社内のエンジニアが自社のエンジニア採用に積極的に関わる企業が増えています。なぜ多くの企業が開発のリソースを割いてまで採用にエンジニアを駆り出すのでしょうか。
LAPRAS HR TECH LABでは過去に、エンジニアが主体的に採用を行う企業の事例を紹介しました。今回の記事ではエンジニアが採用に関わることによるメリットについて具体的に紹介します。
目次
エンジニア候補者の8割が「カジュアル面談はエンジニアとしたい」
LAPRASは、2019年1月にエンジニアを対象に「カジュアル面談ではどの役職の方に会いたいですか?(複数回答)」というアンケート調査を行いました。
その結果、同僚のエンジニア、上司になるエンジニア職のメンバーと会いたいという回答が76%にのぼりました。
またCTOと会いたいという回答も60%あり、エンジニアはカジュアル面談ではエンジニアと話がしたい、ということがわかりました。
一方で採用・人事担当者と会いたいという回答は6%にとどまりました。
全職種を対象にした結果と比べても採用・人事担当者と会いたいという回答は半分以下まで下がっています。
この結果から分かることは、エンジニアではなく採用・人事担当者がカジュアル面談に対応することは、大多数のエンジニア候補者の希望には沿っていない対応だということです。
候補者のCX(Candidate Experience)の観点から見ても、初回のカジュアル面談で自社への魅力付けができないことは大きな問題です。
なぜエンジニアが採用に関わるべきなのか
なぜエンジニアが採用に関わるべきか、大きな3つのポイントを紹介します。
①専門知識があることでより深いコミュニケーションが可能になるから
エンジニアに限らず、専門職種においては採用・人事担当者では把握しきれない専門知識やスキルが存在します。エンジニア職種においては特にその傾向が顕著に表れています。
カジュアル面談や面接の中では、必ずといっていいほど自社の技術スタックや実務について質問されます。その時に採用・人事担当が技術的な情報を与えられない場合、候補者は大きなストレスを感じます。少なくとも、技術面の魅力で候補者を惹きつけることは困難でしょう。
また、スカウトメールの成果にも大きな影響があります。
メールを送信する採用・人事担当者にエンジニアリング知識がないと「Pythonの経験があるとプロフィールに書いてあったためお声がけしました」というような技術的に浅い内容のメールしか書くことができません。
一方、エンジニアがスカウトメールを書く場合は「PyConの発表資料を拝見しましたが、PyTorchをはじめとするライブラリの優劣比較を実際の業務でも活かして……私もChainerは使ったことがあったので親和性は……」のようにより深く、自身の経験も交えながら文章を構成することができます。
ハイレイヤーのエンジニアへのスカウトメールでは、特に上記のような内容の深さ、的確さが返信率に大きく影響します。
さらに、候補者のスキルスクリーニングにおいてもエンジニアと採用・人事担当者では精度の差が生まれます。
これまでに携わったプロジェクトが自社の業務にどう活用できるのか、GitHubに公開されている自作コードがどのような内容でどのくらいのレベルにあるのか、採用・人事担当者では判断できないことが多く、在籍企業や役職で誤ったスクリーニングをしてしまうことがあります。一方、エンジニアが書類選考に関わることで、肩書だけではない能力重視の採用ができるになった例もあります。
②コミュニティを通して自然に企業とエンジニアが関われるから
近年、情報の伝達経路は大きく変わり、SNSでの評判や、所属しているコミュニティ内の評判、仲の良い知人から聞いた話が、メディアで発信される情報よりも信頼されるようになりました。それは転職においても同様です。
エンジニア界隈でも「界隈で有名なエンジニアAさんが所属するB社」「元同僚のCさんが楽しそうにしているD社」のように口コミや一次情報が企業の印象を決めます。
そういった背景もあり、企業はエンジニアMeetupや、LTイベント、DevRel活動を行うことでエンジニアコミュニティとの距離を縮め、良い印象を与えようとしています。
カンファレンスなどでの登壇も同様にエンジニアコミュニティへの影響力を強めるための施策となり得ます。
エンジニアコミュニティに関わるには、当然ながら採用・人事担当者よりもエンジニアの方が適任です。登壇はもちろん、参加者との技術的なコミュニケーションが必要だからです。
③他の企業ではすでにエンジニアが採用のフロントに立っているから
現場のエンジニアやエンジニアリングマネージャー、CTOなどが採用のフロントに立つ企業が増えています。
前述のようにエンジニアは、一緒に働くエンジニアや上司にあたるマネージャー、CTOと話したいと考えています。
エンジニア界隈で影響力があるCTOがスカウトメールを直接送り、カジュアル面談を行うのと、エンジニアリング知識がない採用・人事担当者が接触するのでは、当然前者の方が候補者に好印象を与える可能性が高いでしょう。
エンジニアの求人倍率は2019年11月で10.29倍(※)という超売り手市場です。
エンジニアの採用では、常に1人の候補者を複数の企業が奪い合うという構図になっています。
他社が候補者の魅力付けのために現場のエンジニアやCTOという人員を割いている状況に対して、工数を下げるために採用・人事担当者のみがフロントに立つことは、結果として選考希望者や内定受諾者を減らしてしまうことになりかねません。
エンジニア求人倍率の推移
※「doda転職求人倍率レポート」の情報を参照
エンジニアにどういった業務を任せるべきか
理想は、採用の知見を持ったエンジニアに採用業務を主導してもらうことです。しかし、そういったスキルを持つエンジニアは少なく、また社内のエンジニアが採用に割ける工数は限られています。
LAPRASが以前に取材したNewsPicsでは、「採用においてエンジニアはエンジニアでしかできないことをやる」と決めていました。
エンジニアに採用業務をまるごと任せるのではなく、社内のエンジニアリソースを考慮して、優先順位の高い、そしてエンジニアでしか行えない業務にアサインし、それ以外の煩雑な採用関連業務を取り除いてあげることが重要です。
例えば、予め絞られた候補者の最終スクリーニング、採用・人事担当者が書いたスカウトメールの添削・アドバイス、注力している採用ポジションでのカジュアル面談同席などです。
また、エンジニアコミュニティとの関わりにおいては、イベント設計や運営を採用・人担当者が担当し、エンジニア自身は発表に集中できるようにするといったことが考えられます。
このように、なるべく負担をへらすこと、またエンジニア自身が本当に必要だと実感できる技術的な業務のみを担当してもらうことが重要です。
そういった意味では、採用・人事担当者は黒子やディレクターのような動きが必要になってきます。
おわりに
エンジニアは、全職種において最も採用が難しい職種といっても過言ではありません。
社内のリソースを総動員し、これまでの体制を変えていかないといけないでしょう。そして実際に多くの企業がエンジニア採用を経営の重要課題と捉え、人員や資金を投下しています。
エンジニアを採用しないと開発が進まない、しかしそこに既存エンジニアを割くと現在の開発がストップしてしまう。とてもよく聞くジレンマです。
採用・人事担当者はもちろん、経営者、開発を主導するエンジニアとともに自社の採用体制や方針について練り直すことも必要です。
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