<イベントレポート>『GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた』書籍出版イベント〜LAPRASでの実践と要点を解説〜

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LAPRASの人事責任者である千田和央の著書「GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた」(翔泳社)が 9/11(月)に発売されました。

GitLab社は、世界67カ国以上に従業員2,000名以上を抱えながら、自社オフィスを持たない「世界最大のオールリモートカンパニー」です。本書では、GitLab社の各種マニュアルを翻訳し、日本企業に合う形で自社向けのマニュアルを作成するなどリモート組織作りを実践してきた著者の経験やノウハウが体系的にまとめられています。

この記事では書籍の内容とLAPRASでの組織づくりの実践例について千田が解説したトークイベントの内容をお届けします。

【書籍について】
SE Book(翔泳社):https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798183916
Amazon:https://amzn.asia/d/2o9axa4

登壇者プロフィール

LAPRAS株式会社 人事責任者 千田和央(ちだ・かずひろ)

東証プライム企業から創業期スタートアップまで人事責任者を歴任。『作るもの・作る人・作り方から学ぶ 採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』などの著書があり、国内外のITエンジニアに関連する組織づくり・制度設計・採用などの人事領域を専門としている。

LAPRASでは2020年のコロナをきっかけにフルリモートワークに移行し、リモートワークでの組織づくりを牽引。その取り組みが評価され、LAPRASは2022年に厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)で「特別奨励賞」を受賞。

“あらゆる人が活躍できる組織づくり”を目指して

ひとつの会社の中には、多様な人間が在籍しています。ひとりで黙々と作業したいタイプもいれば、メンバーと意見交換しながら進めたいタイプの人もいるでしょう。

内向的な人と外向型な人では遺伝子レベルで違いがあるという研究結果も出ています。一人ひとりの作りが違っているのに全員に同じやり方を強いても、思うような活躍はできない可能性が高く、会社の成果にも繋がりません。

そこで、“あらゆる人が活躍できる組織づくり” に再現性を持たせたいと考えて、『GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた』を出版しました。

本書ではGitLabのマニュアルをベースに、私の実体験やノウハウを体系的にまとめ、リモート組織であっても一人ひとりが能力を発揮するために重要なポイントを解説しています。

重要な章をピックアップして解説

本書を通して、私がとくにお伝えしたい3つの章をピックアップして解説します。

第3章 リモート組織を構築するためのプロセス

ピックアップした3章の中でも、とくに伝えたいことが詰まっている章です。人との関わりがないと孤独を感じたり、仲間を信用できなくなったりする方は少なくありません。

そんな精神状態が続くと、仕事は一応できているけれど、ちょっとずつ元気が無くなってしまったり、なんとなくやる気が出なくなったりと、徐々に衰弱していきます。人間は本来群れで生活する生き物なので、感情の交流や仲間として認識できる機会がないと精神を病みやすくなり、チームメンバーとの関係性も築きにくくなり、仕事でも思うような成果を上げられなくなってしまいます。

対策として有効なのが、インフォーマルコミュニケーション(業務外での雑談やイベントなど)です。

LAPRASをフルリモートに変更した当時、私はインフォーマルコミュニケーションを軽視していました。私自身が社員同士で気軽に遊びに行くようなタイプでもなかったので、会社が主催するイベントなどに対して懐疑的な思いもあり「大事とは言われているけど、そこまでかな?」という考えがあったんです。

もっとやっておくべきだったと個人的に反省しているので、みなさんにはぜひしっかり取り組んでいただきたいです。コスパを考えると踏み出しにくいかもしれませんが、意図的にやらなくてはいけないところだと思っています。

とくに新入社員は孤独を感じやすい状況なので、業務だけのコミュニケーションではなく、交流の場を積極的に設ける必要があります。

第5章 カルチャーはバリューによって醸成される

GitLabは、カルチャーフィットよりもバリューフィットを重視しています。バリューは、キラキラしたかっこいいものである必要はありません。社員の解釈が分かれないように、すごくシンプルかつ具体的な内容が、細かい粒度で書かれていることが重要です。同じテーマについて話し合っていても、お互いの解釈が違うと理解が進みません。

たとえば「パフォーマンスを出して」と言われたとき、自分としては十分に出せていると考えている場合、相手が言う「パフォーマンスを出している状態」が理解できず齟齬が生じます。

判断基準はそれぞれの価値観や経験によってつくり上げられるものですが、共通見解を得られるだけのバリューをみんなが核として持っておければ、社員の多様性を尊重しながら齟齬を防ぎ、きちんとパフォーマンスに繋がっていきます。

多様性を尊重するダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みは、日本の企業では「いいことだからやりましょう」的な文脈で語られるケースが多いと感じていますが、GitLabをはじめとする海外の企業が取り組む理由は、パフォーマンスに繋がるからです。

一人ひとりのパフォーマンスを引き出して業績につなげていくために、力を発揮できる環境づくりへのコミットメントの本気度を感じます。

第7章 リモート組織におけるオンボーディングの重要性

新しく入った社員や部署移動した人が活躍できないのは、本人たちだけでなく、チームメンバーにとっても会社にとっても不幸な状態です。

また一から採用活動をする必要もありますし、これまで教えてきたことも無駄になります。事業を成長させるために採用したにも関わらず、多方面に余計な負担をかけただけで終わってしまうのです。

放っておいても上手く馴染んで活躍していく方もいますが、全員を置き去りにせず、一人ひとりが活躍できる環境を整えるためのオンボーディングの重要性に気づいていただきたいと考えて、この章を書きました。

ヘッドハンティングで重要なポジションを担う方を採用した際に、経験豊富で即戦力だからと「お任せするので、まずはやってみてください」というスタンスで対応してしまうケースは結構あると思っています。

しかし、関係各所と協力してさまざまなドメインの情報を集める必要があるなど、重要な役割になればなるほど周囲のサポート、支援体制が必要です。

また、単純に業務が進まないだけでなく、「このチームに受け入れられている」という感覚を持てないままでは「メンバーと協力して成果を出そう、会社に貢献できるように頑張ろう」とも思えず、パフォーマンスを発揮できない可能性が高まります。

メンバーとの信頼関係を築くための意図的なコミュニケーション設計も含め、適切なオンボーディングをおこない、新入社員がスムーズに活躍できるようにサポートしましょう。

LAPRASの実践例を紹介

LAPRASが取り組んできた、リモート組織づくりに関する実践例をご紹介します。

組織ハンドブックとコミュニケーションルールを作成

GitLabのハンドブックを活用して、LAPRASのハンドブックとコミュニケーションルールを作成しました。

いきなりGitLabレベルで制作しても組織に浸透させるのは難しいので、最低限の項目に限定しています。組織ハンドブックは公開されているので、最初の入口として弊社の取り組みを参考にしていただければ幸いです。

コミュニケーションルールは、見解の相違が生じた際に議論の拠り所になるドキュメントとして活用しています。

バイアスが発生しやすい状況や、相互が生じた実例などをまとめておいて、実際に問題が発生した際にはドキュメントのURLを送って、コミュニケーションルールに基づいて是正、アップデートします。

オフサイトとダイアログ

LAPRASでは、四半期に一回ほど、オフサイトとダイアログという場を設けています。下記の左の画像は、高尾山に行ったときのものです。

仕事の場から離れた非日常の空間、オフサイトでの交流でしか得られないものがあり、特に新入社員や地方に住んでいる人からは交流ができる貴重な機会だと喜んでいただいています。

ダイアログは対話や対談という意味で、LAPRASでは自分の意見や感情をただ話すコミュニケーションとして取り入れています。ダイアログでは素直に思うまま、感じていることを表にさらけ出すだけで、ディスカッションはしません。

「グレートスピリッツ」と私たちは呼んでいるのですが、「大きな精霊が発言しているようなものだから誰も止められない、止める必要がない」というスタンスで発言し、傾聴します。

目的が見えないと発言しづらいため、「好き勝手言っていいよ」と場を提供するだけではなく、ダイアログをおこなう目的をしっかり設定・共有しておきましょう。

LAPRASのダイアログにおいては、インフォーマルかつ同期することが目的です。心理的安全性が保たれた状態で、一人ひとりの発言を尊重する場づくりを心がけています。

オンボーディングとリアルタイフィードバック

下図の左の表は、どんなコンテンツをオンボーディングで身につけてもらうかをチェックリスト化したものです。

オンボーディングでは、業務上の関わりがあるトレーナーと、直接的な関わりはないが相談できるメンターがサポートします。入社から1週間でアンケートをとり、問題は起きていないか、滞りなく進んでいるかなどを確認しながら、立ち上がるまで追っていきます。

右の表は、2週間単位でおこなっているリアルタイムフィードバックのチェックリストです。

LAPRASでは、半年や四半期に一回のフィードバックでは納得感が得られないケースもあるため、複数のフィードバックの記録をもとに、個人の能力や特性、パフォーマンスを適正に評価しています。

リアルタイムFBでは評価をするだけではなく、「あなたにはこんな働きを期待している」と伝えたり、昇格の判断ラインも共有しています。目標を明確にすることで、より良いパフォーマンスを引き出す狙いもあります。

リモート組織づくりQ&A

オンボーディングに、インフォーマルコミュニケーションを取り入れたい。既存社員に受け入れてもらうには?

A.やる意義がわからないと賛同できないと思うので、他社のデータを示すなどして説得し、まずは一回やってみるところまで持っていきましょう。その一回がうまくいけば、成功体験として説得材料になります。

新入社員が活躍すればチームの生産性も上がり、会社も成長します。必要最低限でコミュニケーション十分だと考えている人もいますが、自分たちが目指しているものを実現するために、必要な取り組みだと理解してもらうことが重要です。

組織規模の大小によって、必要なコミュニケーションに違いはある?

A.本質的には変わらないと思います。GitLabは人数が多い組織ですが、LAPRASに置き換えて実施しても違和感はありませんでした。

規模によって調整が必要なのは、部署間の協力体制の構築や、利害関係の調整などです。ここでヒューマンマネジメントが重要になってきます。

ヒューマンマネジメントがスキルとして確立し、マネジメント職がもっと評価されるようになっていけば、属人的ではない円滑な組織運営が可能になるでしょう。

まとめ

“すべての人が活躍できる組織づくり” を通じて、世界を相手にしても負けない日本企業を増やしたいという思いで本書を出版しました。

社員全員の価値を引き出し、みんなが幸せな状態になった結果として会社を成長させられるリモート組織づくりを、日本中でやっていきたいと考えています。

貴社が世界最先端のリモート組織になるために、本書をお役立ていただけますと幸いです。

(ライター:成澤綾子)