<イベントレポート>エンジニア採用担当者必見!事例から学ぶ採用広報の意外な落とし穴〜自社サービスvsSIer・受託編〜

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DX推進に投資する企業の増加やICT投資の活発化など、社会におけるITの需要は高まる一方で、エンジニア人材の人手不足は進み、獲得競争はますます激しくなっています。認知度向上や他社との差別化のために、採用広報や技術広報に注力する企業も増えてきました。
このような状況下で、候補者から選ばれる企業になるためにどのような情報を届けていけばよいのか、お悩みの企業様も多いのではないでしょうか。

そこで本セミナーでは、エンジニア優秀層の心を掴む採用プラットフォーム「LAPRAS SCOUT」と、「働く人」から企業の魅力を伝える採用ブランディングサービス「talentbook」より、エンジニア人材の獲得に向けた採用広報のポイントを自社開発企業とSIer・受託開発企業の違いにフォーカスし、解説しました。

目次

登壇者プロフィール

株式会社PR Table / アカウントエグゼクティブマネージャー / 楠 拓也

新卒で大手人材系企業に入社。IT領域の人材紹介営業として事業立ち上げに参画し、マネジメントを経験後に人事部ヘ異動。自社の中途採用や新卒採用でのチームリーダーに従事した後、2020年にPR Tableに入社。talentbookのフィールドセールスとして、顧客への新規提案を経験後、現職に異動。既存顧客への提案・コンサルティング営業に従事。

LAPRAS 株式会社 / 共同創業者 / 二井 雄大

京都大学経済学部卒。楽天に入社し、ECコンサルティング職に従事。IoTベンチャーのQrioにて事業開発部マネージャーを経験後、株式会社scouty(現LAPRAS株式会社)を共同創業。創業以降、営業/CS/マーケティング/バックオフィスなど開発業務以外全ての領域を経験。これまでに200社超のカスタマーサクセスを担当。

LAPRASが考える採用広報の「時間軸」

二井:採用広報には立ち上げ期、継続期、スター期の、3つの時間軸があると考えています。

立ち上げ期はWeb上に情報を出し切れていないため、記事を出すとすぐに効果が出やすい段階。継続期はエンジニアによるテックブログと採用向けのコンテンツを発信して、メディア自体にボリュームを持たせていく段階。そして、施策が実を結び、高い採用目標を見据えて動く段階がスター期です。

多くの企業は立ち上げ期に属していると考えています。採用広報を始めるにあたって、ブランドイメージを固めたり、ブログを0から立ち上げるところから入ろうとする企業は多いですが、実際にはもっと手前の「どういう情報を出し、どういう反応が得られるか」を検証する段階が重要です。

そもそも立ち上げ期では、採用活動に必要な情報がほとんどWebに載せられていません。そのため、まずはコンセプト等を丁寧に考えるのではなく、自社が持っている採用サイトやSNS等で「必要な情報を載せ切る」必要があります。立ち上げ期では、メディアやブログ等から自社を見つけてもらえることはほぼないという前提で、自社の求人や採用サイトを見た方に対して会社や募集しているチーム、そしてエンジニアにとって重要な技術等、必要な情報を満遍なく提供することが必要です。

また、SIer/受託開発企業の場合、どうしても事業内容で他社と差別化することが難しい事情もあるかと思います。そのような場合は、働き方の柔軟性やエンジニアとしての成長にフォーカスした採用広報も有効だと思います。自社開発企業は事業内容やサービス内容をメインで訴求することが多いため、訴求ポイントをずらすことにより、差別化を図ることができます。

採用広報で最初に書くべき記事

二井:では実際に記事を作っていく場合、どのような企画から着手するのが良いでしょうか?まず立ち上げ期の場合は、次のような記事から始めると良いと思います。

この時のポイントは、最初からあまり社内を大々的に巻き込んだり、継続的な記事の公開を目標にしたりするのではなく、まずは採用担当がコントロールできるメディア(広報等によるその都度のチェックが不要なメディア)で、短期間でリリースできる記事を作っていくことです。

必要な記事が書けたら、次は採用したい人材に響くような記事を狙って書くフェーズ。その後、採用ペルソナの解像度が高まってきたら、独自のコンテンツ作成を進めていくと良いでしょう。

その際に注意したいのは、よくある「アンチパターン」にハマらないということです。「テックブログを採用のために作ろう」「ブログのPVをKPIにしよう」「単発でスポンサーをやろう」等と、施策の実施ありきで進めてしまうと、それらの施策は継続が必要でかつ1、2年後に効果が出るものにも関わらず、効果が出るまでモチベーションが続かず、結果としてあまり上手くいかないことがあります。

採用ターゲットの方が知りたい情報の記事を作成すれば、カジュアル面談等ですぐにリアクションがもらえるため効果を短期で感じやすく、採用広報のモチベーションも続きやすいです。なので、まずは求められている情報の記事を作り、そこから採用したい方のペルソナの解像度を上げ、長期的に継続する意思と施策への確信が持てるようになってから、上記のような施策には手を伸ばすと良いと思います。

繰り返しにはなりますが、まずは採用候補者が知りたい情報やカジュアル面談で毎回質問される項目から記事にしていきましょう。その上で、面談後に情報の過不足について直接フィードバックをもらうことで解像度を上げつつ、継続していくことで、独自の施策ができるようになるというイメージを持っていただければと思います。

PR Tableが提案する採用コンテンツの磨き方

楠さん:年々IT人材の不足が深刻化し、採用難易度が上がっているのは、皆さんもご存知かと思いますそのような中で、ダイレクトソーシングさんのデータによると、エンジニアの7割が転職を前向きに考えており、さらに3〜4割は「転職を具体的に考えているわけではないが、いい会社があれば転職したい」と回答しています。裏を返せば、どのタイミングであっても、候補者の方に響くアプローチができれば、潜在層が顕在層となり採用に繋げることができるということです。

また、転職先の希望開発形態を見ると、自社開発希望が4割と多く、受託開発希望は2割と劣勢になっています。一方で、転職活動をする際に重視するポイントは「給与・待遇」「ワークスタイル」「社員の人柄・雰囲気」がTOP3となっており、事業の魅力よりも働く環境が重視されています。そのため、受託開発の会社でもサービス以外の強みをしっかりと言語化し、広報していくことで、他社差別化を図ることができるのではないかと思います。

コンテンツづくりへの具体的なヒント

楠さん:給与や待遇が重視されているとはいえ、それらを改善するのは時間がかかり、容易なことではありません。そのため、コンテンツ作りにおいては、評価制度の仕組みや背景等、昇級できるイメージと納得感を醸成するものが必要になると思います。

他社の事例では、給与設計と給与の考え方や評価制度について情報を公開しています。ブラックボックスになりがちな「評価」や「給与」に透明性を持たせることで、候補者の方から好印象を得られているかと思います。これらの情報を可能な範囲で出していただくのは、採用広報として有効です。

一方で、そのような情報をすぐには公開できない場合もあると思います。その場合は、「どういった思い制度を設計/運用をしたのか」など、評価制度を設計した社員の方のインタビュー等を公開することで、納得感に繋げるという方法もあります。

次点の「ワークスタイル」や「社員の人柄・雰囲気」も重視される方が多いポイントです。こちらを訴求するためには、入社後の働き方やどういったキャリアを描けるのかを、候補者の方にイメージしてもらう必要があります。

そのためには、既存社員の入社ストーリーや多様なキャリアパスや働き方を発信し、候補者が大事にしたいことや自己実現を叶えられるのか、実際に叶えている人がどのくらいいるのかを伝えていくことが重要です。

また、開発技術や事業の魅力についての発信も必要になります。「事業のやりがい」や「プロダクトの開発秘話」といった裏話のような、開発チームの働く環境が伝わるようなコンテンツを発信することも有効です。受託開発企業の場合は、自社のプロダクトについての発信ができない部分が難しいところですが、個人の経験として過去に携わったプロジェクトの規模や難易度、事業ドメインに着目してプロジェクトの提供価値や社会的意義を伝える等の工夫が考えられると思います。

QA

コンテンツのリーチのためにSNSを活用したい一方で、炎上リスク等もあり会社としてあまり積極的な活用がしづらいという点で悩んでおります。何かコツはありますでしょうか?

二井:今回はあくまで会社で接点がある方にしっかりと情報を届けるという目線でお話ししましたが、その先で新たな層にリーチするという視点では、拡散効果のあるSNSの活用は非常に重要になってくると思います。一方で、会社の公式アカウントではやはりバズ狙いの投稿は難しいですし、一般的に会社公式アカウントはフォロワー数が伸び悩む傾向もあります。 また、社員による拡散協力が必要になると、今度は社名を出したアカウントが増え、炎上リスクが高まるといった難しいジレンマがあります。

そのため、実際に始める際には、「採用広報」という視点に閉じずに、会社の広報担当の方と広報戦略からしっかりと擦り合わせることが重要だと思います。どこまでは許可できて、どこまでは許可できないのか等、コミュニケーションの前提や採用におけるPRルールを決めてから、それを守れる範囲でSNSを選んで運用するのが良いと思います。

SESの場合の、採用コンテンツはどうしたら良いでしょうか?

二井:SESについては、SIerや受託開発の企業と同様、やはりサービス内容以外の働き方やキャリアアップの面を訴求し、他社との差別化を図る必要があると思います。SESでは、案件の情報をより一層公開しづらいという点が難しいですが、教育体制が整っておりジュニア層を採用後にしっかりと育成ができるという訴求ポイントもあります。教育体制等をコンテンツ化し、経験浅い方・未経験の方でも安心して応募できるという点をしっかりと発信することが重要だと思います。

楠さん:未経験者も採用している場合は、未経験で入社された方がどういうキャリアを経験し、エンジニアとしてキャリアアップされていったかというストーリーが見えると、より安心できるため応募数も増えそうですね。

受託開発企業で他社との差別化を実施するため、社員・内定者インタビュー等で人事からは見えない自社の魅力の掘り起こしをしています。その際、着地が見えない状態でコンテンツ作成を進めた後、最終的にどのように整理していくのが良いのでしょうか?

二井:まず、自社内でインタビューして発掘されていることが、非常に素晴らしい取り組みだと思います。

楠さん:そうですね。コンテンツ企画で悩んでいる方はまず、内定者の方に話を聞いた方が良いと私もお伝えしています。自社を選んでくれた方に、選考過程で足りなかった、欲しかった情報を聞くことで、何をコンテンツ化すべきかがわかります。社内に「お宝が眠っている」状態なので、もしやっていないのであればぜひ取り組んでいただきたいです。

二井:その上での今回の質問だと思いますが、これについてはコンテンツを作った後に、カジュアル面談や選考過程でのコミュニケーションを通して、何が候補者の方にとって大事な情報だったのか振り返って、着地を整理していく必要があると思います。そのため、書く時点ではあまり採用後方全体の着地が読めなくても問題なく、「候補者の方にとって必要な情報である」という確信さえあれば、スピーディーにコンテンツ化してしまって問題ありません。今後どういう方向に進めていくかについては、実際の候補者の方の反響等を基に整理していくのが良いと思います。

採用広報を長期で進めていく際の、モチベーションの保ち方はどのようなものがありますか?

二井:まず前提として、採用広報は「広報」なので、採用のフェーズごとのKPIの測定とは違って、中長期的な視野で取り組む必要があります。そのため、数値結果を計測・分析はするものの、そこに対して目標を設定して達成するといったタイプの業務ではないという認識が必要です。

その上でモチベーションを維持するためには、まずは短期で効果実感ができるものから手をつけることだと思います。小さなコンテンツでも、面談時に「この記事読みました」「この動画見ました」といったフィードバックをもらうことで、効果を実感できます。なので、まずはすぐに読んでもらえる情報からコンテンツ化し、その反響を次のモチベーションにして動いていくのが良いと思います。

楠さん:モチベーションの維持が難しい点として、やはりコンテンツが「読まれたかが分からない」ということがあると思います。そのため、やはり候補者の方からしっかりとアンケートやコミュニケーションでフィードバックを受けることがモチベーション維持という観点でも重要かなと思います。記事のPV等の定量的な成果だけでなく、実際に参考にしたか、役に立ったかという定性的な評価が聞けることで、モチベーションに繋がりやすいのではないかと思います。

会社の規模が大きく、チームごとに募集内容や働き方・カルチャーが異なります。多くの求人がある中で、候補者の方を混乱させないように配慮しつつ、各チームのカルチャーを発信する良い方法はありますでしょうか?

楠さん:大きい会社の場合、事業部やチームでそれぞれ募集をするため様々なメディアが立ち上がり、HRでは把握できないくらいコンテンツが乱立し、集約できなくなってしまう、ということは良く起こり得るかと思います。また、欲しい人材が部門で重複してしまい、最大の競合が社内の他の部署ということも起こり得ます。

そういう場合は、全体を俯瞰的に見ることができる人事の方が、それぞれのコンテンツへの導線をしっかりと設計するのが良いと思っています。また自社内でバッティングしてしまうのが一番もったいないので、各々のチームが自分たちで差別化をするのではなく、しっかりと横串で人事が整理できるように、情報の見せ方・整理・集約を意識されると良いと思います。

具体的には、採用サイト内での情報の階層を整理したり、チーム毎にページがある場合には、別のページに遷移したとしても元のページに戻って他のチームの情報を見ることができるような導線を意識したりする等です。これらは、全体を俯瞰して見ている人事だからこそできる役割だと思います。他にも、公式サイトに採用サイトへのリンクを貼って候補者が見つけやすくする等、そもそもコンテンツが目に触れやすいようにする工夫も重要になると思います。

まとめ

採用広報を成功させるには、まずは負担が少なく、採用に直結する最低限必要なコンテンツを揃えるところから始めましょう。コンテンツの作成にあたっては、自社のどのようなポイントが候補者に魅力的に映るのかを意識して、まずは採用時に必ず必要になる情報からまとめていくことが重要です。

その上で、実際の候補者の方や内定者の方に情報の過不足や確認したコンテンツのフィードバックを受けることで、成果を実感しつつ、中長期的なメディア戦略を実現することができ、継続的な採用広報が御社の認知の拡大、そしてエンジニア採用に繋がります。

当イベントで共有した情報を、貴社の採用広報戦略に活かしていただけますと幸いです。