ハイミドル層のエンジニアを獲得する採用アプローチ

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ITエンジニアは、そのスキルによってジュニア層、ミドル層、ハイ層などに分類され、それぞれの特徴に応じたアプローチ方法で採用されるのが一般的です。なかでもハイミドル層(この記事では以下、ハイ層・ミドル層をまとめて「ハイミドル層」と呼びます)は候補者の母数が最も少ない上に、多くの企業から引く手あまた。採用市場では激しい争奪戦が繰り広げられています。

今回は、最新のエンジニア採用市場の動向にも詳しいLAPRAS SCOUTの運用コンサルタントに「ハイミドル層のエンジニアを獲得するためにどんな採用アプローチが有効なのか?」について語ってもらいました。

<インタビュイー紹介>
LAPRAS株式会社 LAPRAS SCOUT Pro事業部
辰巳夢治/Yuji Tatsumi

東京大学工学部を卒業後、2014年からITコンサルティング企業でキャリアをスタート。総合商社向けシステム導入案件でエンドユーザー側のPMOを務め、自社採用業務も含めて5年間の経験を積む。その後、IT人材の採用と転職支援に強い関心を持ち、バイリンガル人材向けの転職支援に従事。求職者と企業の両方とコミュニケーションを取りながら、ITエンジニアの転職支援を行う。

2023年1月にLAPRASに入社し、キャリアエージェント部門の責任者を経て、現在はLAPRAS SCOUT Pro事業部にて企業のエンジニア採用を支援している。

目次

「ハイミドル層」は社内の中心的な役割を担うエンジニア

一般的に「ハイミドル層」といった場合、どんなエンジニアを指しますか?

辰巳:採用媒体によって定義は異なりますが、おおよそ「年収700~1200万円台のエンジニア」のことを指すと捉えておけばいいでしょう。この年収帯のエンジニアは「特定のチームやプロジェクトの中心的な役割を担える程度のスキルレベル」を持っていることが多いのが特徴です。ただし、いわゆるエグゼクティブ、CTOなどの経営レベルまでにはまだ至っていない段階の人、というイメージです。一言でいうと「完全に実務から離れるわけではないが、チームのリーダー格やマネジメント領域を担当しているエンジニア」と表現できます。

直近の採用市場では、ハイミドル層の獲得しやすさはいかがでしょうか?

辰巳:そもそも候補者の数が限られるため、中長期的な目線で見てもずっと採用しづらい状態が続いていたのですが、直近はさらに難しくなってきていると感じます。主な理由は企業側の事情によるものです。2022年後半ごろまではスタートアップが積極的にプロダクト開発への投資を行う状況で、同様に「エンジニアにも積極的に投資をしよう」という企業が数多くありました。エンジニアへの提示年収も高騰していく「エンジニア転職バブル期」ともいえる状況にあったわけですが、現在はそうした動きもかなり落ち着いています。

現在の市況としては、たとえばプロダクト開発も「限られた予算の中で、まずはスモールスタートで開発プロジェクトを立ち上げよう」という傾向に変わってきていますし、それに伴い一人ひとりのエンジニア採用に保守的な企業が増えてきました。外資系や一部のメガベンチャーに倣うかのような、極端に高いオファー金額が見られるケースも減っています。企業が求める人物像にも変化があり、ひとつの技術的に秀でたエンジニアよりも採用や組織管理など、多角的な役割をこなせる人材を求める企業が増えてきている印象です。

▼直近のエンジニア採用市況についてはこちら▼

ハイミドル層の獲得を目指す際のポイント

ハイミドル層を獲得したい場合、どんなことに気をつけたらいいですか?

辰巳:前提としてハイミドル層のエンジニアと一口で括ることは難しく、「企業によって求める役割が異なる」という点を理解しておいたほうが良いでしょう。どんな役割が求められるのか、よくあるパターンを3つほどご紹介します。

ハイミドル層に求められる3つの役割

①特定の技術領域のテックリード

  • 開発・設計領域をリードできる
  • 特定の技術領域におけるプロフェッショナルである

といったことを求められる役割です。純粋に技術領域だけの話なので、比較的イメージしやすいのではないでしょうか。この役割はスタートアップから一般、中堅・大手企業まで、比較的幅広い企業層から求められます。

②何でもできるフルスタックエンジニア

  • フロントエンド、バックエンド、インフラなど、領域を問わず幅広く活用できる
  • それぞれの領域で、雑でも良いから動くものを全部作れる

といったフルスタックエンジニアの役割です。まだエンジニアが社内に1~3名程度しかいないフェーズのスタートアップなどでこうした役割が求められることが多いように思われます。

③エンジニアリング以外の仕事もこなせるエンジニア

プロダクト開発以外の仕事も求められる役割です。プロダクトマネージャーやエンジニア採用の責任者、技術営業のような立場でフィールドセールスをサポートするなど、技術面以外での自身の立ち位置を持っている方を指します。社内ではエンジニア組織とほかのチームのとの潤滑剤のような役割となって、仕事の効率化や生産性の向上といった全社的な課題解決に取り組んでいきます。

こちらはスタートアップかつ、ある程度プロダクトがマーケットにフィットしている企業で求められることが多いように思います。開発領域の課題を解決してプロダクトを強くするだけでなく、生産性や売上の向上など別領域での課題解決が必要になるためです。

ハイミドル層への有効な採用アプローチの事例紹介

ハイミドル層の獲得に成功するためにはどんなアプローチが有効でしょうか?

辰巳:求める役割の違いに応じて、有効な候補者へのアプローチ方法をご紹介します。

①特定の技術領域のテックリードの場合

①に適した候補者は「自分が専門とする技術領域でのスキルアップ」への関心を一定持っていることが多いです。そのため、その候補者にとって「エンジニアとしてより成長できる環境を用意できている」という点をPRするのが有効です。

注意点としては「ウチに転職したらいろいろな技術に挑戦できます」といった、仕事の多様性をPRするのではなく「対象の技術領域をはっきり示し、その領域に強い関心・専門性がある候補者に刺さるように伝える」ということです。候補者がやりたいことがはっきりしているので、そこにフォーカスして伝えるのが重要だということですね。有効なアプローチができれば、カジュアル面談以降の採用に至る率を高められます。

当てはまるものとしてタイミーさんの事例をご紹介します。

②何でもできるフルスタックエンジニアの場合

②に当てはまるエンジニアは「すでに専門領域がありながら、その枠を広げていきたいと考えている人」だといえるので、何らかの個人的な課題感を抱えているケースが多いです。

こうした「候補者個人の課題感」が、自社の課題感に近い候補者を選ぶのが採用成功のポイントです。そのためには、まず求人票などで自社の課題感をできるだけオープンにすることが大事です。採用担当者だけでは全社的な課題感を十分に把握していないことも多いため、CTOなどマネジメント層や現場のエンジニアの声を聞いて求人内容にうまく反映していく必要があります。

また、②の人材は「ダイレクトリクルーティングで初めて採用するエンジニア」になることも多いです。それまでは立ち上げ間もなく、リファラル採用で十分だった企業が「組織の拡大に伴って新たな課題に直面し、それを解決できる人材が必要になる」というタイミングでダイレクトリクルーティングに挑戦することが多いためです。

当てはまるものとしてNoSchoolさんの事例をご紹介します。

③エンジニアリング以外の仕事もこなせるエンジニアの場合

③に当てはまる候補者は、自分の仕事領域をエンジニアリングに限定せず、マルチなスキルを身に着けていきたいと考える傾向にあります。どちらかというと、ビジネスそのものの仕組みに関心があったり、会社の成長に貢献していきたい、といった想いを持っている方が多いです。

プロダクトやマーケティング・営業など、エンジニアリング以外の領域で自分なりの想いを持っている人も多く、技術よりも企業のミッションやビジョンに共感できるかどうかを基準に転職先を選びます。マーケティングや営業のボトルネックを発見し、自分の力で解決していくことにやりがいを見出す人、というイメージですね。

③のパターンへのアプローチのポイントは「ミッション・ビジョンや、サービスによって解決したい課題についてできるだけシンプルに伝えること」です。とはいえ、企業によってはチャレンジしていることが難しく、なかなか簡単に伝えられない場合もあるかもしれません。そういう場合は「自社のミッション・ビジョンが実現したら世の中がどう変わるのか?」「どんな社会課題が解決するのか?」といったイメージを伝えるのが有効です。

「技術はあくまで手段」として捉えている方に対しては、「その手段でどんな目的を実現したいか」にフォーカスしてアプローチするとうまくいく可能性が高まります。

当てはまるものとしてアルダグラムさんの事例をご紹介します。

ハイミドル層獲得に役立つサービス・機能

LAPRAS SCOUTでハイミドル層の獲得に有効なサービスはありますか?

(辰巳)ハイミドル層は母集団も限られるため、ジュニア・ミドルクラスのエンジニアに比べて採用難易度もあがります。特に候補者のプロフィールに書かれた情報を読み解くのに一定のスキルが必要になるため、自社だけでは採用が難しいこともあります。

そういう場合におすすめなのが、運用代行オプションのLAPRAS SCOUT Pro、LAPRAS SCOUT Pro Liteです。「Pro」はスカウトメール送信を伴う運用業務全般を、「Pro Lite」は候補者のピックアップと興味通知の送信をLAPRASのスタッフが代行するサービスです。

▼LAPRAS SCOUT Pro 及び Pro Liteについてはこちら▼

ハイミドル層の候補者情報を見る際に注目するべきポイントはありますか?

(辰巳)候補者の「やりたいこと」欄をみて、その人の興味関心がどこにあるのか、考え方や組織論などが読み取れるか確認するのが重要です。最初は大まかに「この人は技術に関心があるのか、それともビジネスに関心があるのか」を読み解くだけでも①~③のどのパターンに当てはまりそうかある程度判別もできるので、そういったスクリーニングからスタートするのがおすすめです。

また、プロフィールだけでなくSNSや技術ブログのアウトプットを確認するのも有効です。直近の投稿やアウトプットからは、プロフィールから得られるものよりも詳細な興味関心を探る手がかりが得られます。

ハイミドル層の採用を成功させるには、候補者個人ごとの興味関心を細かく掘り下げて、それを元にパーソナライズしたアプローチをしていく必要があります。他媒体の場合、候補者情報の掘り下げは職歴情報がベースになりますが、それだけで十分な掘り下げができるとは限りません。LAPRAS SCOUTでは職歴情報はもちろん、それ以外の多角的な情報をベースに候補者選びを進められます。

まとめ:ハイミドル層の獲得に強い採用媒体を選ぼう

最後にハイミドル層の獲得について、改めて伝えたいポイントはありますか?

(辰巳)ハイミドル層のエンジニア獲得では、転職エージェントを活用している企業も多いです。しかし、ハイミドル層の候補者はそもそもの母数が少ないため、エージェントを活用しても「条件に当てはまる候補者がなかなか見つからない」という問題が起こる可能性もあります。

その点、LAPRAS SCOUTには約3万人(2024年8月現在)の登録者がいますが、他媒体と比べてハイミドル層のエンジニアが多く登録しているという特徴があります。

こちらの画像はLAPRAS SCOUTにおける2024年直近の求人提示年収の分布ですが、ハイミドル層の下限にあたる「800万円~」が最も多い比率になっています。

今回ご紹介したポイントを踏まえてアプローチの方法を工夫するのも大切ですが、その前に「ハイミドル層がたくさん登録している採用媒体」を選ぶほうが、求める条件を満たした候補者が見つかる可能性を高められます。

「ハイミドル層が登録しているサービス」はたくさんありますが「ハイミドル層の獲得に『強い』サービス」は少ないと思いますので、そこで課題を感じている採用担当の方にはぜひLAPRAS SCOUTを使ってほしいです。