンジニアとの連携が必須であり体制の構築が成功のポイントです。

人材紹介(エージェント)

人材紹介とは、人材紹介会社、エージェントから求職者を紹介してもらう採用手法のことです。自社に合う人材を紹介してもらえるため、工数をかけずに効率よくターゲット層と接触できます。

メリットデメリット
・採用工数の削減
・エージェントしか活用しない層の獲得
・費用が高い
・Web系エンジニアは使わない傾向

基本的に成果報酬制のため、採用とならない限りコストは発生しないのですが、成功報酬金額は高く費用は高くなる傾向です。一方で、採用工数は削減できますが、エージェントと連携をうまくとることが必要です。

求人広告

求人広告とは、求人サイトへ求人を掲載して求職者からの応募を待つ採用手法のことです。

メリットデメリット
・多くの人にアプローチが可能・入稿までに工数がかかり、情報がホットで無くなる可能性
・候補者対応の工数が増える

多くの人にアプローチが可能ですが、入稿までに工数がかかることで情報が届く頃には自社の状況が変わっていることもあります。ブランド認知があまりない企業は応募が少なかったり効果が見込めないこともあります。

リファラル

リファラルとは、社内外の信頼できる人脈を介した採用活動・採用手法を指します。

メリットデメリット
・低予算で人材を獲得できる
・ミスマッチの少ない採用が可能
・人事全体を巻き込む
・すぐに効果は出ない

自社のことをよく知っていて信頼できる人からの紹介のためにミスマッチが少ないことや採用コストが低いことが大きなメリットです。一方ですぐに効果がでないことや、そもそも働きやすい環境作りや社員のエンゲージメントを高めることが必要です。

アルムナイ

アルムナイ(alumni)とは「卒業生・同窓生」を意味する言葉で、「アルムナイ採用」は、企業を一度退職した社員を再雇用する採用手法を指します。

メリットデメリット
・ミスマッチの少ない採用が可能・退職後も関われる環境構築が必要

一度会社に所属したことのある人なので、ミスマッチが少ないことが特徴です。一方で、退職後に繋がりを保つような仕組みを構築しておくことが必要です。また多くの人数を採用することは難しいということもあります。

採用成功事例から学ぶエンジニア採用のコツ

エンジニアとのスクラム採用での成功事例

登山アウトドア向けWEB サービス・スマートフォンアプリ「YAMAP」の開発・運営をする、株式会社ヤマップ。
採用するそれぞれのチームのリーダーと事業を牽引するCTO、そして人事採用担当が協働することで、多くの候補者との魅力的な出会いを作りだしています。

<ここがポイント>
・会社一丸となって、エンジニア採用に向き合う
・CTOが自社の魅力を伝える

自社の魅力を様々なポイントで伝える成功事例

「はてなブログ」「はてなブックマーク」​​​​マンガビューワ「GigaViewer」等のWebサービスを提供している株式会社はてな。選考を特別な体験にしつつ、候補者と採用者が深く理解し合える独自のプロセスを展開し、自社ならでは魅力を伝えて採用成功させています。

<ここがポイント!>
・エンジニアが知見や思考を外部にアウトプットすることを推奨
・Extension機能を活用し、イベントから採用候補者を探す
・選考プロセスに独自の「技術ディスカッション」

副業を起点とした採用成功事例

WEBサービス・アプリケーションのリニューアル・リファクタリング、モバイルアプリのリニューアル等の事業をされている株式会社UZUMAKI様。副業を起点に転職潜在層へもアプローチすることで企業カルチャー・マインドに共感してくれる候補者の見つけ採用に成功。

<ここがポイント!>
・マッチした候補者に代表自らTwitterDMでアプローチ
・多くのエンジニアとLAPRAS SCOUTを通じ中長期的な関係を築くことが大切
・ハイレイヤーのエンジニアにもカジュアルにアプローチできる

まとめ

ITエンジニアの採用市場はますます厳しくなっています。
特に優秀なエンジニアを採用するためには、転職顕在層だけでなく、転職潜在層にもアプローチをしてみると良いでしょう。

ブランド力がまだ弱いスタートアップでは自ら採りにいく積極的なアプローチが求められます。
今回ご紹介した方法を活用して、エンジニア採用が少しでもうまくいくことを願っています。


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